85ザクスさんが到着!そしてお菓子も到着!
今日は皆んなで、朝のご飯食べた後、僕は1階の階段の近くで、乗り物に乗って遊んでました。玄関と階段の所は、とっても広くて、僕が乗り物でたくさん走るのにぴったり。アシェルがここの事、玄関ホールって言うって教えてくれました。
あっ、もちろん僕のお遊びのお部屋も、たくさん車で遊べるよ。でも今日は玄関ホールで遊びます。
「どこまでいくでしゅかあ?」
遊び始めてすぐ、お父さん達が玄関ホールに集まってきました。
「ユーキ、ちょっとそれから降りてくれるか?それからマシロは元の大きさに戻れ。エシェット達はそのままで良いからな。」
「父さんどうしたの?何かあった?」
一緒に遊んでてくれたアンソニーお兄ちゃんが、お父さんに近づいて聞きました。
「ザクスが今到着した。出迎えだ。」
「ああ、ザクスおじさんが。」
ん?今お父さん達、ザクスさんって言った?ザクスさん遊びに来てくれたの?僕は急いで乗り物から降りて、玄関の前に出てお兄ちゃんのお隣に並びます。ちょっと待ってると門の方から、お馬さんに乗ったザクスさんの姿が見えてきました。
「ザクシュしゃんでしゅ!…ん?お…、おお~でしゅ…。」
ザクスさんの後ろに、たくさんのお馬さんに乗った、たくさんの騎士さん達が、ぞろぞろこっちに向かって来ます。僕、騎士さんいっぱいで、ちょっとびっくりしちゃったよ。ザクスさんはお父さんの前で止まって、お馬さんから降りました。
「久しぶりだな。あの日以来か。」
「ああ、よく来てくれたな。しかし、これは一体どういう事だ?」
「ちょっとな。すぐ話をしたいんだが、その前に…。ユーキ元気にしてたか?」
「ザクシュしゃん、こんにちはでしゅ!」
僕はザクスさんに抱きつきました。ザクスさんは僕をひょいって抱っこして、頭をなでなでです。それから、お土産にたくさんのお菓子持って来てくれたって。マシロ達には、たくさんの木の実です。ありがとうザクスさん!
僕達が、たくさんのお土産の箱見て喜んでる間に、お父さん達はお家の中に。騎士さんも何人かお家に入って行ったけど、その他のたくさんの騎士さんは、お馬さんから降りて、何か荷物お馬さんから下ろしたり、台から下ろしたりしてました。何してるのかな?
でも今はお菓子お菓子。嬉しいなあ。さっそく箱の中をガサゴソ、ガサゴソ。シルフィーとディルとリュカも、木の実の入った箱をガサゴソ。
みんなで食べようとしたら、お兄ちゃんとアメリアに怒られちゃった。おやつの時間までダメだって。僕がほっぺ膨らませてプンプンしてたら、近くにいた騎士さん達に、笑われちゃったよ。
ぶー、早く食べたいのに。皆んなプンプンだよ。
<ウイリアム視点>
ザクスを仕事部屋に通し、父さんも呼んで、話を聞く事になった。オリビアは冒険者ギルドに行っているため、アメリアに呼びに行ってもらった。
「それで、今回のあの騎士団体はなんだ?あれだけの人数、お前の街のほとんどの騎士じゃないのか?」
玄関前にいる騎士の人数は、ざっと見ただけでも数百人は居るはずだ。あれはザクスが今束ねている、ほぼ全ての騎士のはずだ。これでは今、ザクスの街が、完全に無防備な状態のはず。
「大丈夫だ。心配するな。お前の考えていることは分かっている。」
ザクスが言うには、今街はザクスの上の兄2人が守ってくれているそうだ。ザクスは兄弟が多いからな。8人兄弟だったか?しかも全て男。何か考えただけでも、むさ苦しいな…。
そんな兄達が街を守り、ザクスが私の所へ騎士を連れて来た。やはり何かあったか…。
「お前からの手紙で、死黒の鷹狩りの事を知って、俺も警戒はしていたんだ。だが2日前、近くの村が奴らに襲撃された。」
私は静かにザクスの話を聞いていた。父さんもだ。
やはり奴らは、近くに居たのだ。タージの見つけた証拠が、偽物だったら良いと思っていたが、もう、そうも言っていられない。だが。
「それと、今回お前がここに来たのと、関係は何だ?」
「村の襲撃が、俺の街の方から、お前の街の方へ移動している。」
「…そうか。奴らの狙いは、カージナルになりそう、ということか。」
しかし、最初に奴らの痕跡が見つかった森は、ザクスの街の方ではなく、カージナルに近い森の方だった。どうしてわざわざカージナルを避け、ザクスの方の村を襲う必要がある?それでまた戻ってカージナルを襲うなど、手間がかかる方法をとった?
