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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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35 友情って大事です

 

「ああ……」


 何か悲痛な声が聞こえた。


「どうした? 旦那」


 そう訊くザーディアスの声の先には、出発支度を整えていたバトソンの姿があった。匂い袋を手に持ち、落ち込んでいる。


「いや、実はねぇ、匂い袋の残量がかなり減っててねぇ」


「どういう事ですか?」


「誰かが勝手に使ったんじゃないかねぇ。思いっきり魔力を込めた形跡があってねぇ……」


「誰かがねぇ……」


「誰かさん方がねぇ……」


「誰か……」


「だ、誰?」


 みんなが犯人と思しき二人を見る。リュッカだけは気を遣うように苦笑いしながら、分からないフリをする。


「ラッセ!! クリル!!」


「「ご、ごめんなさい!!」」


 これでパーティ内での立場が確立されるといいけど。


「……これが無いとマズイですよね」


「そうだねぇ、困ったねぇ……」


 本当に困った様子を見せるバトソン。おそらく今まで堅実的に仕事をしてきた彼はこのような事態は無かったのだろう。


「一応、二つ目もあるんだが、これは、その……」


 言いづらそうに困り果てる。多分、帰宅用だろう。だが、そんな表情を浮かべるバトソンに対し、明るく解決策を提示する。


「なぁに問題ないさ。ここには冒険者が四人もいるんだぜ。王都までは……あ、いや、おじさんは途中から抜けるが……まあ、大丈夫だろ?」


「そうだね。紛いなりにも冒険者がいる訳だし……」


 Dランクパーティの三人を見ると、青ざめた表情で力無く正座をしている。


「ど、どうかしたの? あんた達冒険者でしょ?」


「ええっ!? あっ!? はい! 冒険者……ですよ」


 さっきの剣幕は何処へやら、急に態度が一変し、挙動不審になる。


「んー……何か隠し事でもあるのかな?」


 ジリジリと近付きながら、目を細めて、正座する三人を睨み問い詰める。三人は顔から汗が止まらないようだ。


 アソルは堪らず、再び土下座。


「ぼ、僕達、魔物を倒した事ないんですぅーー!!」


「は?」


 ポカンとする一同。


「はああああああぁーーーーっ!!」


 リリアに全く似合わない叫びを上げる。


「ま、魔物を倒した事が無いって……」


「どういう事ですか? まさか、本当に私達を襲う為だけに引き受けたんですか……?」


 リュッカ達は流石に動揺を隠し切れず、疑いをかける。信じられないと顔に書いてある。完全に信用を失った。


「そ、それは決して違う! 誓って本当だ!」


「あのさ……信じろって方が無理あるって分かってて言ってる?」


 俺は冷たく現実を突きつける。口ごもるアソル。そこにまあまあと割って入る。


「じゃお前さんら、どうやってEからDまで上げたんだ?」


「じ、実は――」


 何でもランク上げには野草拾いのような魔物と遭遇しない依頼を片っ端から受けて、お金が貯まり馬車を買うとアソルが元々馬を飼っていたらしく、伝手(つて)で譲ってもらった馬を使い、リュッカ達のような依頼を続けて、実はDランクになったばかりらしい。


 ちなみにこの提案はラッセらしく、この重装備も自分の身を優先して守る為らしい。


 どうりでラッセだけ黄色の趣味の悪い鉄甲冑なわけだよ。


「――なるほどな、つまり、この仕事も馬車と匂い袋がありゃ問題ないと思った訳だ……」


「は、はい」


「だが、お前さんの連れが依頼主を襲う事に匂い袋を使う事は想定には入っておらず、現在に至るってか」


「は、はい……」


 どんどん立場が弱くなっていく三人。声も姿勢もどんどん小さくなる。流石の優しいバトソンやリュッカも同情出来ない様子だった。


 はぁと大きくため息が重なる俺とおっさん。


「どうする? 銀髪嬢ちゃん……」


「一応聞くけど、おっさんが最後まで護衛は?」


「王都までの護衛は余裕だが、道中でも言った通り、おじさんの目的地までだ。おじさんはおじさんの仕事がある」


 おっさんはゴブリンの魔石を採取と提出に行かないといけないと、道中言われている。何でも辺鄙(へんぴ)なところにあるらしい。その依頼主の居場所は。


「今から戻る訳にもいかないよね……」


「今から戻ったら、王都の学園の入学に間に合うかどうか……」


 リュッカは悲しそうな表情で俺の袖を引っ張る。


「……本当にごめんね、リリアちゃん」


 目から涙が溢れてきて、頬を伝う。


「私達と一緒じゃなかったら、リリアちゃんはちゃんと王都まで行けてたのに……」


 涙声で、責任を感じたのか謝ってくる。その顔を見て、ぐっと唇を噛む。


「リュッカが謝まらなくていい!!」


 確かにちゃんと確認をしなかったリュッカ達も非はあるだろうが、リュッカ達と行こうと決めたのは自分だ。泣いてなんて欲しくない。


「私達は友達でしょ? だったら迷惑かけたっていいよ」


「リリアちゃん……」


「まあ限度はあるけど……」


「おいおい、銀髪嬢ちゃん。決まってたのに、その一言で台無しだな」


「煩い! つか、おっさんも責任感じろ! 気付いてて泳がせたくせに!」


「それを言われると痛いなぁ……」


 こほんと咳き込み、場の空気を整える。


「とにかく、一緒に行きたいと思ったのは私なんだから謝まらないでよ、リュッカ」


「ありがとう……リリアちゃん」


「あと、アイシアもそんな顔しない。明るいアイシアでちゃんといてよね」


 アイシアも表情が暗かった。だが、その一言で目にいっぱいの涙が溜まっていく。


「――うわああぁーーん、リリィぃーー!!」


 びゅんと勢いよく飛び付いてくる。


「あとそれ、やめ――」


 ――ガバァッ! ドシーン……。


 勢いのままに俺達は三人仲良く倒れ込んだ。

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