22 口喧嘩
「リュッカ、何があったの?」
「実はね――」
昨日の夜、依頼が取り消されてないかを確認すると、取り消されてはいなかった為、安心して宿に戻ったそう。この冒険者達も酒場に行っていたらしく、受付での確認だけだったらしい。
すると翌日、朝ギルドへ向かうと依頼が丁度取り消し手続きをしていたところだったらしく、説得を試みて現在に至るらしい。ちなみにアイシアはホスキンの治療を少しばかりしてから来る予定らしい。
「……なるほど、わかったよ。じゃあ――」
キッと敵意を示す視線で黄色い鉄甲冑の男を睨む。
「こんな度量の小さい男に守ってもらう必要なんてないよ。私達と行こう」
こんな小者感溢れる男に、せっかくできた友達を任せるわけにはいかない。
「えっ? いいの?」
「勿論!」
「ありが――」
リュッカがお礼を言おうとしたところに不愉快な声で邪魔が入る。
「へぇ〜……君可愛いねぇ。確か護衛の依頼は二人だったけど、その一人かな?」
急に上機嫌に話し始める。どうせリリアの容姿を見て気が変わったんだろう。
ふんっと鼻を鳴らすと、疑り深く返答する。
「違いますよ。昨日知り合ったばかりだけど、友達です」
すると、バンッと扉が勢いよく開いた。そこには息切れしているアイシアがいる。
「はぁ……ご、ごめん。はぁ、はぁ……お待たせ……」
みんなアイシアの方へ向き、その本人は何故注目されているのか分からない。ひと揉めしている中、勢いよく扉が開けばそうなる。
「リュッカ、どう? 大丈夫だった?」
「そ、それが――」
「気が変わったよ! 依頼を引き受けよう!」
またリュッカの言葉を遮る。
コイツ、今度はアイシアを見て判断しやがったな。しかもリュッカは完全に無視だ。コイツのこの不快な態度に腹が立つ。
「この娘がもう一人なんだろ?」
「へ? あー……はい。もしかして護衛の依頼を受けてくれた人?」
「そうだよ。まあよろ――」
「いや、この人達は私達と行くよ」
この下心見え見えの男の言葉を、二人を庇うように前へ乗り出し、遮る。
「リリアちゃん?」
「いやいやいや、確かに大人気なかったよ。でも、こんなか弱そうな娘とは――」
「あんたがさっきから罵詈雑言を吐いていた彼女の方がか弱そうだけど……」
体格的にも性格的にもリュッカの方が明らかにか弱いように見えるだろうに、この男は高圧的だった。
「私やアイシアを見て判断を変えるあたり、下心が見え見えなんですけど……」
舌打ちをして図星を突かれたような顔をする。
「だけどよぉ、遅刻したのも事実だし、酒場に居たからって挨拶にも来ないのはどうかなぁって思うわけで――」
「今、大人気ないって言ったの誰?」
神経を逆撫でする言い方にカチンときたのか、ギッと睨みつける。さっき着いたばかりのアイシアも、この不穏な空気に察したようで無言になる。
「――ああっ!! うるせぇなっ!! 大体、テメェは関係ねぇんだろ!!」
思い通りにならないと機嫌を急に損ねて大声をあげて威圧する――低脳な奴の典型的な態度だ。
「友人って言ったけど? それに依頼を取り消すならそっちの方が無関係でしょ?」
「――っ! こいつっ! 少しばかり可愛いからっていい気になりやがって――」
「調子に乗ってたのはそっちでしょ? 可愛い女の子に目が眩んだ半人前冒険者さん?」
「――テメェッ!!」
俺の言葉に頭にきたのか、腕を振り上げて殴りかかってくる。
「ラッセ!!」
茶髪の剣士さんが止めに入ろうとするが、俺はそれより素早く杖を向けると、
「――ダークスナッチ!」
「――なっ!」
ボンッと大きな音が鳴り、黒い靄が出る。無詠唱の闇魔法を発動した。
その様子に、ちらほらとギルド内に居た人達もどよめく。
「おい、今の……」
「ああ、闇魔法だ……」
ラッセと呼ばれている男は腰を抜かして尻餅をつくと、今度はこちらが威圧をかけるように杖を突きつける。
「……次は容赦しないよ。スケベ冒険者さん?」




