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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
8章 ヴァルハイツ王国 〜仕組まれたパーティーと禁じられた手札〜
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19 化け物ババアの取り扱いにはご注意を

 

 俺はソウル・アクセルを起用し、屋根から飛び降り、アイシア達のところまで駆け寄る。


「二人とも大丈夫?」


「うん。私達は平気だよ」


「ていうかリリアさん、戻って来られたんですか?」


 俺はお茶目に舌をペロっと出して、ウインク。


「またヘレンに影武者、頼んじゃった♡」


「ヘレンちゃん来てたの!?」


「うん。私達のことがやっぱり心配だって、様子だけでも見に来たんだって」


 そんな呑気に話し込んでいると、全身を黒炎で焼き続けているアミダエルがのそのそと近付いてくる。


「会いたかったが、小娘ぇ!! 早速、当て付けかい!!」


 アミダエルの足元に紫色の魔法陣が展開すると、眩ゆい光を放ったかと思うと、黒炎が消えていた。


「まあ解呪するよね」


「当たり前だろが、小娘ぇ。会いたかった……会いたかったよぉ、小娘えっ!!」


 さっきからそれしか言えねえのかよ。


 煩いなと思いながらも、アミダエルの意見に不敵な笑みで返答する。


「まあ私も会いたかったよ。あんたでしょ? アミダエル・ガルシェイルさんは?」


「如何にも。アタシがアミダエル・ガルシェイルだよ」


「まあてっきり人間だと思ってたんだけど……」


 明らかに見た目が完全に某ホラーゲームのボスみたい。


 醜い蜘蛛の身体に人間がくっついてるアミダエルを見る。


「どうやら思い違いだったみたいだね」


「いやいや、あたしゃあ人間だよ」


「――どの口が言う!」


 思わずツッコミたくなるほどのグロテスクな見た目に、雰囲気的には深刻にならなければいけないところ、本当にツッコんだ。


「それはこっちのセリフさね。アタシの可愛いマンドラゴラをブッ殺したどころか、アタシにまで黒炎で焼くなんて、どうしようもない人でなしだねぇ」


「だーかーらー、それはこっちのセリフ。人でなしの意味知ってますぅ?」


 人でなしとは、人情や恩義をわきまない。人間とは思えない人のことを指す。


 俺の方が言ってることは正しい気がするのだが。


「まあどうだっていいことさ。アタシの邪魔をする連中は、皆殺しさあ!」


「随分と野蛮だね。研究者を名乗るなら、もっと知的で理性的な方が印象いいよ、化け物」


「はっ! 人間的理性があって研究者は務まらないねえ。研究者が信じられるのは己が欲望と探究心だけさ。他は踏み台さね」


 後世に名を残す研究者は、いつの時代も変人奇人が多かったろうが、残してもなお満足いかずに居座られるのも迷惑だ。


 化け物と吐き捨てても嫌味にも聞かれちゃいない。


「それは違う! さっきも言ったでしょ? 研究対象に対するリスペクトと感謝がなければ、その対象は応えてくれない。だから貴女はそんなに醜く、臭いんじゃないんですか!?」


