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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
10章 王都ハーメルト 〜帰ってきた世界と新たなる勇者〜
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22 死闘! 対バザガジール!

 

「お話は済みましたか?」


「ええ、まあ……」


 リュッカ達は安全な場所かつ、二人の戦闘を見られるところまで避難。


 アイナ率いる風の魔術師団は、既に飛び立っているアイシア達に指示を出し、サポートに回っていた。


「いくつか訊いても?」


「構いませんよ」


「あの古代兵器はどうして、あんな曖昧な動きを?」


「ああ。ドクターが駄々をこねていただけですよ。大したことではありません」


 道化の王冠(クラウン・クラウン)は個性の強いメンバーが多く、ドクターはプライドが高いと把握している。


 仲間内での揉め事など日常茶飯事なのだろうと判断。


「でもまさか、貴方が出てくるとは思いませんでしたよ」


「そうですか? あんな障害物をたくさん用意されては、破壊するしかないでしょ?」


 するにしても古代兵器でそのまま破壊すれば良かったのではと思ったアルビオ。


 わざわざバザガジールがする必要はないだろう。


「まあそれに……そこの目障りな蝿虫共を始末して、少しは足しにしようという話もありましたしね」


「……殺すということですか?」


 聞かなくてもわかるだろうと口元が緩んでいた。


「ならば……させるわけにはいきませんね」


「フフフ……」


 お互いに戦闘態勢を取り、間合いを見張る。


「懐かしいですね」


「ん?」


「いや、貴方と初めて対峙した時も、こんな一騎討ちだったなと……」


「あーあ、そうですね。一年以上も前ですが……」


 あの時はあまりに圧倒的な強さに、やられるばかりだった。


 現に最初こそ、フィン達が全力で止めたほどだった。


 だが今、目の前に身震いすることなく、堂々と構えて迎えられる。


 成長を実感せざるを得ないアルビオは、


「貴方には感謝しています」


「おかしなことを……」


 ふるふると首を横に振った。


「貴方との戦いは、本当に学ぶことが多かった。だからこそ……本当に残念です」


 バザガジールとの戦闘で学んだことは本当に多かった。


 技術だけではない。戦いへの心構えや守ることの難しさ。勝利への葛藤、敗北から学び得るもの。


 心を踏み出す一歩をくれたのは、リュッカの言葉ではあった。


 心を支えて、共に歩き出す友人達がいてくれた。


 そして――心を強く構えさせてくれて、研磨してくれた宿敵(バザガジール)がいてくれた。


「バザガジール! 貴方は言ってましたね? 自分と対等の実力者を育て、互いの全力をぶつけ合い、死力の限りを尽くし、叩き潰したいと!」


「ええ! そうですとも! ええ!」


「今、異世界がどうとか、古代兵器を止めなければとか、色んなことが僕らの周りを囲っていますが……そんなの関係ない!! ――決着をつけるぞっ! バザガジール!!」


 いつの間にやらバザガジールも、すっかりこの対峙する空気に呑まれ、異世界のことなど抜けている様子。


「ハーメルトでは、互いに不完全燃焼ではなかったですか?」


「ハハっ!! 貴方もですか? 貴方も、決着に渇望していたのですか!?」


「ええ。だからケリとしましょう」


 アルビオは全ての精霊達を顕現。


「!!」


「あの時は勇者として決着をつけるつもりでしたが、今は……一人の男として決着をつけます!」


「ハハハハハハハハ……」




 ――そのいつ始まってもおかしくない雰囲気に、遠巻きに見ているリュッカ達も息を呑む。


「アルビオさん……」


 するとその上空をドラゴン達が飛んだ。


