番外編 今日は収穫祭り
朝、バンッて大きな音がして、僕たちのお部屋の、ドアが開きました。寝起きでぽやぽやな僕は、お母さんに抱っこされたまま、ドアの方を見ます。入って来たのはザクスさんでした。ん?いつもとお洋服違くない?
ザクスさんは、いつものカッコイイ、騎士さんの格好じゃなくて、街でお野菜とか売ってる人達みたいな、お洋服着てました。お父さんに聞いたら、土とかで汚れるから、汚れても良いお洋服着てるんだって。今日のザクスさんの格好は、そんな感じです。
「ユーキ、収穫祭りに行くぞ!」
ザクスさんの言葉に、お父さんがビックリしてます。仕事はどうするんだって。あの黒服の人達の事、お父さん達は毎日調べてます。今日もこれから、お仕事するお家に行くところでした。
「馬鹿だな、今日は収穫祭りだぞ。言っとくが、領主様も今日は仕事なしだぞ。何しろこの街は、領主様主催の、収穫祭りだからな。さあ、ユーキ用意しろ。汚れても良い服着るんだぞ。最後には美味しい物、たくさん食べられるからな。さあさあ。」
ドタバタしながら、お洋服を着替えます。お父さんもお着替えです。着替えが終わってお宿を出て、街の端っこの方に行きます。
どの街にもね、必ず畑と、動物飼う小屋があります。大きな畑と小屋です。これはね、もし街のお外で、魔獣とか暴れちゃって、お外に出られなくなっちゃったら、皆んなご飯困るでしょう。そういう時のために、畑も小屋もあります。
今日は、その畑の半分で、収穫のお祭りがあるんだって。収穫して、それから種蒔きです。そのお手伝いと、収穫したお野菜や果物で、最後は食べ放題です。
それ聞いた僕は、お目めパッチリです。早く早くって言って、畑に行きます。畑に着いたら、もうたくさんの人が集まってました。
「ユーキ、子供は収穫体験が出来るみたいだぞ。やってみるか?」
「やるでしゅ、やるでしゅ!」
係の人に案内されて、僕が収穫するお野菜の所に。
「この一角が、お子さんが収穫出来る場所になります。全てが難しそうなら、お父さん達が手伝ってあげて下さい。」
どうすれば良いのかな?僕が考えてたら、ザクスさんが、この葉っぱのついた茎、引っ張ってみろって。言われた通りに、引っ張ります。
「ふにゅうううう!!」
「はは、その掛け声じゃ無理そうだな。どれ、手伝ってやろう。いいか、一緒に引っ張るぞ。」
2人で一緒に引っ張ります。そしたら、ズボッと何かが抜けました。ジャガイモみたいなのが、たくさん付いてました。
これはユユって言う、お野菜なんだって。ご飯にも、ケーキにも、お菓子にも使えるとっても便利なお野菜です。収穫が終わったら、ユユのお料理が、たくさん食べられるんだって。ケーキとお菓子!僕頑張る!
ザクスさんに手伝ってもらって、どんどん収穫します。でも、頑張ったんだけど、僕には全部無理そう。お父さんにも手伝ってもらいます。お母さんは頑張って!って、畑の外から応援してくれました。
「どれ、こっち側はこれで最後だな。そうだな?ユーキ、最後にもう1度だけ、1人でやってみるか?」
「はいでしゅ!」
1つぐらい、自分だけで、収穫してみたいもんね。僕は茎を掴んで、思いっきり踏ん張ります。
「ふにゅにゅにゅにゅ!」
「頑張ってユーキちゃん!もう少しよ!」
お母さんの応援に、もっと力が入ります。そして…。
「ズザッ」
「ふぁっ!?」
勢いよく茎が抜けて、僕は尻もちです。やったなユーキって言って、ザクスさんがニカって笑ってくれます。
「うにゅ?ユユどこでしゅか?」
抜いたはずのユユが、僕の手の中にありません。ザクスさんもキョロキョロ。その時後ろでユユ収穫してたお父さんが。
「ユーキイイイ…、ザクスウウウ…、これは一体どう言うことだ。」
お父さんの方見たら、お父さんの頭に、ユユが乗っかってました。どうしたのお父さん、そんな所に乗っけちゃって。土で髪の毛、汚れちゃうよ?
