235魔獣暴走の理由とオークキング
(マシロ視点)
ウイリアム達に一緒に来てくれと言われ、我とエシェット、ルトブルとくろにゃんでウイリアムの後について行った。話があるとも言っていたが、おそらくあのオークジェネラルの話しであろう。
我も奴を見たのは久しぶりだった。森で生活していた頃は時々見かけることもあったが、主と生活し始めてからは街にいることが多くなり、しかも奴らが住んでいるような危ない森には近づかなかったせいもあって、全く見ることはなかった。
そういえばフラフラと森を散歩していた時に見かけた時は、だいたい村を襲っているか弱い魔獣を襲っていたな。もともと争うことが好きな者達だ。その時拐われた人間や魔獣は今頃どうしているか…。
部屋に着きウイリアム達は椅子に座ると、大きなため息をついた。そしてそんなウイリアム達の表情はとても険しく、クインの顔色はかなり悪くなっていた。最初に口を開いたのはそのクインだ。
「まさかオークジェネラルが現れるとは。報告ではそんなもの1つもなかったはず。ギャレット無事に帰ってきた者達をここへ何人か呼んでくれ。話しを聞きすぐに対処しなければ。」
ギャレットが連れてきた者達は、街から少し離れた所で森の様子を調べていた。小さな群れがちらほらと見え始め、その対処をしていたらしい。そこにいきなりオークジェネラルとオークが現れたと。たまたま力のある冒険者が数名一緒だったため、多くの怪我人を出しながらもなんとか倒し帰って来たらしい。
数も良かったのだろう。ジェネラル1体にオークが数体。それに我達からしてみればあのオークジェネラルはそんなに力が強いオークジェネラルではない。まだまだ若いといった感じか。まぁ人間にとっては脅威だろうが、本当に力のあるオークジェネラルだったならば、今頃誰も帰って来れてはいなかっただろう。
冒険者達が部屋を出るとエシェットが口を開いた。
「ふん。暴走した魔獣の群れの大きさがいつもよりも多いと聞いていたが。オーク共が魔獣の暴走に目をつけて、上手いことほかの群れ同士を引き合わせ、自分たちの破壊の欲求を満たそうという考えか。」
「だがなんで今回そういう事になったんだ。魔獣の暴走は毎年の事だろう。」
「たまたまであろう?」
「魔獣の暴走の原因が分からず対処が難しいのにオークジェネラルまで。」
「言っておくが、お前達の話から群れの大きさも一緒に考えれば、おそらくオークキングも居るはずだぞ。」
エシェットの言葉にウイリアム達が一斉にガタッと大きな音をたてながら立ち上がった。
「それは本当か! お前がそう思っているというわけではなく。」
「確実に居るだろうな。お前達のような弱い人間に倒されたあのオークジェネラルは偵察しにきた下っ端というところだろう。それとお前達我はいつも不思議だったのだが…。」
エシェットが、何故ウイリアム達は魔獣達が暴走するのか分からない、といつも言っていることに対して疑問を投げかけた。
我は不思議に思っていた。分からないと言っていたのは、今回暴走した群れの大きさが大きいことに対して、と思っていたのだが。当たり前だと思っていたためその辺をちゃんと聞いていなかった。
エシェットが魔獣が暴走する原因について説明する。
魔獣達の暴走。この季節は子孫を残すために仲間同士が集まり、それと一緒に自分達の縄張りを広げようとするのだが。
いつもだったらそんなに役に立たない少しの魔力しか持っていない魔獣達が、繁殖と縄張り争いで一時的に魔力の量が跳ね上がる。その時縄張り争いで頭に血が上った魔獣達があまりに興奮しすぎて周りが見えなくなり、それが落ち着くまで暴れ回る。
これが魔獣達が暴走する原因なのだ。それは我々だけではなく、もちろん人間達も知っているものだと思っていたが。
エシェットの説明を聞いて、ウイリアムもザクスもクインも、アシェルのようにいつも澄ました顔をしているギャレットまでもが、驚きの表情を浮かべ固まっていた。ん? 何だ? エシェットは何か変なことを言ったか? ただ魔獣が暴走する原因を教えただけなのだが。
最初に口を開いたのはウイリアムだった。
「それは本当のことか?」
「こんなことで嘘をついてどうする。」
「この季節だけ流行る病気とか何かよくない物が、例えばこの時期にだけなる毒の木の実や草を食べてそれで暴走してしまうとか、そういうのではないのか?」
「毒? そんな物はない。ただ繁殖と縄張り争いで興奮しているだけだ。」