「あっ! あれは……」


 アイシアのポチを先頭に、ドラゴン達がアルビオ達の上空を飛んでいく。


 そのアイシア達も下を見る。


「あっ! アルビオ君!」


「アルビオ……」


 バザガジールとの戦いはアルビオに任せるしかないとハイドラスは、


「マルキス。彼らの戦闘領域から、すぐに離れる。スピードを上げろ」


「りょ、了解!」




 本来ならばバザガジールが止めるところだろうが、もうこの二人には互いしか映っていなかった。


「改めて言いましょう! 仲間(ぼくら)の力が上か。孤高(あなた)の力が上か。貴方の望み通り、その命尽きるまで存分に戦いましょう!」


「ハッハハハハハハッ!!!! 黄金の果実は完全に実ったようですね!! いいですとも! 決着をつけましょう!」


 アルビオはバザガジールの速度についていくため、フィンとルインを装備し、他の精霊達も武器化し、アルビオの周りを浮遊または潜んでいる。


 お互いの魔力がまるで睨み合いでもするかのように、威圧し合う。


 膨大化していく魔力同士はぶつかり合い、激しく空気を揺らし、振動していく。


 互いは睨み合ったまま、微動だにしないが、既に駆け引きは始まっている。


 どちらかが動けば、戦闘の火蓋は落とされる。


 しかし、どう動こうかという互いの脳裏には、想定しうる行動パターンがシュミレーションされており、そんな中で綻びほどの隙を常に窺っている。


 戦闘の流れを持っていけるものが、勝者となる戦場に――パキッという何かが軽く割れた音が、違和感に思えるほどに二人の耳に入った。


 その音の正体は、魔力の衝突に耐えられなかった、割れた地面の音だった。


 しかし、二人にはそれが火蓋のように聞こえたのか、リュッカ達の前から音も無く、姿が消えたかと思うと――、


「――おおおおおおおおっ!!!!」

「――ハッハハハハハハッ!!!!」


 一瞬で二人が衝突し合う姿が見えると、その後は激しい激突音が響く。


 リュッカにはハーメルトで見ていたためか、少し慣れた光景ではあったが、それでも緊張感は拭い切れない。


 互いの駆け引きは、張り詰めた糸のようにキリキリと切れるか切れないかの瀬戸際を攻めているかのよう。


 視線、手元、空気の振動、踏み締める音、相手の思考などあらゆる事柄が生死を分け、それをコンマ単位で計算し、行動している二人。


 その思考速度は計り知れず、もはや常人には辿り着けぬ領域までに本能で達していた。


「ザドゥ! メルリア!」


「――フリージング・モーメント!」

「――シャドー・ストーカー」


 バザガジールの足下が一瞬で凍りつき、触手のように伸びる影の刃が襲いかかる。


 バザガジールは上空に退避。影が迫るがバザガジールの速度には追いつかないところを、


「――はあっ!」


 アルビオが背後から追撃するも、拳で弾かれる。


「ぐっ!?」


「フフッ」


 アルビオは飛ばされ、バザガジールは襲いくる影に吸い込まれるように、回避しながら影の中心へ。


 するとグバッとバザガジールを呑み込むように影が収縮するが、


「――ハハハハッ!!」


 バキィンっとシャドー・ストーカーを粉砕。


 すると、パチッと静電気のようなものが一瞬、バザガジールの首元に感じた――次の瞬間。


「――ライトニング・モーメント!!」


 バザガジールは胸元に痛みが走る。まるで電撃のような痛み。


 そして血しぶきも上がり、黒い紳士服が血の色に混じっていく。


 アルビオがシャドー・ストーカーを収縮したのには視界と魔力の感覚を奪い、気取られぬよう配慮するためであった。


 視界は勿論だが、バザガジール自身を発動中心の魔法で包むことで、魔力の感知を鈍らせたのだ。


 そして、雷と光の速さを持って精霊の剣の斬撃を加えたのだ。


 本当なら首を狙うつもりだったアルビオの表情は、悔しそうであった。


「外したぞ、アル!」


「わかって――っ!?」


 一撃を加えたはずのバザガジールの姿が既に視界から消えていた。


