79階段を下りる方法と、またまた事件?
「うーん、どうちましょう。」
皆んなお仕事で、遊んでくれない。そんな僕と3匹は今、とっても考えてます。階段の上で。昨日ばあばに貰った乗り物で階段を下りるには、どうしたら良いのか。今1番の問題です。僕達の隣に居るマシロとエシェットが、
「わしかマシロが、持って下りれば良いではないか。何の問題もあるまい。」
「主、変な事をすれば、また、怒られるぞ。」
って。変な事って?僕何もしてないよ。ガタガタの所、下りたら危ないの、僕だってちゃんと分かってるんだからね。だから今、危なくないように、下に下りるやり方、考えてるんだよ。マシロ達も考えてよ。
うーん、でもほんと、どうしたら良いかな?ちょっとずつ下に下りてく?1歩ずつ?ダメダメ、それじゃあ時間がかかっちゃう。それにそれだったら、エシェットの言う通りにした方がいいし。うーん。
一生懸命考えたけど、全然ダメダメです。やっぱり階段は降りないとダメなのかな?ディル達が諦めるなユーキって、応援してくれてるけど、いい方法思いつかないよ。
僕がウンウン唸って考えて、ディル達もウンウン唸って考えて、やっぱりダメだあって思った時でした。お家で働いてる使用人さんが2人、何か荷物を引っ張って、階段を上がってきました。
「ユーキ様、どうしたんですか。階段の上は危ないですからね。気を付けて下さいね。それとも、何かお手伝いしましょうか?」
「だいじょぶでしゅ。おしごとがんばって、くだしゃいでしゅ!」
「ありがとうございます。マシロ、ユーキ様の事、ちゃん見ていろよ。」
2人は僕に手を振って、どっかに行っちゃいました。また、誰も居なくなっちゃった。でもね、使用人さんのおかげで、僕、いい事思いついちゃった。ふへへへ。
お家の階段にはね、重いお荷物運ぶ時に、タイヤの付いた台を使うんだけどね、それを3階とかに持ってく時、階段の端っこから上るんだよ。階段の端っこは、僕達が使うみたいに、ガタガタじゃなくて、平らなんだ。だから引っ張って、お荷物運べます。
おすべり台みたいに出来ないかな?
僕は階段の端っこまで、乗り物に乗って移動します。もちろん前にディルとリュカ。後ろにはシルフィーです。そして。
「いくでしゅよー!」
僕はおすべり台を、下り始めました。
「ふおおおおおおおっ!!」
「主!!」
「ふぶぶっ!」
下に着いたら、マシロが僕の前に居て、ブフってマシロにぶつかっちゃった。シルフィーはエシェットが抱っこして、止めてくれてました。
ふう、びっくりした。思ったより、とっても早かったよ。壁にぶつかっちゃうと思った。マシロありがとね。
「主、危ないではないか。怪我をするところだったぞ。」
「ごめんでしゅ。でも、おりられまちた。」
「下りたというのか?」
でも、ちゃんと下には来れたでしょう?それに今ので、止まり方も大丈夫だよね。マシロ達が下で待っててくれれば、お怪我もなし!後は、上手くおすべり台出来るように、練習です!
