05 迫り来る大熊
「――バトソンさん! 止めて!」
急いで馬車を止めろと呼び掛けると、手綱を強く引き、馬を止めた。
「どうしたんだい?」
「何処からか分からないけど、悲鳴みたいなのが聞こえた!」
「えっ……!?」
二人で耳を澄ます。すると――木々が生い茂る方から何か聞こえてきた。
「向こうの方から聞こえるね。あっちの方にも道があるの?」
「あ、ああ。ここ以外にも道があるけど……」
本当なら危険は避けたいけど、もし、助けを求めているのなら、流石に放っておけない。
はは……まるで物語の主人公だな。
「ねぇ、その声が聞こえる方へ行ってみませんか?」
「ええっ!? リリアちゃん?」
自分が知っているリリアちゃんではないと、物凄く驚かれた。
「もしかしたら、その匂い袋で何とかなる状況かも知れないし……」
「リリアちゃんがそんな事言い出すなんて……」
やっぱりダメか。
「分かった! 行こう!」
「えっ!?」
パシンッと力強く手綱を叩くと馬は今までとは違う、力強い走りで走り出す。
***
先程までの心地よい揺れとは一転、ガタガタと荷馬車は激しく揺れている。
「多分、声が聞こえてきたのは――」
バキバキと木が激しく折れるような音が聞こえる。
「グアアァァーーッ!!」
荷馬車から顔を覗き出し、遠巻きに見えるのは壊れた馬車と赤毛の女の子が一人、灰色の髪の女の子が一人、体型的に中年……おそらくはバトソンと同じくらいのおじさんが一人いる。
「……おい、何だよアレ……!!」
その向かえにいるのが遠くから見てもわかる大きな白熊。だが、俺が知る熊の大きさじゃない。約二倍はあろうかという大きさをしている。
赤毛の女の子はその熊に向かって剣を構えているが、腰が引けている。灰色の髪の女の子は杖を構えている。おじさんは怪我をしているようだ。灰色の髪の女の子が側に寄り添っている。
馬が畏縮したのか馬車が止まる。
「ありゃマズイな! ホワイトグリズリーか!」
「ホワイトグリズリーって?」
「この森に住む魔物の一種で、確かBクラスくらいの強さの魔物だ」
そんな説明を聞いている内に――、
「ガアアァァッ!」
ホワイトグリズリーの右手が赤毛の女の子に降り落ちる。それを見てか灰色の髪の女の子の杖が光る。
「――魔法障壁!!」
彼女を守るように薄く光る壁が展開されるも、ホワイトグリズリーの方が一枚上手か、強引に突き破る。
バリィィンッとガラスが激しく割れる音が響き、破片のようなものが散らばる。
「――きゃあああっ!」
障壁が壊れた勢いで赤毛の女の子は吹き飛ばされ、二手に分かれてしまう。ホワイトグリズリーは赤毛の女の子を狙い澄ましたようだ。
ズンズンと前のめりに一歩一歩近付き、迫り来る。