 アルビオがいくつかの行動パターンを瞬時に考える中、シンプルに背後から攻めてきた。


「下手な手よりは、この方が効くでしょう!」


 振り向いた瞬間、渾身の拳がアルビオの顔面を打つ。


「――っ!?」


 視界がぐちゃぐちゃになる。頭が揺れる。考えていたことも吹っ飛ぶくらいに痛みが激震する。


 揺れて霞み、身体が風に乗るように飛ばされていることを認識する中で、バザガジールの本能的行動がポンっと頭に浮かんだ。


 フィンを地面に突き立て、飛ばされる身体の勢いを無理やり殺すと、その背後にバザガジールの気配を感じる。


 飛ばされたアルビオの先を回って、拳を打ち込もうとするのがわかった。


「させるかあっ!!」


 予想通りのバザガジールの動きに振り向き際に、精霊の剣で横払いしながら、拳を受け止めようとするが、


「!?」


 弱冠、刃の長さが届かない距離の背後に加え、フェイントだったらしく、拳はまだ打ち込んでいなかった。


 大きく空振った精霊の剣。


 それを目視していた獣神王は、


「いかん!!」


 思わず叫び出す。


 そしてバザガジールの本命の拳が打ち込まれ、地面ごと粉砕しながらアルビオを追撃。


「――があっ!?」


 粉砕された瓦礫が散らばる中に身を投げ出されるアルビオは、これ以上の隙は見せられないと、血を流しながらも、目を見開く。


 するとその瓦礫を蹴りながら、高速移動する。


 瓦礫から瓦礫へと瞬時に身を隠しながら、バザガジールを翻弄するも、


「洒落臭いですね!」


 魔力圧を強め、辺りの瓦礫を吹き飛ばすが、アルビオの姿は消えていた。


 すると、


「――!?」


 ズブッと片足が地面に引きずり込まれ、一瞬だがバランスを崩すバザガジール。


 瞬時に影に呑み込まれると判断したバザガジールは、跳んで距離を取ると、一緒にアルビオがついてきた。


「ハハッ!」


「バザガジールっ!!」


 大鎌を振りかざすアルビオの姿を確認した。


 あの瓦礫を高速移動したふりをして、その瓦礫によってできる影の中へと逃げ込んでいたのだ。


 そしてすかさずバザガジールの足下を崩し、離れるだろうと予測しての追撃の一手。


 だが、


「!?」


 バシッと大鎌を片腕で受け止めると、引っ張って引き寄せた。


「ハッ」


 引き寄せられる勢いと向かい来る拳の一撃は、致命傷の領域に達するのではないかと、リュッカ達の視線も集まる。


「あ、ああ……」


「やめてぇ!!」


 その叫びも虚しく、バザガジールの拳はアルビオの身体を貫通した。


「ぬう……!」


 するとバザガジールの影から、フッと何かが出てくると、


「むおっ!?」


 バザガジールの右腕を斬り落とす。


「「「「「!?」」」」」


 リュッカ達一同は何が起きたのか、目を丸くして観察していると、上空には雷を纏ったアルビオの姿があった。


「アルビオさんっ!!」


 バザガジールの片腕が斬り落とされたことで、両者は距離を取り、戦闘が一旦落ち着く。


 そんな中でリュッカ達は、アルビオを称賛する。


「さ、さすがは勇者の末裔。ま、まさかあのバザガジールという方の片腕を斬り落とすとは……」


「ワシでもあそこまで彼奴を追い詰められることはなかった。見事としかいいようがないが、(はなは)だ疑問が残る」


「疑問ですか?」


「うむ。狐目の実力ならば、あんな容易に腕を斬り落とされるわけがない。……確かに今の勇者は、ワシら原初の魔人を超えうる実力を持っておるかもしれん」


 実際、バザガジールとの超高速戦闘に加え、精霊達の魔法などを駆使した連携も見事と言わざるを得なかった。


「しかし、それでも奴にそこまでの隙があったとは思えん振る舞いでもあった。何か細工が……むっ?」


「どうかされましたか? 獣神王様」


 獣神王は耳をピクピクと動かして、二人の会話を覗き聞く――。


