27 落とし所
俺の表情は少し暗い。それはおっさんの言った通り、いや、ダメではなかったのだが問題があった。
なんでもバトソンさんはもう少しで五十になるおじさんだ。昨晩のお酒がきつかったらしく、本調子ではない。とはいえ、五日後にはせめて王都近くまでには行きたいため、今日には出なければならないという事。
「――つまりなんだ。一緒に連れてってやってもいいが、出来れば護衛付きがいいって事で相談に来たってことか?」
「はい。……調子が良ければ、リリアちゃんの望みを叶えてあげたかったですが、この通り歳でして、責任を持つにしても今の状態じゃ荷が重くてねぇ」
バトソンさんは責任を持って、そして割り切るところは割り切って、しっかり大人の対応をする。それに比べたら俺は――はぁ、人の事言えないな。
「はっ、大見得切った割にはダメじゃねぇか。ガキが……」
オメェにだけは言われたくねぇよ。
思わず舌打ちをする。そんな俺をニヤついたドヤ顔で見た後、さらにバトソンに話をつける。
「いやいや、体調がお悪いのにご足労ご苦労様。だったら予定通り、そこの女達は俺達が責任持って護衛するからよ、おっさんと銀髪のガキは二人で行きな」
コイツのこの態度にまた頭に血が上っていく。感情が抑えきれない。
「だから! お前が信用出来ないから話てんだろ!」
「信用できないだぁ〜? 俺の何を知ってんだぁ? ガキ」
「下心が見え見えなんだよ!」
周りは俺が男言葉で喋るのに驚いている。また、おっさんが止めに入る。
「まあまあまあ、嬢ちゃんの気持ちは分かるぜ。大事なお友達だもんな。信用ならない奴にお友達は任せられないもんな」
「おい、おっさん……じゃない、ザーディアス……さん?」
やはり、このクズはザーディアスよりもかなり格下らしい。態度の違いったらない。
「ん? どした?」
「俺の言い分は――」
「いや、ガキのお前さんの言い分は全く信用ならん。誰だって分かるぞ」
額から汗をつたわせながら焦り始める。
「いや、俺は――」
「この可愛い嬢ちゃん達に手ぇ出せねえかなぁって思ったんだろ?」
「――っ!」
図星を突かれた顔をするが、アイシア以外、みんな気付いてるよ。アイシアだけきょとんとしてるけど。これだから心配なんだよ。
「だったらよ。おじさんもついて行こうか?」
「は? おじさんが?」
俺は益々信用ならないと目を向ける。
「おいおい、そんな顔すんなよ。おじさんSランクよ。強いよ、頼もしいよ、優しくするよ〜」
素直にこう思った――めっちゃ胡散臭い!
だが、このおっさんに助け船を出したのは茶髪の剣士さんだった。
「それは心強いよ。Sランク冒険者に護衛なんて普通してくれないよ。実績だって十分だし――」
「でも、スケベだって言ってたし、早々信用出来ません」
疑いの態度は変えない俺に、さらに説得をかけてくる。
「Sランクまでの実績は実力だけじゃない……信用を積み重ねたからこそ、成り上がれたものじゃないかな?」
「うっ……」
そう言われると確かにと言い分に納得していると、さらに当事者の二人も説得をかけてくる。
「リリアちゃんがこんなに心配してくれて嬉しいよ。だからこそ、みんな安全に行くなら、ね」
「……リリアちゃん、心配に迷惑に色々かけちゃってごめん。これだけ迷惑かけて図々しいかもしれないけど、私もリリアちゃんと一緒に王都まで行けたら嬉しいよ。だから……」
なんか変に意地を張っている自分の方がおかしい気がしてきた。銀髪の頭をがしがしと手でかく。
「わかった! わかりました。バトソンさんの事もあるし、仕方ないな……」
「ありがとう! リリアちゃん!」
アイシアに抱きつかれながら渋々、妥協する事とした。




