74可愛い孫(ルドガー視点)
オルガノ殿に手紙を頂き、アンソニーとジョシュア以外の、孫の存在を知った。名前はユーキ。
ウイリアムめ、なぜ私に連絡をよこさない。しかも、拐われて捜索のために、オルガノ殿の街を訪れたそうではないか。ちゃんと見つかったから良かったものの、孫を拐われるなど、少したるんでいるのではないか。
しかし、オルガノ殿は、随分と孫ユーキを気に入っているようだ。可愛い可愛いと、何度も手紙に書いてあった。これは早速、ユーキに会いに行かねば。まだ2歳だと言うから、おもちゃや絵本など、たくさんプレゼントを持って行こう。
まだオルガノ殿の街に居るであろう、ウイリアムにチャチャッと手紙を書き、私達は、準備を始めた。いろいろ用意する物があるからのう。なるべく早く用意して、カージナルの、わしの元屋敷へ向かおう。
それにしてもオルガノ殿の手紙には、気になることも書いてあった。ユーキの側に、フェンリルの変異種がいたと言うのだ。しかもそれだけではない。妖精が2人、肩に止まっていたらしい。そのほかにも、ホワイトウルフの子供らしき魔獣と、1人得体の知れない男がユーキの側に居たと、書いてあった。
いったいユーキとは、どんな孫なのか。本当に会うのが楽しみじゃ。リズもずっと、ニコニコしっぱなしでいる。
全ての準備が終わり、わし達は元の屋敷へ出発じゃ。今の家には、当分帰るつもりはないからのう。だって孫と遊びたいし。筆頭執事に全てを任せ、これからは楽しい孫との生活じゃ。馬車の中で顔がにやける。
そしていざ、ユーキに会ってみると、本当に可愛い孫じゃった。もう目に入れても痛くないほど、可愛い可愛い孫じゃ。しかも、ちゃんと挨拶もでき、こちらの話もちゃんと理解している。まだ2歳と聞いていたが、本当にしっかりした子じゃわい。
ユーキは自分の自己紹介の後、フェンリル達の紹介をしてくれたが、あいにくこっちは、あまりうまく出来んかったが、思わず笑ってしまった。
そして夜になり、ユーキが寝たのを確認して、元私の仕事部屋に、フェンリル達を呼んだ。
フェンリルの変異種1匹に、妖精が2匹、伝説の精霊1匹に、そして伝説の古龍エンシェントドラゴンが1匹。
まあ、流石に驚いたわな。この家の中だけで、この世界で1番の、戦力があるんじゃなかろうか。しかもその全ての生き物が、ユーキと契約してると言う。
とりあえず全員と話をしたがのう、ユーキに何かあれば、全てを消し去ると言われ、冷や汗を掻いたぞい。わしらが敵ではない事、これからユーキの、家族として生活する事を伝えると、皆一応は了解してくれた。
全員がユーキの元に戻り、部屋の中はわしとウイリアム、そしてアシェルだけになった。これからの事を、話し合わなければなるまい。
「それでじゃが、今回の誘拐事件で、どれだけの人間がユーキの存在に気付いたかのう。ああ、ちなみにじゃが。」
わしはアシェルを下がらせる。アシェルは軽くお辞儀をすると、サッと部屋を後にした。
「オルガノ殿からの手紙で、あの魔力石の付いた剣の事も、連絡をもらった。そして心配して下さった。誘拐で怖い思いをしたところに、更に怖い思いをさせてしまったと。契約の事といい、魔力石の事といい、ユーキは規格外な子供じゃのう。そしてとても可愛い孫じゃ。それでのう、これからの事じゃが。」
わしはウイリアムにある提案をした。ユーキの事がどれだけ、他者にバレているか分からない今、何かあった時、誰がユーキを守るのか。勿論、規格外な契約者達が居るのだから、もうこの間のような誘拐は、そうは出来んじゃろう。
だが政治的な問題が起きたら?
さっきの会話からも、何かあれば、世界が無くなりそうじゃが、それはユーキが許さんじゃろう。ユーキは家族の事が、大好きらしいからのう。ユーキが嫌がる事はせんじゃろうて。
そうなると、契約者達に余計な事はさせず、誰が政治家達を相手にするのか。勿論わし達も黙ってはおらんが、わし達がどうにも出来ん、他国の国王などが、しゃしゃり出てきたら?
「わしはリチャードに、話をしようと思っている。」
「父さんそれは…。」
「お前も薄々、感じているのではないのか。ユーキを守るためには、物理的な力以外に、政治的力がいると言う事を。」
「…リチャード様達は、ユーキを守ってくれるでしょうか。」
「勿論じゃ。リチャードにも、他国に言っておらん、秘密があるんじゃよ。わしは知っておるがな。ククククク。」
今ある国の1つ、名はボルフィス王国。
この王国の王をしているのが、リチャード王で、わしの幼馴染だ。わし達の住んでいるカージナルも、この国の領土に入っている。
わしの考えは、リチャードにユーキを紹介し、庇護してもらうと言うものじゃ。彼がユーキを認め、庇護してもらえるとなれば、ユーキは最大の後ろ盾を得ることになる。そうすれば、政治的な問題も解決出来る。
なに、リチャードは今回の話、絶対に断らん。それどころか、喜ぶかも知れん。さっきリチャードには秘密があると言ったが、彼にと言うよりも、彼の息子にと言ったところか。次の国王になる息子には、ある秘密がある。
「まずは手紙を送るとしよう。反応が楽しみじゃ。」
「父さん、頼むよ。あまり無茶はしないでよ。」
「分かっておる。」
さあ、どんな反応するか楽しみじゃ。