僕、頭の上のユユ、僕が飛ばしたなんて知らなかったよ。お父さんがザクスさんの方へ、ゆっくり近付きます。
「お前は、ちゃんと支えるとか何とか、出来ないのか。今回はユーキは許そう。不可抗力だからな。だが、今回誘ったのはお前だ。責任はお前にとって貰う。」
「お、おい、ちょっと待て…、落ち着け、な?」
お父さんが、頭のユユを掴むと、それをザクスさんの頭に。僕達の所だけ、大騒ぎです。僕はオロオロ。お父さん達はぎゃあぎゃあ。係の人まで来ちゃったよ。そしたら、突然お母さんの声が。その瞬間、お父さん達の動きが止まりました。
「あなた達は、一体何をしているのかしら。皆んなが迷惑してるし、何よりユーキちゃんが、オロオロしちゃって、涙目じゃない!いい?これ以上続けるなら、私が相手になるわよ。分かったかしら。」
「「…すみませんでした!」」
2人とも、ものすごい勢いで、頭下げてました。それから係の人に謝って、周りの人に謝って、最後に僕に心配かけてごめんねって。
収穫が終わって、大人の人達は、皆んなお料理を作り始めます。僕は収穫で疲れちゃって、お父さんに抱っこしてもらって、少しだけお昼寝です。今日は皆んな夜ご飯いっぱい食べるから、お昼ご飯はありませんでした。
「ユーキ、ユーキ。起きなさい。ほら、ご飯が出来たみたいだぞ。」
お父さんの声に、目を覚ましました。うーん、何してたっけ?寝ぼけてたら、とっても良い匂いが。そうだ!ケーキにお菓子!
目を擦って、よく見ます。目の前には、たくさんの机の上に、たくさんのお料理が。もちろん今日、僕達が収穫した、ユユのお料理はあったけど、その他にも、魔獣のお料理や、果物がたくさん、並べてありました。
僕はケーキとお菓子に、って走って行こうとしたら、お父さんに、ちゃんとご飯も食べなさいって、止められちゃった。しょうがない、早く食べて、ケーキとお菓子を食べよう。
お母さんにお皿に取ってもらった、ご飯を急いで食べます。食べ終わった時はもちろん、お顔はいつもみたいに、お絵描きみたいになってたみたい。皆んなに笑われちゃったよ。でもそんな事よりも、ケーキにお菓子です。
ユユで作ったパイに、ショートケーキのイチゴの代わりにユユ。ユユのおせんべに、クッキー。
「ふおお、ふおおお!」
僕はどんどん、お皿に乗っけて貰います。持って帰って明日のおやつにしても良い、お菓子もありました。
どれ食べても美味しくて興奮。持って帰れるお菓子を袋に入れて、またまた興奮。もう大興奮です。そして最後には…。
<ウイリアム視点>
「やっぱりこうなったか。よいしょ。」
私はユーキを抱き直して、寝やすいようにしてやる。
「寝ちゃったか。」
「ああ、大分興奮して、騒いでたからな。こうなると思ったよ。それよりザクス、今日は誘ってくれてありがとな。」
「気にするな。これで少しでも、元気になってくれれば良いさ。」
そう、ザクスはユーキを心配して、今日誘ってくれていた。
ユーキと再会出来たのは良かったが、それでも辛い思いをした事に、変わりはない。少しでも良い。元気に遊んで、辛い事を忘れる時間が出来たら。
「それにしても、溜め込んだな。俺と同じくらいの、パンパンな袋だな。」
「…お前は取りすぎだ。」
ザクスが持つ袋には、パンパンにお菓子が詰められていた。そしてユーキが持っている袋も、お菓子でパンパンだ。でもそれを、抱きしめて眠るユーキの顔は、とても幸せそうだった。
オリビアが、宿で待つマシロ達のご飯を、調達してきたので、帰る事にした。
ザクスと別れ、眠るユーキを起こさないように、街の中を歩く。また明日から、仕事が待っている。ユーキを危険に晒した奴らを、絶対に捕まえてやる。ユーキの笑顔のために。
ユーキの寝顔を見ながら、私は再び、気を引き締めるのだった。