エシェットの言葉にウイリアム達が今度はドカッと椅子に座った。そしてクインが額に手をやりながらぶつぶつと話し始めた。
「何十年、何百年と研究されてきた魔獣の暴走の理由がそれなのか。繁殖と縄張り争い…。それに我々は巻き込まれていたと? 確かに自然の中に街や城を建てたのは我々人間だ。森を切り開き魔獣達の暮らしていた場所を奪ったのだからしょうがないのだが。」
「ああ、それでも理由がそんな簡単な物だったとは。」
ザクスは今回程ではないが、まあまあの魔獣の暴走を見たことがあったらしい。その凄まじさに驚き最初動けなかったようだ。
まったく人間は、こんな理由のものを何百年と調べていたとは。
だが、今回はいつもの暴走とは違う。オークキングやジェネラルが関わっているとなれば、奴らはなかなかの頭の持ち主だ。ただのオークならばなんとかなったかもしれんが。今頃オークキングの指示のもと、街へと向かってきているだろう。
ここでエシェットがある提案をした。エシェットとルトブルが街に結界を張ると言ったのだ。
「我らが結界を張ってやる。ユーキがこの街に居てお前達を助けると言っている以上、出来る限り危険な物がこの街に入らないようにな。しかし奴らは結界があるからといってこの街に入ることを諦めないだろう。」
そうだろう。戦いと略奪を好む者達だ。どうにかして中に入ろうとするはずだ。そして絶対に街からは離れない。
「それで街も破壊されないのならば結界を張ってもらえるのはありがたい。だが、結界の外で街からは離れないオークキング達を倒さなければ解決にはならないということか。」
「そうだ。そこでだが。我等は今からユーキのところに戻って話をしてくる。確かに手助けをするといったがこれはそれに入っていないからな。」
そう確かに主はザクス達を助けるとは言ったが、オークキングのことまでは入っていないからな。我等は主に言われたことだけはやるがそれ以上は関係ない。エシェットもそれで主に話をしてくと言ったのだ。
が、おそらくは倒すことになるだろう。オーク共は主にとっても危険な存在だ。主に言われるまでもなく主に害を成す者は全て我らが消し去る。
部屋に戻ると主はすでにいつもの可愛い顔で、すうすうと寝息を立て眠っていた。せっかく気持ちよさそうに寝ている主を起こすなどもってのほかだ。明日起きてから話をすることになり、我等はザクス達のとこには戻らず我等も一緒に寝ることにした。ウイリアムはそのことを伝えに戻って行った。
今すぐオークキング達が来るわけではない。おそらく今日倒されたオークジェネラルがいた場所から考えれば今までの経験から後7日くらいでここまで来るだろう。
(ウイリアム視点)
部屋に戻りザクスとクイントン殿にユーキが寝てしまっていて、話は明日になると伝えると承知してくれた。
私にはもう1つクイントン殿に言っておかなければいけない事がある。エシェット達の結界のことだ。あの結界は我々が魔力石を使って作る結界とはまったくレベルが違う。そんな結界を張ればそれを目撃した市民やそこそこ力のある人間達が黙っているはずがないのだ。
私がエシェット達の結界について説明すると、クイントン殿は先程の魔獣の暴走理由を聞いたときと同様に驚きの表情を見せた。
「そうか。そんなにも凄い物なのか彼らの結界は。ザクスお前は見たことがあるのか?」
「いや、そこまで強力な物は。俺が見た時よりもレベルが上がっているみたいだ。」
「そうか。ウイリアム。ユーキ君がもし彼らに結界を張ることを許可するのであればよろしく頼む。なに、そのあとのことは心配は要らない。適当な理由で誤魔化すさ。ボルフィスから力を借りていたとかなんとか言ってな。」
クイントン殿は魔獣の暴走の報告を受けてからすぐに行動を起こしていた。それから考えれば、嘘でもボルフィスから力のある人物呼び寄せた、と言っても日数的には問題はない。
「いろいろ力を貸してもらうんだ。追及ぐらいどうにかするさ。」
それからもエシェット達の結界があっても、もう少し出来る限りの防御の用意をすることや武器の調達など、いろいろな話しをしてからユーキ達の元へと戻った。
まさか魔獣の暴走がここまで話が大きくなるとは予想していなかった。本当にマシロ達が居てくれて助かる。我々だけではどうする事も出来なかっただろう。なんとかこの魔獣の暴走とオークキング達の襲撃を乗り越えなければ。




