七十七話(過去)「異世界転生してチート使って無双してくるwww」
ドラゴンは、何でも出来る。完全だ。……しかしながら、出来ないこともある。
それがあまりにも少ないから、『なんでも出来る』『完全』という言葉を当てはめても問題がないのだ。人間や他の知性ある種族にとって、ドラゴンは何でも出来るし完全な存在。その認識と、ドラゴンという存在は殆ど変わらない。
ではそんなドラゴンの、出来ない事とは何なのか。
……当たり前と言えば当たり前だが、無から有を作り上げることである。
さすがのドラゴンでも、何もない場所から何かを作り出すことなど出来ない。ただ何もないような場所でも、空気中には魔力の元となるようなマナや、酸素や窒素のような物体が存在するだろう。もしかしたら、俺達には認識できないエネルギーが存在するのかもしれない。
だからドラゴンは、あいつらだけが使えるドラゴンの魔法を用いて、俺達からすれば無から有を作り出したような現象を作り出すことができるのだ。俺達のあいつらへの認識が、『なんでも出来る』に変わるくらいに。
それは、学園の図書館にある文書に記載されていた。恐らく過去のドラゴンドリー達か、財宝の保持者のどちらかが、ドラゴンに聞いたことをまとめた文書だったのだろう。しかしながらそこには、ではドラゴンには具体的に何が出来ないかは記載されていなかった。
恐れ多くて聞けなかったのか。ドラゴンが答えなかったのか。それは俺には分からない。
ただ、きっと。ドラゴンでさえ、命を新しく生み出すことは出来ないだろう。
だから、操った。
他から、持ってきた。
そのための、道具を作った。
兄が認められなかった? 当然だろう。
だってその財宝の所有者は、初めから―――――作られる前から決まっていた。
生まれる前から、決まっていた。
「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
俺は、望んだ。
理想の世界、魅了の瞳。そして複数の命――――人よりも、多くの命。
この世界の人間は、複数の命を持つ。どんな人間でも、二つ以上の命を持つ。なら『三つ』は、俺が所有していた命の個数は、はたして『人よりも』多いのか?
……平均だ。
沢山いる訳じゃない。だが、命を三つ持つ人間。若しくは持っていた人間というのはざらにいる。そして当然、それ以上の命を持つ人間も。だからそれらを平均すれば、その数はおおよそ三つになるだろう。
なら、五つは? ……間違いなく、人よりも多い。
「憎んでくれ、恨んでくれ!!!」
この世界は、異世界だ。ただドラゴンというデタラメな存在でも、無から有を作り出すことは出来ない。前世と変わらない絶対的な法則は、変わっていない。
結果には、原因がある。過去があるから、今がある。
俺が願ったから、この結果がある。
「もう、頼むから、流さないでくれ……ッ!」
俺は人よりも多くの命を望んだ。だからドラゴンは、財宝を作った。
人間が人間を殺すと、殺された側の命の一部が、殺した側へ移動する。一度出来たその流れを『強制』する財宝。人の命を、奪う財宝。
「これ以上、愛を、伝えないでくれ―――――――――」
通常なら。殺された側が、殺した側の心を知る。
命の一部が殺した側にあることにより、その命を通して殺した側の全てを知ることが出来るようになるのだ。それはもしかしたら、本来は二度とその人物に殺されないようにする生物の防衛本能だったのかもしれない。
ただ、この財宝はその基本的な法則すら覆す。
なぜなら―――――全ての命が移動するからだ。
命とはなんだろう。心とはなんだろう。魂とはなんだろう。少なくとも俺は、その問いに眠る深淵に、この瞬間触れた。
それらは全て繋がっている。だから今………彼女の、ルーナ全てが、俺に流れ込んでいる。
彼女の愛が、流れ込んでくる。いやこれは愛という言葉で、納められるものなのだろうか? だが俺は、それ以外の言葉を知らない。
人は、こんなにも人を愛せるのか。愛せて、しまうのか。
俺は、俺の瞳は、ここまでのことを、してしまったのか。
「ごめん、なさい」
ゆるして、ください。




