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優しい家族と、たくさんのもふもふに囲まれて。〜異世界で幸せに暮らします〜  作者: ありぽん


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48それぞれの森の中の攻防

 今回は3人の視点から、物語が進みます。

 ウイリアム、ユーキ、エシェットです。

 

       *************************


<ウイリアム視点>

 止める間も無くオリビアが飛び出し、アメリアもそれに続く。

「おい、待て! 向こうには闇魔法を使う奴がいるんだぞ気を付けろ!」

 声を掛けたが聞こえているか…。何しろ。

「ユーキちゃんを拐ったのはお前かあああ!!」

「ユーキ様は何処だあああ!!」

 オリビアは雷の魔力を剣にまとわせてそれをひと振り。アメリアは風の魔力を剣にまとわせてひと振り。突然始まった2人の攻撃に黒服達は対処が遅れ、10人は吹っ飛ばされた。多分死んだ奴もいるだろう。

 残りの黒服達が、驚いた顔をして、それでもなんとか、防御の姿勢を取った。ザクスが苦笑いしながら、

「俺達必要か? 相変わらずの無茶っぷりで…。巻き込まれたく無いんだが。2人だけで全員倒せるんじゃないか」

 私が剣を抜くと他の騎士も剣を抜く。

「そう言うな。ほら、私達も行くぞ。放っておいたら全員死にかねん。それにあちらも本気で来るみたいだぞ」

 黒服達が身構え、攻撃態勢に入ったのが分かった。

「よし行くぞ! 相手は闇の力を使う者達だ。皆気を付けて戦え! いいな無理はするな!!」

 私の掛け声と共に、騎士が全員動き出し、黒服の方も動き出した。


<ユーキ視点>

「マシロ、マシロはやくでしゅ!」

 僕はマシロの背中をパシパシ叩きます。早くお父さん達のとこ行って、お手伝いしなきゃ。妖精さん達はずっとディル達に、今のお父さん達がどうなってるか、伝えて来てくれてます。

 お父さん達も黒服の人達も、同じくらい強いんだって。黒服の人達何人か倒したけど、騎士さんも何人かお怪我してるって。僕が行けばディルが居るから、お怪我治してあげられるよね。

「ん? ちょっと待てマシロ」

 エシェットの待てで、マシロが止まりました。もう! 早く行きたいのに。僕がぷんぷん怒ってると、エシェットは頭を撫でてきました。

「待ってくれ。マシロ、アレを見てみろ」

「何だ? …あれは!!」

 2人が見てる方を僕も見ます。誰かがこっちに向かって走って来てました。あっ、あれ!!

「マシロあのひとでしゅよ! あのくろふくのひとでしゅ!」

 走って来たのは僕にご飯くれなかった黒服の人でした。でも他にももう1人一緒に走って来てます。誰だろう? 同じお洋服着てるから仲間の人?

「アレがユーキ達を拐った連中か?」

「アイツらが力を使ったか分からんが、仲間なのは確かだな。闇魔法を使うぞ」

「そうかアイツらが…。確かに向こうに居る連中よりは力が強いな」

 エシェットは人の力がどのくらい強いか分かるんだって。

 少し走って来た2人を見た後、エシェットがマシロに降ろせって言いました。

 僕が慌てて何で降りるのか聞いたら、2人を倒してくるって。僕を苛めたからお仕置きしてくるって言いました。

 でもでも、僕早くお父さん達の所行きたいし。

 「奴らなどほんの数秒で片付けられる。すぐお仕置き出来ると言う事だ。お前達は上から見ていろ。」

 エシェットがサッと下に降りてっちゃって、そして黒服の前にちょうど下りました。


<エシェット視点>

 我は走ってくる黒服の前に、見事綺麗な着地を決めた。

「な、何者だ!」

 なる程。よく見れば2人とも闇の力は使えるが、片方は石の力に頼っている感じか。それにやはりな。此奴らなら一瞬で殺せるだろう。殺気だけでいけるか?

 我は2人に殺気を放った。

「…! 何だこれは…」

「ぐっ…」

 石に頼っている男の方が先に膝をついた。ほう、殺気だけでは死なんか。思ったよりもやるようだな。だが…。

 我が手を上げその手に力を溜めだすと、膝をついた方の男が、我の周りに闇を張り巡らせた。そんな事をしても無駄だというのに。辺りが見えにくくなるくらいだ。闇を吹き飛ばそうとした時、

「行け! お前だけでも戻れ! 早くしろ!」

「…分かった。お前のことはあの方にちゃんと伝える」

 膝をついていない方の男が、別の闇の中へ消えようとした。張り巡らされた闇が濃くなる。本当に見えにくくするための闇だったか。仲間を逃すためか。そうはさせない。が、我が闇を吹き飛ばした時には、膝をついた男だけになっていた。ちっ、逃すとは不覚。

「仲間は何処へ行った?」

「ふっ、言うと思うか。お前に我々が敵わぬことなど、最初の殺気でちゃんと分かっていた。ここで2人で死ぬよりも、1人でも帰らなくては」

「それで、自分は死を選んだと」

「私の心はすでに決まっている。その為ならば死を恐れる事もない」

「そうか」

 死を覚悟している此奴を殺しても、此奴は本望だと逆に嬉しがりそうだ。うむ。

 我は力を溜めていた手を下ろし、代わりに服のポケットから、ある木の実を取り出した。そして奴の首を絞め、無理やりに口を開けさせその実を食べさせる。

「ぐっ、げほっ、何を食べさした…」

 我は何も言わずに木の上へヒョイヒョイと登ると、マシロの背に跨がった。

 ユーキがちょっとふて腐れながら、早く行きたいのにと我に文句を言って来た。そしてお仕置きは終わったのかと聞いてきた。

「ああ勿論だ。これで奴はもう悪いことは出来んだろう」

 そう言うとユーキは小さい声で「ありがと」と言って来た。可愛い奴だ。


 マシロがユーキの家族の元に向かいながら教えてくれた。

 我が下に降りてからユーキに、我はユーキの為に、黒服にお仕置きに行ったのだから、家族に会いたいのは分かるが、ちゃんとお礼を言うように言ったらしい。

 ユーキはちゃんとお礼を言った。偉いぞユーキ。我はユーキの頭を撫でてやった。

 我が奴に食べさせた実が、効果を現すのは半日後くらいか。

 あの実は食べた者に、強い幻覚を見せる。その者にとって1番の苦痛を幻覚で見せるのだ。しかもほぼ1日中だ。

 そして作用はそれだけでは無い。苦痛に耐えかねその者が自殺し息が止まっても、必ず蘇生させ、また幻覚を見せる。不思議なことに、体を爆発などでバラバラにしても、元に戻ってしまうのだ。

 奴はこれからずっと、苦痛の中で生きて行かなければならない。死ぬ事も出来ずに。ユーキや他の生き物にひどい事をしなければ、こんな事にはならなかったものを。

 さあ、もうユーキの家族は目の前だ。さっさとユーキに害を成す物達を片付け、再会させてやろうではないか。ユーキの喜ぶ顔が早く見たい。

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