 アミダエルの(いびつ)な化け物姿と異臭を棚に上げて、考えを否定すると、アミダエルは目玉の血管が浮き出るほどの怒りを宿す。


「ガ、ガキぃっ!! まだ言うかあ!!」


「い、いくらでも言ってあげますよ! 貴女の研究がまともじゃないから、まともな答えを返せなかったんですよ! 貴女の研究が認められなくて当然です!」


 俺はビシッと言い張るシドニエに思わず感心。


「お、おお。言うね」


「うん。さっきからこんな感じでアミダエルを怒らせてたんだよ」


「あー……なるほど」


 するとオールドが、アミダエル達が町の中を闊歩(かっぽ)していた際にポロッと出た言葉の数々に疑問を抱いた住民達に、詰め寄られていると報告する。


「どうやら作戦通りになりましたよ。アミダエルがディーガル様の名を出したことを今現在、問い詰められています」


「そ、そうなんだ」


 そう報告するオールドがさらっと説明するので、現実味を感じないが、表情に出ていたのかその疑問に、


「分身の方は中々めちゃくちゃですよ」


「さ、さいですか」


 そう答えてくれたので、苦笑いで返した。


 自身のプライドが高いせいもあってか、そこを上手く逆撫でしたようで、


「ああああっ!!!! 不愉快だねえっ!! このクソガキぃ!!」


 いや、短気過ぎだろ。この婆さん。


 まあそのおかげで、ディーガルに対する不満や不信を持ってもらえるわけだから良しとしよう。


「なら心置きなくぶっ飛ばせるってわけだね!」


「うん! 周りには人もいないし、私も頑張る!」


 俺達がやる気満々で武器を構えると、ヴァルハイツの騎士も震えながらではあるが、槍を構える。


「き、君達は下がって! 俺達が何とかするから……」


 一般兵がアミダエルの存在を知っているわけがなく、敵として認識する。


「オールドちゃん……」


「これは私達の役目ですね。総員! あの化け物を捕らえます。ディーガル様と何ら繋がりがある発言をしていました。真意を問うため、生け捕りにします!」


「「「「はっ!」」」」


 駆けつけた複数人の男性騎士が戦闘陣形をとる。


 そのアウェイ感をヒシヒシと感じるアミダエルは激情する。


「どいつもこいつもアタシの偉大さがわかっちゃいない! この国がこれだけの力を持ったことが――わかんないのかい!?」


 強い殺気を感じた。


 俺はソウル・アクセル発動中のため、アイシアを抱えてその場を跳び、口論していたシドニエは飛んでくるそれを(かわ)した。


「――!?」


「くっ!?」


 オールドは横から来たハイネに抱えられ難を逃れるが、周りの騎士達は胴体が上下真っ二つに裂かれた。


 ヘル・スコーピオンの尻尾の薙ぎ払いに、反応出来なかったのだ。


「どうだい? 醜かろうが何だろうがねえ……命がある人間が正義なのさあ! 死人は語れない、だろ?」


 自信満々に自分の持論が正しいと主張するが、説得力のない行動に虫酸(むしず)が走る。


「……シドの言う通りだよ」


「なに?」


「生物研究者を名乗るなら、先ずは命の重みってものを嫌というほど学ばせてやるっ!! あの魔人に味あわせたことと同じことをすれば、少しは懲りるだろうぜ!」


 この親にしてこの子あり、とは正にこのこと。


 魔物の研究をやっているだけあってか、アミダエルの思考も完全に魔物寄りである。


 命は奪い、利用するものとしか考えていないほどの傲慢な態度に、思わず男っ気のある言葉遣いで宣言する。


「アタシをさっきの黒炎で焼き尽くすとでもぉ?」


 不愉快だと眉をヒクヒクさせながら尋ねてきたので、俺もシドニエを見習ってみることに。


「だって私達より馬鹿みたいに歳とった割には、成長してないんでしょ? 腐ったその性根と脳みそ、しっかりと焼却してあげるよ」


「――このメスガキぃいーっ!! やれるもんなら……やってみなあ!!」


 五本の尻尾が逃がさないとばかりに四方から、襲いかかる。


 俺は側にいたアイシアが巻き添えにならぬよう、ソウル・アクセルの火力を上げて回避すると、マジック・ロールを広げる。


「舐めるな! ――リアクション・アンサー!」


