30 焚き火と陰謀
「みんな、今日はここまでだ。明日からこの森を行くよ」
黒い影のようになる木々が生い茂る森を前に野営することに。荷馬車で山を作るようにバリケードを張る。その三角の真ん中で焚き火をするとのこと。
野営の準備をするには少し遅くはなったが、そう手間を取るものではなかった。何せ、寝る場所は荷馬車の中だ。野営と言ってもやる事は焚き火と軽い料理くらいだ。
「――ファイア」
積んであった焚き火用の薪に火をつける。こんなに簡単なんだ……辺りは暗いがどうってことはない。
しかし、魔法って便利だな。何も使わずに火をつけられるとか、よく考えたらこれはこれでチートな気がしてきた。
現実世界ではキャンプなどで火をつける時はマッチやライター。原始的なものなら石など、とにかく道具が必須だ。
だが、魔法が使える異世界ならどうだろう。燃える物さえ用意すれば簡単に火がつく。
「うーん……」
唸る俺を見て、リュッカが尋ねる。
「どうしたの? 焚き火……珍しいの?」
「ん? あ、ああ……うん。まあね」
「そうだね。普段焚き火とかしないよね。でもさ、リリィみたいにジッと見てみると……」
アイシアは暗闇を照らし燃える炎をジッと見る。赤色の炎がアイシアの瞳にゆらゆらと写っている。
「綺麗だよね……」
その感性は分かる。キャンプファイアーとかの炎も豪快に燃え盛っていて、本来なら危ないはずのものだが、美しく見えないだろうか?
「……ロマンチックな事言うじゃねぇの、シアちゃん」
四角のパンを手渡す。
「そうかな? 普通じゃない?」
この二人随分と仲良くなったな。結局このおっさん、殆どこっちの馬車に居たし……。
「おっさんの言うことには同意するけど、アイシアとお話してただけで、仕事してないんじゃない?」
むむっと口をへの字にして嫌味を言う。
「そう言うなって。匂い袋さんが変わりに働いてくれたんだからよ。つか、最初の頃はおじさんだったのに、今はおっさん呼ばわりなのな」
「おっさんの胡散臭さがさらに増してきたから、おじさんよりおっさんって感じかなって思っただけ」
「そんな〜……おじさんって呼んでくれないと泣いちゃうぞ、おじさん」
「泣けば〜?」
こんな会話をしている向こうの茶髪剣士さんは黙々と食事を取る中、他二人は面白くなさそうな顔をしている。
「くそっ! あのおっさん、上手いことやりやがって……」
「う、うん。羨ましいよね……」
ラッセは乱暴にパンを噛み千切る。だが、ラッセは悪巧みをする表情でクリルに耳打ちする。
「どうだ? お前もそろそろヤリてぇだろ?」
「えっ!? そ、そりゃ、ヤレるなら……で、でも、そんなこと……」
優柔不断な態度に終止符を打つように誘惑する。
「ヤルかヤラねぇか、選べ。俺は一人でもやるぞ」
クリルは少し悩むとすぐにへらっとだらしなく笑う。何を考えたか容易に想像ができる程の表情。
「うん、やる!」
「よし! だったら俺に任せとけ。その変わり、女は選ばせろ……二人だ」
「わ、わかったよ」
「へへ……今日はいい夢見ようぜ……」
二人ひそひそと話す様子を見たアソルは何を話していたのか尋ねる。
「何二人で話してるの?」
ギクっと思わず過剰な反応をする。
「えっ!? あー……ほらアレだ。見張りだよ見張り! 俺達で引き受けよっかな〜ってよ」
こうして陰謀が仕組まれる中、食事を終えるのだった。




