07 グロテスクな印象が強くなりました
「本当に助かりました。ありがとうございます」
俺の手を取った彼女は礼儀正しくお礼を言う。綺麗な三つ編みおさげの赤毛が印象的だ。よく顔見るとデコぱちに丸めがねにそばかす持ちというちょっと残念要素が詰め込まれている。
「バトソンさん、そっちはどうですか?」
俺は赤毛の彼女が無事なのを確認するとバトソンさんに他の二人が無事か尋ねる。
「この人は怪我しちゃいるが無事だよ。君は大丈夫だよね?」
「はい! 私は大丈夫です!」
はきはきと元気よく答えるのはショートヘアの灰色の髪の女の子。こちらの赤毛ちゃんとは違い、可愛いらしい顔立ち。地味娘とモテ娘って感じ。
こちらの中年おじさんはどうやら先程の大熊に切りつけられたらしく、右腕あたりから血が出ている。バトソンさんが応急処置として右肩あたりを白い布で硬く縛り血止めを行った。
「あんた、立てるかい?」
「ああ……すまないね。助かったよ」
「ホスキンさん、無理しないで……」
「そうだよ。私達を庇って、こんな……」
二人は心配そうに見つめる中、俺の視線はこの大熊――ホワイトグリズリーに向いていた。こんなのが森の中にいるなんて訊いてないぞ。
とりあえずホスキンというこのおじさんを馬車へと乗せに向かうバトソン。持ってきていた治療道具を使ってもう少し治療がしたいらしい。何でもクルーディアまでもう少しかかるらしいので。
その間、俺達はホワイトグリズリーの処理を任された。
「それにしてもデカイ熊だなぁ……」
こうして改めて見るとかなり大きい。首が付いていたらもう少し大きいか。死体をこのまま放置する訳にもいかないとはいえ、処理を任されてもな。
どうしようと考えていると、赤毛の女の子が腰に刺していた小型ナイフを取り出す。
「あの……何を――」
ザクッ!
「――っ!」
赤毛の女の子はホワイトグリズリーのお腹あたりを思いっきりナイフで突き刺し、裂くようにお腹を開いていく。
俺は顔は引きつり青ざめる。それを平然と見ている灰色の髪の女の子に人差し指で軽くつつく。
「アレ、何してるの?」
耳元へ近付き、小声で尋ねた。
「ん? 何って……処理して肉とか毛皮とか魔石を取り出そうとしてるんだよ」
なるほど。彼女達はそれが出来るって分かっていたから処理を任したわけだ。
「だ、だからって手際良すぎない?」
赤毛の女の子は淡々とホワイトグリズリーを解体していく。内臓がズルリと血と共に地面に転がり、血が多少顔に付いても気にも止めやしない。割と女の子、こういうの平気な人が多いのかな?
生々しい内臓を曝け出されたカエルの解剖を思い出す。クラスの女子で一緒になった奴がこんな感じだったなとトラウマが蘇る。
アレはアレで結構グロテスクだったけど……これはそれ以上だっ!
さらに顔色が悪くなり、思わず吐き気が襲う。その様子を見た灰色の髪の女の子は心配そうな表情でこちらを見て、背中をさすってくれた。
「もしかしてこういうの苦手な人だった? 私は彼女と小さい頃から一緒で慣れてたから……」
「慣れって……」
「うん! 彼女の実家……解体屋なの。魔物の解体ってやっぱり大変だし、貴女みたいに抵抗ある人が多いからね」
ああ、マジっすか。今までで異世界に来て一番過酷かも――女の子って怖い。