 俺は付与魔法を施すと、二丁の魔導銃を手にしてアミダエルを翻弄しながら撃ちまくる。


「チィッ! ちょこまかと……!」


 俺はソウル・アクセルで動き周り、リアクション・アンサーで自動回避しながら、魔導銃による本体(アミダエル)への攻撃を緩めない。


 対するアミダエルもその尻尾での防御は勿論、下半身が蜘蛛ということもあって、機動力を利用した攻め手で果敢に攻撃してくる。


 そんの攻防を繰り広げる中で、ハイネがオールドに状況の確認を迫る。


「これは何事ですか? 凄い爆発音がしたと思って駆けつけてみれば……」


 ハイネが尋ねているうちに、分身体のオールドとリュッカが合流。


「だ、大丈夫? 今――リリアちゃん!?」


 ハッと見て、俺がいたことにやはり驚いているリュッカ。


 俺も無事だったことに安堵するが、一人だけ姿が確認できないでいた。


「ちょっと寝てろ!」


 俺はアミダエルの六本あるうちの一本の足にゼロ距離まで近付き、銃口を関節部分に押し付け、引き金を引いた。


「――ぎゃああああっ!!」


 脆かったのか、ばちゅんと生肉が弾け飛んだような音がなり、第一関節から下を吹き飛ばす。


 するとバランスが崩れ、そのまま倒れ込む。


 その隙に生じて、リュッカの無事を改めて確認する。


「リュッカ! 無事だったんだね」


「リリアちゃんこそ、どうして? 殿下達と帰ったはずじゃ……」


「それは後。今はコイツを何とかしよう。委員長は?」


 そう尋ねると、シドニエ達は深刻そうに落ち込む。


「……実は、あの尻尾に刺されて重傷なんです」


「なっ!?」


「で、でもすぐにお医者さんのところへ運んでくれたみたいだから、大丈夫だよ」


「リリアちゃんがここにいるならわかると思うけど、ポチがあんな風に飛んだのは、早急にナタルさんを地上へ送る必要があったからなの」


 あんな無茶苦茶をしたのが、そのせいだと知るとギッとアミダエルを睨むと、表情が揺らいでくれたのが嬉しいのか、ニタニタと笑う。


「あのメスガキにはアンタの友人かい? いい気味だねぇ。毒に侵された挙句、あの出血量だ。無事で済むといいがねえ!」


 俺はふつふつと湧き出る感情を何とか抑える。


 ここでコイツみたいに短絡的に喜怒哀楽してちゃ、解決にも繋がらない。


 それにアイシアが医者に診せているとも聞いた。


 今は信じるしかない。


「……言いたいことはそれだけか? ゾンビババア」


「なんだって……!」


 俺は腐敗臭を漂わせながら、吹き飛ばした脚が再生するのを確認して、そう認識した。


「言ったろ? 大昔にくたばってなきゃいけないアンタが、今生きてるのは間違いだから焼却してやるって……。どこもかしこも腐り切ってる婆さんがよお!」


「――あたしゃあ、腐ってないよ! メスガキぃ!」


 アミダエルが激情してくれるおかげで、こちらは冷静でいられる。


 怒りと同時に放たれた大振りの尻尾の槍もしっかりと回避できた。


「あまり無茶はするな、黒炎の魔術師殿」


「ハ、ハイネさん」


 全身鎧の彼女とシドニエ、リュッカがアミダエルの前に立つ。


「前衛は僕らがやります。リリアさんは一度下がって下さい」


「リリアちゃん、ナタルさんなら無事だよ。オールドさんが今、確認を取ってくれた」


「そ、そっか。良かった」


 そのオールドはハイネから少々の説教を受けている。


「オールド。貴女が本体なのだから、やられてはダメよ。出すぎないで」


「わ、わかっています」


 オールドの土人形はほぼ同じにしか見えないから、本体なんてわっかんないよ!


「貴様だな。エルフ達のみならず、人々を次々と怪物にし、兵器としてきた元凶は……」


 ビシッと鋼の剣でアミダエルを指して問うハイネ。


「それがどうした! お前だってヴァルハイツの騎士なら世話になったろうが! 今更、罪をなすりつけようなんて(こす)い真似はさせないよ! アタシらは共犯者さね」


「確かに我々も知らず知らずに、貴様の生物兵器を使っていたことも事実だろう。だからこそだ! 知ればこそ、このような悪虐非道を許すわけにはいかない! むしろ……私は……」