「父さんが、俺はお前の手伝いに行けとさ。ボルフィス王国に、騎士の派遣を頼んでも、今からでは、奴らが襲ってくるまでに、間に合わないだろうからってな。俺もそう思う。だからお前の手伝いに来たんだよ。」
そうか。ザクスの父上が。ザクスの父上には、学生の時から随分世話になっていたが、最近お会いしていなかったが、今もカージナルの事を思ってくれるとは。
「ザクス、すまない。恩にきる。」
「今更だろう。それでこれからの事なんだが。」
ザクスの部隊の騎士達には、庭にテントを張ってもらい、生活してもらう事になった。また、街の市民には、なるべく街の中心に集まってもらい、生活してもらう事になる。こういう時のために、住民達にはあらかじめ、自分が避難する家を決めてもらっている。それに従って、避難を行う。
食料など生活に必要なものは、街の畑と、動物を飼う小屋で、だいぶ補う事が出来ている。しかし、この前の報告の時から、商業ギルドと冒険者ギルドに頼んで、物資をどんどん集めてもらっているため、余裕を持って、行動する事が出来る。
ザクス達の方も、回復薬や回復に必要な魔力石を、たくさん持って来てくれたらしい。有難い。これで奴らが街を襲撃しても、街に籠って戦う事が出来る。
後は、奴らがいつ襲撃して来ても良いように、街の防御を固めるだけだ。
「ウイリアム、もう1つ、報告があるんだが。」
何だ?ザクスの表情が硬い。何かもっと大変な問題があるのか?
「生き残りの村人が居たんだ。」
「は?奴らは絶対、襲撃した村や街の人間は、全員殺すはずだろう。」
よく話を聞いてみると、奴らに襲撃され、その生き残った人物も、1度は斬られその場に倒れたらしい。そのあと気を失い、運が良い事に、奴らが壊した家の下敷きになり見つからず、気づいたら奴らは居なくなっていたらしい。
「その村人から聞いたんだが、俺たちが思っている以上に、奴ら、かなりの人数が死黒の鷹狩りとして行動しているようだ。しかも契約魔獣も、かなりの量が居るらしい。しかもそこそこ力のある魔獣が多かったようだ。最初の襲撃は魔獣によるもので、その魔獣の波に、ほとんどが一瞬で奪われたと言っていたからな。」
「そんなにか…。」
「分かっただろう。俺がここに来た意味が。それと、俺はお前に聞きたいことがあるんだが?」
ザクスは、資料を運んで来てくれた部下を全て、外の仲間達の所へ戻るように言うと、私と父さんとザクス、3人だけになった部屋で話し始めた。
「単刀直入に効くぞ。ウイリアム、今のお前には、どれだけの戦力がある。」
何となくだが、聞かれると分かっていた。ザクスがずっと、あの時から心の中にしまってくれていた事。
ユーキが誘拐された事件の時、ザクスは何が起ころうとも、私にそれを聞いてくる事は1度もなかった。そう、ユーキ達と合流した時、あの時、マシロの存在のことも、妖精組の事も、そして1番怪しかったであろう、エシェットの事を、私に何も聞かずにいてくれた。その後だって、本当だったらいつでも、マシロ達の事を聞いてこれたんだ。でもザクスはそれをしないでいてくれた。
どうする?ここはザクスを信じて、全てを話すべきか。勿論ザクスの事は、騎士仲間として1番信用している。しかし…。
ザクスの顔を見直す。ザクスは真剣な瞳で、私のことを見ていた。それは、全てを受け入れる用意が出来ていると、目で合図しているようで。
ザクスの真剣な姿を見て、私も覚悟を決めて、全てを話す事にした。




