40 才能
「えっ!? おっさん、闇属性持ちなの?」
「そんなに驚くこたぁねぇだろ。あんな忠告したのはそういう事……だろ?」
確かに同じ闇属性持ちなら忠告くらいするか。どうして気付かなかったんだろ。
「それに闇属性持ちって言ったって、お前さんと違って肉体型よ。嬢ちゃんみたいにドッカーンとはいかねぇのよ」
「……私、そんなに派手にやってないけど」
「ま、とにかくだ。人生の先輩として、ひとこと言うとだな……各々の才能をしっかり伸ばせばいいのさ。必ず誰かの役に立つ、自分のもんは自分を裏切らねぇ」
最もらしい事を言う。だが、その通りだろう。人間にはどうしても才能というものが付いてくる。それはこっちの世界だろうがあっちの世界だろうが変わらない。
だからこそ、色んな人間がいるんだ。才能を生かす人、自分にない才能を得ようと努力する人、自分の才能を分からず、ただただ日常を過ごす人。
だが、才能があろうが無かろうが生き方を決めるのは自分だ。才能に流されてはいけない。
……そう、彼女が才能に呑まれ、命を落とそうと考えたように。
「……随分まともな事言うんだね」
嫌味口に話すと頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「たまにはな……」
すると、Dランクパーティの元へ向かい、教育を始める。
「と言うわけだ、てめぇら! 魔力操作は身体で覚えやがれ! おじさんが居なくなった途端、護衛出来ませんでしたなんて言わせねぇからな」
「は、はいぃ!!」
……脳筋か。
「か、身体で……ですか?」
リュッカが心許ない表情でザーディアスを見つめる。
「大丈夫。それはあいつらで、嬢ちゃんには個人的に優しくおじさんがレッスンしてあげるから……」
ザーディアスは優しい笑顔でリュッカの肩に手を回して話す。
「おい、おっさん」
ザーディアスの手を払う。忘れてた、このおっさん、自分からスケベって言ってたな。
「リュッカもちゃんと抵抗する。あのバカ二人に夜這いされそうになったの、もう忘れた?」
「ご、ごめんごめん」
「でも、そっか……才能を伸ばせか、うんそうだよね! よ〜し、頑張るぞぉー!」
ぴょーんと飛び上がりやる気十分なアイシア。
「その前にちゃんと王都に着かないとね」
「はは……そうだった」
「バトソンさん、ここがどの辺りかは分かったんですか?」
一緒に食事も取っていたんだ、おそらくは把握しているはずと明日の予定を聞いてみる。
「うん。分かっているよ」
そう言うと荷馬車へと向かい地図を持ってくるようだ。戻ってくるとこの辺りのものか地図を広げる。所々に赤いインクでバツマークが書かれている。
「現在地はおそらくこの辺り――」
地図の上を円を描くように指でなぞる。
「だからこのルートを行って、王都の騎士達の仮設基地まで行こうと思う」
「このバツマークは騎士の仮設基地だったんですね。でも、騎士の仮設基地って入っても大丈夫なんですか?」
おそらく仮設基地を建てるのは迷宮が近くにある影響なのだろう。バトソンさんはアルメリアの迷宮には騎士も国の為に来ると言っていたのを思い出す。
「正確には、ギルドの仮設基地もあるんだがね。ギルドのところは場所によっては問題も起きるから。騎士のところなら受け入れてくれるからね」
「確かにこのおっさんじゃ信用もしてくれなさそう……」
「おい」
「でも、今日森に入ったばっかりなのに、だいぶ進んだんですね」
まあ、あれだけ走れば進むよね。馬の息もだいぶ荒かったし。
「流石に明日はこのペースでは行かねえから安心しな」
「そうしてもらわないと困りますよ。馬達にもこれ以上、負担はかけられないからねぇ」
「じゃあ明日の為に今日はゆっくり休もうか。そっちもこっちに来る元気なんてないでしょ?」
ジト目で睨む。男相手なら多分これが効く。
「……少しは信用してくれないかな?」
「だったら最後まで護衛、頑張ってね。ほら、アイシア、リュッカ行こ」
ふいとそっぽを向き、荷馬車へと向かった。