 鎧で顔は見えないが、ハイネが自責の念に駆られているのがわかる後悔の声だった。


「このようなことを許してきたこの国を許せん! だから、貴様はそのための証人になってもらうぞ! この国を変えるために!」


「そんなくだらない正義感でアタシの邪魔をするんじゃないよ!」


 そのセリフを皮切りにアミダエルから攻撃を仕掛ける。


 お得意の尻尾攻撃は前衛が三人であろうと、臨機応変に対応できる。


 ハイネとリュッカは剣で尻尾攻撃を逸らしたり、防いだりして何とか近付こうとするが、


「どうしたぁ!?」


 俺達、後衛を巻きこむように薙ぎ払う。


「ぐっ、くそぉ……」


 後衛陣はアミダエルの攻撃範囲外まで距離を置くも、アミダエルが前衛を押し退け、範囲内まで入ってくる。


「くそっ! 伊達にうん百年(びゃくねん)は生きてないか」


「どうします? あの尻尾、厄介ですね」


「うん。あの婆さん、戦い方をわかってるよ」


 どういうこととアイシアは、アミダエルに警戒しつつ尋ねる。


「アミダエルの奴の攻撃範囲と移動範囲が広過ぎる。先ずはあの尻尾。あのサソリの尻尾は鋼の装甲みたいな強度があるみたいだ。その辺はどう?」


「う、うん。地下でリュッカやシド君が戦ってた時、すごく硬い音がしてた」


 今もハイネ達が尻尾を弾いている際には、硬い金属音が響く。


 ただシドニエの場合は、武器が魔力で強度を上げた木刀のせいか、二人とは違う音を鳴らしている。


「それにあの脚、蜘蛛ってだけあってかかなり機敏に動けるみたいだしね」


 六つの脚で器用に動き回る様を見ると、かなり身体に馴染んでいるようだ。


 挙句に破壊されても再生するときた。


 あの異臭は生々しく再生する肉の生臭さだろうか。


 それともただ単にアミダエルの見た目から連想するに、数多の魔物の細胞、血肉を取り込んだ影響から、古い細胞体が腐った腐敗臭なのか。


 はたまた両方か。


 どちらにしても厄介な性能を持ち合わせているのは間違いがなく、更に攻撃は激しいものへと変わっていく。


 アミダエルは下半身の蜘蛛の口から複数の糸玉を吐き捨てると、その糸玉はネット状に開き、前衛陣の動きを止めるように襲いかかる。


 当たればマズイと全員、本能的に感じ取ったようで、当たらぬように回避行動を取ろうとすると、


「いいのかい? 後ろに当たるよ!」


 シドニエ達が見た先には、後衛陣である俺達が固まっていたのが確認できた。


 魔導銃での援護をしていた俺はともかく、魔法の詠唱を始めていたアイシアには、前衛が避ければ確実に当たる。


 するとシドニエは強く足を踏む。


「――ストーン・ポール!」


 俺達の射線上に飛んできていた糸玉は石柱に阻まれるというファインプレー。


「フン!」


 アミダエルは尻尾を使い、その石柱を破壊すると、


「むっ……」


 側にいたはずのシドニエの姿がない。


 するとアミダエルはガクンっと下から押し出される感覚に襲われる。


「むおっ!?」


「身体が大きいのも不便じゃないですか?」


 後ろへ吹き飛ばされながらアミダエルは、シドニエを目視した。


 その横にはもう一本のストーン・ポールがあった。


「チッ! 小僧っ!!」


「今です!」


 そのシドニエの合図に合わせて、詠唱していた二人が魔法を放つ。


「――エクス・プロード!」

「――ロック・スフィア!」


 地面の岩床がアミダエルを囲うように、球体状の岩の塊にされると、中でアイシアのエクス・プロードが炸裂したのか、激しい爆発音がこもって鳴る。


「やるね、シド」


「あ、ありがとうございます。正直、ギリギリでしたけど……」


 シドニエは敢えて糸玉を防ぐストーンポールをアミダエルに向かって斜め上に立てた。


 アミダエルの身体から考えて、(かわ)すよりも破壊する方が早く状況確認できると思うだろう。


 あのデカイ図体なら間違いなく。


 だがシドニエはその破壊されることを前提に更に接近、アミダエルの死角となる足下へとスライディングしたのだ。


 六つの脚で立っているアミダエルの蜘蛛の腹の部分はがら空きであるため、そこをもう一度ストーン・ポールで攻撃、打ち上げたのだ。


 強固な身体である以上、無詠唱で唱えたストーン・ポールでは身体を飛ばすくらいしかできないが、ダメージを与える可能性のある後衛部隊が確実に当てられるよう、サポートしたのだ。


「とはいえ、あの程度でくたばってくれるとは思えないね。―― 焔の王よ、黒き王よ。我が呼びかけに応え――」


 俺は次の準備にと詠唱を始めた瞬間だった。


「――危ないっ!!」


 球体の岩の中から、尻尾が飛んでくる。


 咄嗟に庇ってくれたシドニエに押し倒されたおかげで、回避できたが、


「ちょ、ちょっと退いて……」


「あ、ああっ!? ご、ごめんなさい……」


「イチャコラしてんじゃないよお!! ガキ共があ!!」


 破壊した瓦礫(がれき)の中からアミダエルが激怒しながら、現れる。


「ああああっ!! 不愉快さね!! 不愉快ぃ!! アタシの……アタシの邪魔をするんじゃない!!」


 アミダエルはバッと手を広げると、周りから召喚陣が大量に出現。


「もういい。この町ごと滅んじまいなぁ!!」


 召喚陣からはずるりと魔物の集合体のような、気味の悪い肉塊が這い寄って出てくる。


「な、何あれ……」


「コイツらかい? ただの出来損ないさ! アタシの実験に耐えられなかった奴らの成れの果て。こんなゴミでもアンタらを殺すくらいの力はある! せいぜいアタシのためになりな!」