「いやぁ……まさか私の利き腕を斬り落とされるとは、いやはや……してやられましたよ」


「それはどうも」


「ハン! 上座でふんぞり返ってられるのも今のうちってヤツだぜ!」


「フィン、調子に乗らないで。こっちもギリギリなんだから……」


 アルビオは適度に攻撃を食らっており、特に重かったのは、やはり顔面の一撃と空振った時に食らった反撃の一撃。


 頭や身体からも血が出ており、止血の余裕もない。


 バザガジールが治癒を許すような奴でないことは、わかっているためである。


 これが今までの加減をされている戦いならば、もしかしたらとも思うが、そんな甘いことはない。


 するとバザガジールは自分の右腕をぷらぷらさせながら、称賛する。


「いやいや。調子に乗ってもいいと思いますよ。正直、私が貫いたはずの貴方……あれが本体だと思ってましたから……」


「それは上手く騙されてくれてありがたかったですよ」


「フフフ……本当に見事でしたよ。ほぼ本体に近い影分身、あれは闇の精霊が操っていたものであり、精霊を憑かせることで、本体との魔力との差異を縮めると同時に、貴方本体であるという信憑性を持たせたのでしょう?」


「ええ。そしてその影分身を操るザドゥに、貴方の腕を一瞬でも固定させたというわけです」


 しかもその誘導も上手く行えていたことに、アルビオは安堵する。


 超高速で展開している戦いの最中、個人の居場所を判断するのは、目視だけでは難しい。


 なので他の五感能力を研ぎ澄ませると同時に、魔力の気配などでも判断ができる。


 アルビオはそれを逆手に取ったのだ。


 アルビオの魔力は勿論だが、精霊達はそもそも魔力生命体であるため、魔力は膨大である。


 つまり、バザガジールはアルビオと六体の精霊の反応を常に判断する戦いを迫られていた状況。


 とはいえ、アルビオの反応の判断は難しいものではない。


 アルビオの気配は、常に精霊と共にある。


 なので最も魔力反応が大きいものがアルビオとなるわけだ。


 だが今回の場合、その影分身とザドゥとの魔力反応に似た反応が複数確認されていた。


 それは武器化していた精霊達が散らばっていたのもそうだが、影に潜んでいたのにも気付いていた。


 しかし、一度足を引きずられた箇所にそのまま留まっているとは考えづらかったという心理をバザガジールに与えることで、目の前で大鎌を構えるアルビオが本体であると誤認するかたちとなったのだ。


「フフフ……楽しくなってきましたねぇ」


 バザガジールは右腕を適当に放ると、左腕だけでも戦うようだ。


 勿論、アルビオもこれで終わるはずがない。どちらかが死ぬまで終わることはないとわかっている。


 だが、だからこそ聞きたいことがあった。


「バザガジール、貴方に訊きたいことがあります」


「先程、質問はし終えたのでは?」


 それはあくまで状況確認だったと首を横に振る。


「僕が訊きたいのは、貴方自身のことです」


「私の? どうでもいいことです」


「よくない! これが最後ならば、僕は貴方を知らなければならない」


 するとバザガジールは、フッと笑った。


「なるほど。確かに、どちらかが死ぬまでの戦いだ。相手のことを知る最後のチャンスでしょう。それで、何を?」


「貴方が一番最初に戦った理由はなんですか?」


「……」


 バザガジールも最初からこうではなかったはずだと思っての質問。


 その理由の中に、バザガジールを殺人鬼から、せめて罪の意識を持てる人間になってほしいと願っての質問だった。


 今、バザガジールにとって自分は対等の存在だと思ってくれているはず。だからこそ、こんな死闘を行なっているはずなのだと。


 アルビオが知るバザガジールは、戦闘におけることしか知らない。


「そんなことを聞いてどうするのです?」


「貴方ももうわかっているはずです。人の心が強さに直結することを……。貴方が今まで見向きもしなかった弱者が、強者に望めるほどの力を持つ可能性を。それは貴方自身にもあったことを……」


