595新しい黒服エチゾロス
誰の声かな? どこから聞こえたの? 僕は周りをキョロキョロ、みんなもキョロキョロ。だってね、向こうから聞こえたような気もするし、あっちから聞こえたような気もするし。いろんな所からお声が聞こえた気がしたんだよ。みんなに聞いたら、みんなもそうだって。
それからそのお声が聞こえてから、スピード達も他の黒服も、ビリダスやブレイデル達も、みんなの動きが止まりました。誰も攻撃しないで、僕のモコモコお邪魔攻撃を取るのも止めたんだ。スピードはちょっとビックリのお顔してます。
「まったく、これはどういう状況だ?」
またお声が聞こえて、今度はみんなの真ん中の上の所、黒いモヤモヤが広がります。えとね、渦巻きみたいにぐるぐる回ってるの。
そしてその真ん中から足が出てきました。僕もみんなもビックリ。マシロがすぐに出てきた足に唸り始めて、ハロルド達もとっても怖いお顔をして、剣を持って足を睨みます。
「もう精霊の石を奪ったかと思っていたが、この様子。それどころか苦戦しているように見えるが? ビルダス、これは一体どういう事だ?」
あっ、さっきから聞こえてるお声、この足の人のお声かも! いろんな所から聞こえてたお声が、急に真ん中から聞こえるようになったんだ。だからこの足の人のお声かなって思ったの。
『ユーキ、あいつの靴、黒服達と一緒だよ!』
『絶対に黒服を達の仲間だ! ユーキ今のうちにモコモコ出した方が良いかも』
みんなとお話ししてるうちに、どんどん足の人は黒いモヤモヤ渦の中から出てきて、今はお腹の所まで出ていました。あっ、靴だけじゃなくて、お洋服も黒服と同じだ! ん? う~ん? ちょっと違うけど、でも一緒のはず。
黒いお洋服がね、キラキラしてたんだ。それにいっぱい絵がついてたの。黒いお洋服に黒い模様。とっても見にくいです。
『ほら、ユーキ早く早く!』
お洋服を見ていた僕、モリオンに言われて、慌ててモコモコを出します。
「モコモコ~!!」
でも、モコモコは付きませんでした。
「にょ?」
『あれ? 何で? 避けてないし、払ってもないよね』
『どうして付かないんだろう? ユーキもう1回!』
「うん! モコモコ~!! それからもやもや~!!」
僕はモコモコお邪魔魔法ともやもやお邪魔魔法をやってみました。でも出てきてる黒服に全然付きませんでした。ぽんっ!て弾かれちゃうの。それで弾かれたモコモコはスピード達の方に落ちてきて、また頭とか体のいろんな所について、もやもやはビリダスの方に行って、ビリダスのお顔が見えなくなったよ。
モコモコともやもやが付かないまま、足の人はどんどん出てきて、全部出てきちゃいました。お帽子被ってるから、よくお顔が見えません。足の黒服はそのままちょっと僕達の方を見た後、すぐにビリダスの方に行きました。
「何故、石が奪えていない? …予定よりも早く石を使ったようだが? これを使っても石を奪えていないとは」
「申し訳ありません」
ビリダスが、一生懸命もやもやを取りながらそう言います。
「これは何だ? 誰がこんなふざけた魔法を使ったのだ?」
足の黒服は、近くのもやもやに手を伸ばして、もやもやを触りました。あれ? 今度はちゃんともやもやが付いたよ。今ならモコモコ付けられるかな? もやもやも。僕は急いでモコモコともやもやをやります。でも足の黒服がお手々を前に出したら、また弾かれちゃったんだ。
「なるほど、このふざけた魔法はあの子供がやっているのか。そして霧の精霊の精霊石は、あの子供が持っている。そういう事だな」
『あいつ、来たばっかりなのに、何でユーキが石持ってるって分かったんだ?』
『そりゃあ、ユーキがモコモコって叫んだからでしょう? それにモコモコは何とも言えないだろうけど、モヤモヤの方は霧って感じだもん』
『それだけで分かるのか?』
『ディル? 少しくらいは考えないよ』
ディル達がお話ししてる間に足の黒服が、さっき触ったお手々に付いたもやもやを取って、それからビリダスの方にお手々を伸ばしたら、ビリダスの周りのもやもやがなくなっちゃいました。
「ふむ、なるほど。私の魔法ではこれを弾く事ができるが。…お前達には無理なようだな」
「申し訳ございません。すぐに石を…」
「いや、霧の精霊の精霊石はもういい」
マシロ達はちょっと驚いた顔をして。それからスピードや他の黒服も驚いたお顔をしました。それでスピードは、周りにいっぱい浮かんでる僕が出したモコモコを、お体にいっぱい付けて、無理やりビリダス達の方に行ったよ。
黒服達はスピードを追いかけようとしたけど、僕は他の黒服が動かないように、すぐにモコモコを出しました。動いたらダメダメだよ!
今のスピードは…。顔に2つモコモコ。肩にもお体にも、お尻にも足にも、モコモコがいっぱい。黒服じゃなくて、モコモコ服になってます。それにビリダス達の方に行くまでに、何回も転びそうになってました。
「エチゾロスさま、一体どういう事でしょうか?」
あの足の黒服のお名前、エチゾロスだって。
「問題が起きた。そちらの対処のために、ほとんどの者が呼ばれている。今奪えていないようなら、今は放っておけと」
「問題? どれほどの問題が?」
「それは向こうで話す。…本当は奪っておきたかったが。今回奪えなかったことで警戒され、後でやはり奪いにくる、という事になった時、少々面倒だからな」
エチゾロスがまた僕達の方を見てきたよ。




