11 襲われた理由
「私の名前はおに……じゃなくて――」
「……オニ?」
「いや、何でもないよ」
実際、この世界に来てから自分から名乗るのは初めてのこと。思わず中身を、名乗りかけた。こほんっと咳き込むとニコッと笑顔で彼女達に名乗る。
「私の名前はリリア・オルヴェール。こちらがバトソンさん」
馬車を操縦しているバトソンさんはちらっと横目で見ると優しい笑顔で、ぺこりとお辞儀した。
「よろしくね、リリアちゃん、バトソンさん」
おじさん、もといホスキンさんは軽く名乗った。そして、今回の事の顛末を聞いた。
――アイシア達も俺のところみたいな田舎村からクルーディアへ向かい、そこで合流予定の冒険者のところへ行くところだったらしい。
だが、距離的に近いからと使い古した匂い袋を使ったのがいけなかったらしく、途中で効果が切れてタイミング悪く、この森の中ではあまり遭遇しないはずのホワイトグリズリーに出会ってしまったらしい。
「――ていうか、こんな森の中にあんなに目立つ熊がいるほうがおかしいと思うんだけど……」
あんな真っ白な熊、居たら普通気付いて対策とか出来そうなもの。
「そうでもないよ。ほら――」
そうアイシアが指差す方向にはアルミリア山脈があった。
「あの山からたまに迷って降りてくることがあるらしいよ」
「……なるほど。だから他の魔物も近くにはいなかったんだ。こいつ、図体がデカいから……」
「はい……」
ニュースとかでもたまに聞くしな。熊が人里に降りてきて、射殺されて処分されたなんて話。
「あの、さっきから気になってたんだけど……」
不思議そうに、でも言いづらそうに質問してくる。
「何?」
「喋り方が男の子っぽいなぁと思って……」
「……!」
「シアっ」
戦闘中の興奮がまだ冷めてなかったのか、一応、気をつけてはいたんだが素が出てしまっていたようだ。
この容姿だから持った違和感。誰も中身が男だなんて思わないだろうけど、今後の為にも悪目立ちは避けたい。
「ああー……えっと、は、母がその男勝りな性格のせいか喋り方まで……ね」
「そうだったんだ。こんなに可愛いのにすっごく変だなぁって思ったから、びっくりだよ。あははは……」
「ははは……」
今度から気をつけよう。俺の中の女子記憶を総動員して美少女になりきるぞ。