 バザガジールが強さのみに囚われていったことを知っている。


 その先まで辿り着き、生き甲斐を失い、クルシアと共に歩く道を取ったことも知っている。


 だがそのクルシアの提案の中で、弱者であったアルビオを育てることで、弱者の在り方にもきっと気付いているはずだと、初心を思い出させたいアルビオは訴える。


「貴方にも……守りたかったものがあったのではないのですか?」


 バザガジールは物思いに考えてみるも、


「さあ? 忘れましたね」


「バザガジール……」


「単純なものだったはずなんですがね。貴方だってそうでしょ?」


「そう……ですね」


 守る、奪う、誰かのため、自分のため、満たすため、求めるため、誇りのため。


 理由なんて至極単純なものが多い。


 アルビオだって、強くなりたい、守れる強さが欲しい。そのために戦ってきた。


 そして、心も体も強くなっていった。


 だがバザガジールは、その強くなる過程の中で、歪に心だけが身体の成長速度と波長が合わなくなっていた。


 だから強者を求め、心の中にある隙間を埋めるピースとしたのだろう。


 だがそんな歪な心にはまるピースが、強者を殺すことで一致するはずもなく、強さに対し、心がどんどん置いていかれた。


 だからもうわからなくなっていたのだろう。


 昔、身も心もまだ弱者であった頃の方が安定を保っていたはずだろうに。


「……貴方は私を救いたいのですか?」


「……それはいけないことですか?」


「ええ。それはいけないことです」


「!」


「私が今求めるは、貴方とより高みへと登り、そして貴方を殺すことで、この渇きを潤すのです! 未だに満たされることのない心の渇きを!」


「だから殺せと?」


「まさか、今更躊躇うのですか?」


 アルビオは覚悟はある。


 だから勇者ではなく、一人の男としてと口にしたのだ。


 でもそれでも、バザガジールとの別の決着を望む、未練がましい自分もいたりする。


 だから、このタイミングで話をしたのだが、


「いいえ、貴方を殺す覚悟はありますよ。ですが、取り戻して欲しいものもあるから、こうして話してるんだ」


「人として……正しい心ですか?」


「ええ……」


 するとバザガジールは笑みを零す。


「正しい心とは何ですか? 秩序が守られる心構えならば、それが正しいと? 果たしてそれは、貴方らしく生きているのでしょうか……」


「僕は、僕らしく生きているつもりだ」


「そうですか。でも、私にとっては秩序(それ)に従う心は非常に窮屈だった。だからこの道を選んだ……それだけです」


 今更話す余地などないと、否定し続けるバザガジール。


「貴方だって窮屈だったのではないですか? 勇者の末裔だと絆され、作られていく環境は……。それに辟易したから、勇者という肩書きを受け入れた……違いますか?」


「違う。確かにきっかけをくれたのは、周りの人達だけど、僕が勇者の道を進むと決めたのは、僕自身だ!」


「そうですか。ならば私も同じことです」


「!」


「私も周りの影響を受けはしましたが、この道を進もうと決めたのは私自身です。……お話は済みましたか?」


 バザガジールはアルビオの言おうとしていることを理解した上で、反論できないよう論破した。


 アルビオはきっとそれほどの才覚があるであれば、もっと違う道を、初心を思い出し、罪を改め、新たな人生をと勧めるつもりだったのだろう。


 しかし、バザガジールにその選択肢は存在しない。


 何故ならば王都ハーメルトでのリリアとの戦闘の時の高揚感が忘れられずにいた。


 思い出したあの感覚。取り戻したいと渇望した生と死が行き交う衝動。自分の全てを打ち込む喜び。


 クルシア達との接触で、余計な感情が入りはしたが、やはり追い求めたものはそんな簡単には捨てられなかった。


「――さあ……続きをしましょうか? 利き腕が無くなるくらい、どうということはありません」


 とてもじゃないが、片腕を無くし、大量出血している人間のオーラではなかった。


 バザガジールが放つ威圧感は、魔力以上の気迫を感じた。


 自分が追い求めるものに、只々純粋に境地を極めたいと切望する気概を感じる。


「アル。こりゃ、説得は無理だろ」


 元々コイツにそんなのは通用しないだろと、フィンが嫌味口。


 アルビオも本当に思い知った。


 もうバザガジールを止めるには、言葉は必要ないのだと。


「わかった。続きをしようか!」


 交わる拳と剣の中で、直接心に訴えるしかないのだと確信を得た。

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