06 刹那の決断
やべぇっ!! 一刻の猶予もねぇじゃねぇか。匂い袋を投げつけるにも距離があり過ぎる。考えてる時間がねぇ!!
赤毛の女の子は体勢を立て直そうとするもホワイトグリズリーが迫る速度の方が早い。
逸る気持ちを抑えながら素早く解決策を見出す。
「おじさんっ!! 俺が合図したら何でもいい! あのデカブツの注意をこっちにっ!」
興奮のあまり、思わず一人称が変わって、男言葉になってしまった。
「な、何を――」
「いいからっ!!」
タンっと荷馬車から飛び降りると俺は詠唱を始める。
ここは森の中だ、火の魔法はダメだ。だったら闇魔法だな!
杖を大熊に向けて構え、紫色の魔法陣がリリアの下に展開され、周りが神秘的な紫色の光が包む。
「――闇の王よ、かの武具を我に貸し与えたまえ、血に染まる業の刃が敵を貫く――」
詠唱を終えると、カンカンッと荷馬車を杖で叩き、バトソンに合図を送る。それに気付いたバトソンは深く息を吸い――、
「――ピイィィーー!!」
大きく長い高音の指笛を鳴らす。それに気付いたホワイトグリズリーは頭を上げてこちらへと注意が向く。
「――ガアアァァッ!」
軽く舌舐めずりをしてニヤっとホワイトグリズリーを見る。
(やっぱ、頭上げるよな……計算通りっ!!)
「――ブラッド・ランスッ!」
悍しい赤黒い色で染まった槍状の塊が瞬時に出現。ギュンッと凄い勢いで数十メートルは離れているだろうホワイトグリズリーへと飛んでいく。
「えっ! はやっ!」
「ガアア――」
ボンっと固形物を粉砕したような鈍い音がした。赤黒い槍の塊はホワイトグリズリーの頭を粉砕したようだ。その首からは勢いよく噴水のように血しぶきが飛び散る。
首のなくなったホワイトグリズリーはその場で茫然と立ち尽くすとバランスを崩したのか、力無く倒れ込んだ。
ズズーン……。
「…………」
その近くにいた皆は呆然としている。ホワイトグリズリーの血にまみれた姿で。そして俺も呆然とする。
若干とはいえ中級魔法を練習していたが、ブラッド・ランスを使うのは今日が初めてだった。
ひえ〜〜〜〜!! こんなに威力があるとは思わなかったぞ! 人にこんなもの向けた日にゃ……ぞっとしない。
バトソンさんは馬の手綱を木に手早く縛り固定すると襲われていた人達に駆け寄る。
「大丈夫ですか〜!」
俺もすぐ後を追う。バトソンは灰色の髪の女の子とおじさんのところへ、俺は赤毛の女の子の方へ向かった。
「大丈夫ですか?」
俺は彼女に手を差し伸べる。
「う、うん。ありがとう……ございます」
彼女は俺の手を取り、立ち上がる。
良かったぁ……助けられて。初めての異世界での戦闘がスライムとかゴブリンみたいな定番じゃなくて大熊とは驚いたけど。
安心感からか、ほっと胸を撫で下ろした。




