41質問とおじさんの諦め
「うゆゆ、マシロ…、おきたでしゅよ…。」
僕が起きたのは、なんと夕方でした。寝過ぎちゃったかな?でも、体はいつもみたいに元気になりました。
マシロが、街へ移動するのは、明日、明るくなってからにするって。悪い人達にここ見つからないか聞いたら、ここはいくらあの黒服の人が強くても、来られない場所なんだって。
マシロがこの森のこと教えてくれました。
この森は、最初僕達が捕まってた場所くらいまでなら、強い魔獣が出るだけの森なんだけど、奥に入っちゃうと不思議な木があってね、その木は自分で動く事が出来るんだって。しかも朝でも、お昼でも、夜でも、いつでも動いてるから、道が出来たり消えちゃったりして、人はすぐ迷って、森のお外へ出れなくなっちゃうんだって。
魔獣とかは、匂いで場所が分かるし、お空を飛べる魔獣はお空からも場所わかるから、そうやって生活してるんだって。
あの悪い人達、迷わないギリギリの所にお家作って、他の人達に、見つかりにくくしたんじゃ無いかって言ってた。
「起きたのか。」
おじさんが大きな足音鳴らしながら、歩いて来ました。
「おはよでしゅ。おじしゃんは、おけがしたとこ、だいじょぶでしゅか?」
「…。それについて聞きたい事がある。御主何をした?いや、妖精に何をさせた?」
「ふえ?ディルにおけが、なおしてもらいました。しょれだけ?」
「そんな訳がなかろう。もしや、そのフェンリルも妖精も、シルフィーも、無理やり従わせてるのではあるまいな!」
何言ってるの?ほけっとしてる僕の代わりに、マシロが聞いてくれました。
僕がね寝てる間に、お羽が治ったから久しぶりにお空飛んだんだって。そしたらね、今まで痛かったお羽以外の所も、痛く無くなってて、それに今までで1番体が元気になってたんだって。
「おお~、おじしゃんよかったでしゅね!ディルしゅごいです!」
「へへえ~、そうだろう、オレ凄いだろ」
ディルがえっへんと、カッコつけてます。
「…分かっていないのか?あの妖精だけの力では無い事が?」
おじさんがマシロに聞きました。マシロは首を横に振ってクククって笑ってます。
「主はまだ小さい。自分の魔力のことはほとんど分からん。今回は緊急事態だったから、一時的に我らに力を貸してもらったのだ。我が強制的に魔力を引き出した。ディルにはその時の魔力が残っていたのだ。そのおかげだろう。」
「そうか…。」
おじさんはそれ以上何も言いませんでした。それでドシンッて大きい音させながら、その場に座りました。
あれ、そう言えば、シルフィーとリュカは?あ、それに木の実まだ集めてない。夜のご飯どうしよう。僕が慌ててマシロにどうするか聞いたら、向こう見ろって。言われた方見たら、木の実のお山がありました。
「ふおお、あれどうしたでしゅか?」
「主が寝ている間に、このおじさんとシルフィー達が集めてくれた。シルフィー達は今最後の木の実を運んでいる。ほら、戻ってきたぞ。」
振り向くと、大きな葉っぱに木の実を積んで、葉っぱの端っこを持って飛んでくる2人が見えました。
「あ、ユーキ起きた。元気になった?疲れなくなった?」
「はいでしゅ。たくしゃんねて、げんきでしゅ。おてちゅだい、ごめんね。」
「ユーキ元気、とっても大事。だからいい。」
皆んなで木の実の周りに座ります。暗くなったからリュカが、魔力で明るくしてくれました。夜ご飯の前に、ドラゴンおじさんに質問タイムです。
「ドラゴンおじしゃんのおなまえ、なんでしゅか?」
「我に名は無い。」
おじさんお名前ないんだ。後でお名前考えてあげようかな?
「しょうでしゅか。じゃあちゅぎ!おじしゃんは、どんなでんしぇちゅのおじさんでしゅか?」
「我は…、我はエンシェントドラゴンだ。そっちのフェンリルよりも長く生きている。おそらくドラゴンの中では、最古のドラゴンだ。」
エンシェントドラゴン、ふーんそう言う種類なんだね。さいこって何。まあいいや。
「しょうでしゅか。ちゅぎ!」
「い、いや待て、何も無いのか?びっくりするとか、怖がるとか、何かあるだろう?」
怖がる?何で?おじさんカッコイイのに。全然怖くないよ。会えて嬉しかったし。
「?なんにもないでしゅよ。ちゅぎでしゅ!おじしゃんは、いつもここにいるでしゅか?どこか、遊び行ったりしましゅか?」
僕の質問にシルフィーが答えました。おじさんじゃなくてシルフィーです。
「ユーキ、おじさんはいつもここ。面倒くさいって言って、僕ともなかなか遊んでくれない。遊んでって言ってるのに。」
シルフィーが小さい手で、おじさんの手、ペシペシ叩いてます。シルフィー、おじさんの手より小さい。僕もおじさんの手より小さいよ。
「おじしゃんダメでしゅよ。ちゃんとあそばないと、いけないでしゅ。」
小さい子には優しくねって言って、僕もシルフィーのマネして、おじさんの手をペシペシ叩きます。
と、おじさんが大きなため息。そして突然大きな声で、笑い始めました。ガハハハハって、それだけで風が吹いちゃいました。せっかく集めてくれた木の実も、コロコロ転がります。
「「めっ!」」
シルフィーと2人でそう言ったら、おじさんはさらに笑って、マシロまで笑い出しちゃった。ちょっと2人とも笑うのいいけど、夜ご飯さらに転がってるよ。後で2人で拾い直してよ。せっかくシルフィー達が運んでお山にしてくれたんだから。
「我はこんな子供を警戒しておったのか、ガハハハハ!」
「だから最初に我が言っただろう。警戒して、気にしたら負けだと、わははは!」
2人がやっと笑い終わって、質問タイム再開。
どのくらいまで高くお空飛べるとか、そんなに大きいのにどうやって木の実採るのかとか、体洗うの大変じゃないかとか、この時の僕は、エンシェントドラゴンのこと分かってなかったから、僕の気になる事ばっかり聞いちゃった。
だってドラゴンだよ。僕、本当にドラゴンがいるって思わなかったんだ。絵本だけだと思ってたよ。
あっ、おじさんはねえ、ほんとに大きいんだ。うんとね、僕たち背中に乗っても全然平気だし、そうだ、僕のお部屋には絶対入れないよ。
聞きたい事聞いて、夜のご飯食べて、その後は明日のこと皆んなで考えます。
僕が捕まってから、2回目の夜です。お父さん達、心配してるよね。早く帰らなきゃ。僕がいなくなる時、必ず迎えに来てくれるって言ってくれたけど、僕達もお家の方に行った方がいいよね。だってマシロはお鼻がいいから、お父さん達近くに居いたらきっと分かるし。そしたら早く会えるかもしれないでしょう?




