52街に到着。それぞれの夜。
<ユーキ視点>
ついに森のお外へ。ちょうど夕方です。そのまま街に向かって移動して、街に着いたのは、お父さんが言った通り夜でした。街の中に入るといろんな所で、魔力石が光って街の中がとっても明るかったです。
僕達の街は、食べ物とか武器とか、生活に必要な道具売ってるでしょう。この街は、魔力石をたくさん売ってるんだって。だから普通よりもたくさん、街で魔力石を使えるから、夜でも明るいんだって。
街に入ってすぐ、マシューさんが。泊まれるお家、見つかったって。
そのお家の場所を聞いたら、お母さんは冒険者ギルドに報告があるから、後でお家で会いましょうって、アメリアと一緒に行っちゃった。僕はしょぼんです。
それなのにお父さんも、誰かに会いに行くって、オリバーさんに僕を渡して、後でなって言って、どっか行っちゃった。
「ふええ…。」
「ユーキ君。団長達は、ユーキ君が見つかったこと、報告に行ったんですよ。だからすぐ戻ってきます。宿に行って待ってましょうね」
「宿?」
「ああ、今日泊まるお家のことです」
そうか、泊まるお家、宿って言うんだね。オリバーさんに連れられてお宿へ。オリバーさんが連れて行ってくれたお宿はとっても大きなお宿でした。このお宿は、この街で2番目に大きいお宿で、僕のお父さんみたいに、偉い騎士さん達が泊まる所なんだって。1番大きいお宿は、何か今壊れちゃって使えなくなっちゃったんだって。そう言えば、たまに壊れてるお家があったよ。どうしたのかな?
お父さん達待ってたら、眠くなって来ちゃった。でも、今日はみんなでご飯食べたいから、我慢です。
でも…。こっくり、こっくり…。ねむい…。
パッて目が覚めました。ベッドの上で寝てて、僕の隣にはお父さんとお母さんが。2人に挟まれて寝てました。マシロ達はベッドの隣で寝てます。
「ん? どうした? 起きちゃったか? ほらもう1度寝ろ。朝までまだある」
お父さんが僕を抱きしめながら、僕をベッドの中に入れました。あったかい…。
「とうしゃん…」
「ん?」
「おうちかえっても、しゅこしだけ、いっしょねていいでしゅか?」
なんか今は離れたくないです。一緒にいたいです。お父さんにお願いしたら、
「…ああ勿論だ。一緒に寝よう。約束だ。だからほら今はもう少し寝ろ」
お父さんがニッコリ笑ってくれました。僕は何だか凄く安心して、またすぐ寝ちゃいました。
<ウイリアム視点>
ユーキがまた、すーすー寝息をたてながら眠りに着いた。
「あなた、ユーキちゃん大丈夫?」
「ああ大丈夫、また寝たよ。起きてたのか?」
「何か心配で。そしたらあんな起き方するから。」
気付いていないだろうが、今ユーキはガバッと、勢いよく目を覚まして起き上がった。あの捕まっていた時のことを、まだ心は覚えているんだろう。
可哀想に。こんなに小さいのに、どれだけ神経を使ったことか。マシロ達がそばにいてくれなければ、今頃どうなっていたか。
それにしても、突然男が現れた時は驚いたが、さらにユーキが現れて、息が止まるかと思った。あれだけ探し求めていた奴が、木の上で手を振っているんだ。しかもニコニコと。いや本当にビックリした。
街に着いて、私が向かったのは領主の所だ。ユーキが見つかった事を報告すると、それはそれは喜んでくれた。また、今回捕まえた連中の取り調べを、領主と私、ザクスでやる事が決まった。数日は私達が指揮を取り、後半は領主が指揮を取る。私達は自分の街へ戻るが、何人か部下をこの街に残し、調べを進める。
その話を終わらせ、宿に戻ると、オリバーの腕の中でユーキが寝ていた。オリビアはまだ戻っていなかった。
「オリバーすまない。遅くなった。」
私はユーキを受け取る。いつもの可愛い寝顔だ。それを見てようやく安心出来た。ユーキが、私達の息子が戻って来た。
オリバーを休ませるため、部屋に返してから少しして、オリビアとアメリアが戻って来た。話はまた明日と言う事になり、アメリアは自分の宿に戻って行った。皆んなそれぞれ疲れているからな。面倒くさい話は明日からでいい。
簡単な夕食を取り、ベッドに入る。ユーキを真ん中に、2人で挟むようにして眠る事にした。マシロ達はベッドの横で、皆んなマシロにくっ付いて寝る事にしたらしい。あのマシロがおじさんと呼ぶ男は、マシロを枕にして寝ると言うと、さっさとマシロに寄りかかり寝てしまった。
いや、別の宿に行って欲しい、と言おうとしたが、マシロとシルフィーがすごい勢いで止めて来た。妖精達も、私の周りを飛び回っている。
森の中でのマシロの忠告。嫌な予感しかしない…。仕方なく男はそのままに眠りに就いた。
「大丈夫よあなた。」
オリビアの言葉に、オリビアの方を見る。
「ユーキちゃんが、友達って言ったんだから。悪い人じゃないわよ。今までだってそうだったでしょう。」
「だがな~、それが問題でもあるだろう。ユーキの友達は、規格外が多すぎる。もし政治的に力のある奴らにバレたら、守ってやれるか…。」
「あら、弱腰ね。そこは絶対守るって言わなくちゃダメよ。そんな弱いあなた、ユーキちゃんには見せないでね。あなたはユーキちゃんの憧れの騎士なんだから。まあ、冒険者もそうだけどね。」
いやそこは、最初の部分だけで良いだろう。そんな事を思いながら、もう1度眠るユーキを見る。
まあ、オリビアの言う通り、こいつがどんな友達を作っても守ってやるつもりだ。もう2度と、あんな失敗は許されない。必ず守ってみせる。
そう決意しながら、私は再び抱きしめると、眠りに就いた。