でもね、階段おすべり台、すぐに禁止になっちゃいました。
お仕事終わったお父さんが、階段で遊んでる僕達見て、すごくすごく怒りました。
「何でお前は、次から次に、危ない事ばっかり思いつくんだ!!マシロ、エシェットも何で止めない!!」
僕はゲンコツされて、ふええええです。なんで?マシロ達が居るから、危なくないよ。僕がグスグス泣いてたら、おじいちゃんが抱っこしてくれました。それでね。
「ユーキや。もし、滑ってる時に、乗り物が壊れたらどうする?ユーキのが壊れなくとも、シルフィーの方が壊れたら?マシロ達が助けるの、間に合わんかったら、どうなるかのう?」
「グス…。シルフィー、おけがでしゅ…。」
そうか。もしかしたらちゃんと下まで、行けないかも知れないんだ…。僕、下に行くことしか、考えてなかった。途中で転んじゃったら、きっと酷いお怪我しちゃうね。シルフィーお怪我するのダメ。僕もお怪我したら、お父さん達、すっごく心配する。
「分かったかのう。皆んな、ユーキ達が心配なんじゃ。」
「はいでしゅ…。ぐしゅ…。」
僕は抱っこから降りて、お父さんの所に。そしてちゃんとお辞儀して、
「とうしゃ、グス…、ごめんしゃい。」
ごめんなさいしました。お父さんは、もう危ないことはするなよって言って、ちゃんと謝ったから、許してくれるって。良かった。
それでもグスグスしてた僕。夜のご飯の時もグスグスです。何か、泣くの止まんなくなっちゃった。最後は休憩のお部屋で、お母さんに抱っこされて、いつのまにか寝ちゃってました。
「寝たか?参った。全然泣き止まなかったな。」
「泣くの止まんなくなっちゃったのね。大丈夫よ、明日には元気になってるわ。それに、誰かが怒らなくちゃ。」
「どれ、ここはじいじが一肌脱ごうかの。泣いてばかりじゃったで、少しばかり可愛そうだったからの。」
「父さん、ユーキに変な事、教えないでくれよ。」
「ふん、危なくない事に、決まっておろう。わしの可愛い孫に、怪我なんぞさせるものか。」
<ある森の中>
「今日はここで寝よう。本当は安全の為にも、火を使いたいところだが、奴らに見つかっても大変だ。俺がちゃんと見張りをしてるから、お前達は寝ろ。朝、日が出てきたら、すぐに出発だ。」
息子のリクが、心配そうな顔をしていた。俺は安心させるように、リクの手を握ったが、その手はとてもとても冷たかった。
「大丈夫だリク。さっき見回りもして、安全を確認したろう。それに冒険者の父ちゃんが付いてるんだ。な、安心して寝ろ。」
リクは頷くと、アニータにくっ付いて、目を閉じた。アニータと目が合い頷くと、アニータも眠りに就いた。
まさかこんな事になるとは。アニータの店のため食材を探しに、いつもと同じように森に入った。今日の昼までは順調だったんだ。しかし、今回最後の、食材のある場所へ向かおうとした時、それはあった。
最初に気付いたのは、もちろん冒険者の俺だった。血の匂いだ。それもかなり強烈な匂い。俺はリク達に止まるように言い、隠れながら血の方へ向かった。
そして、向かった場所には、たくさんの人間の死体が転がっていた。壊れた馬車もある。調べてみたが、どうも商人と、護衛の冒険者のようだった。死んでから2日くらいか。調べを進めるなか、気になる物を見つけた。
それは顔を隠す為の被り物で、その被り物には、黒い鷹のマークが入っていた。
俺はそれを見て、一気に血の気が引いた。この黒い鷹のマーク。それは、今存在している中で、1番力を持っているとされている、盗賊団の印。
盗賊団の名前は「死黒の鷹狩り」。慈悲など一切持たず、出会った生き物は殺し、全てを奪い取る。国中の人々が恐れる存在。
俺は急いで家族の元に戻る。戻りながらカバンに、さっきの被り物をしまう。
嘘であって欲しい。だが、本当に奴らだったら?カージナルに近いこの森に、本当に居るんだとしたら。
早くウイリアム様に、知らせなければ。その時に証拠がいる。この被り物だ。
家族に合流して、すぐに街へ引き返す。とった食材も置いていく。そんな物運んでいて、逃げるのが遅くなる訳には行かない。
そして今の状況だ。何とか昼頃には、森の外へ出られるだろう。頼む、何事もなく、街へ帰してくれ。最悪リクだけでもいい。
そんな事を思いながら、俺は見張りを続けた。