「「「「「オオオオオオッ!!」」」」」


 スピードはそれほど早くないどころか、ゾンビみたいにノロノロと近付いてくる成れの果て。


「くっ! オールド!」


「わかっています。今、私の分身体で他の騎士達に呼びかけ……」


「どうした!?」


 オールドは青ざめた表情をして、こちらに振り向いた。


「その魔物以外の生物兵器も町中に……!」


「なっ!?」


 オールドは分身体から情報を逐一得ていたことから、確認が取れ、騎士達は目の前に現れた異形の化け物の対応に追われている。


「今言っただろ!? 町ごと滅べってさあ! 元々この国はアタシの実験場なんだ……どう扱おうがアタシの勝手さあ! お前さんらの死体は丁重に扱ってやる。貴重な素材だからなあ!」


「自分勝手も大概にしろ! ちゃぶ台ひっくり返すにも限度ってもんがあるだろうが!」


「……煩い、よっ!」


 アミダエルはもう加減しないと背中から更に触手を生やす。


「本格的に人間辞めてきたみたいだね」


「くっ! オールド! 貴女はこの町の住民の避難、保護を最優先。私が何とかあれを止めます。あなた達ももう避難して……」


 ハイネがそう言い放つが、


「馬鹿言わないで下さい。あそこまで挑発したのは私達ですし、元々あれにはこちらの用件もあるので、逃げるなんて選択肢はないんですよ」


「だね! ――召喚(サモン)! ポチ!」


 戻したポチを再度召喚。


「オールドちゃんとハイネさんはポチに乗って町の人達を助けてあげて……」


「し、しかし……」


「――誰がアンタ達の思い通りにさせるかい!」


 ポチの召喚と話し合いをしていることが癇に障ったのか、攻撃が飛んでくると、シドニエとリュッカが防ぐ。


「二人とも!」


「は、早く!」


「アミダエルは我々が……」


 そう言うと、引きつけるために二人は前に出る。


 俺も再び詠唱を始める。


「―― 闇の王よ、我が呼びかけに応えよ。暗き影より這い寄りし、黒き影よ。かの者に忍び、恐怖と絶望を与えよ。勝利なき現実を映せ! ――シャドー・ストーカー!」


 これだけの魔物を相手取るなら、広範囲に攻撃でき、融通が効くこの魔法の出番だ!


 俺は二人の邪魔になりそうな成れの果て達を自在に動く影でサポートする。


「ありがとうございます、リリアさん」


 そんな中、説得は続く。


「この町を、この国を想うなら、先ずはここに住む人達を助けなきゃ! 人がいなくなるのは悲しいことだよ」


「アイシアの言う通りだよ。あのクソババア、完全に隠す気ゼロみたいだから、加減なんてしてこないよ。だからこの国の騎士様なら先導して助けに行かないと……」


 俺達二人の説得に、申し訳ないと顔を(しか)めるが、


「わかりました。この赤龍(レッド・ドラゴン)、お借りします」


赤龍(レッド・ドラゴン)じゃなくて、ポチだよ」


 いや、そこはいいから。


 指摘された二人はクスッと笑うと、


「ポチ、頼むぞ」


 アイシアがポチを撫でて言い聞かせる。


「いい、ポチ。この二人の言うことをしっかり聞いて、みんなのこと……助けてあげるんだよ」


「グルル……」


 ポチはアイシアに対しては本当に素直である。


 龍の神子としての能力もあるだろうが、それ以上の信頼関係もあるだろう。


 アミダエルの猛攻を防ぎながらも、ポチは飛び立つ。


「――逃すかあ!!」


「やらせません! ナチュタルさん!」


「はい!」


 二人は急加速し、アミダエルの死角に。


「チィッ!」


 先程と同じ手は食らわないと後退りするが、リュッカがシドニエの前へ着地すると、グッと足を蹴り上げる体制を取った。


「――ストーン・ポール!!」


 石柱が地面から生え出てくる勢いに加えて、リュッカはストーン・ポールを蹴り上げる。


「なに!?」


 弾丸のように打ち出されたリュッカは、大振りの構えで飛んでいく。


「――はああああっ!!」


 肉体型の魔力を込めたリュッカの剣が複数の触手と強固なヘル・スコーピオンの尻尾の一部を巻き込み、斬り捨てる。


「――ぎゃああああっ!?」


 アミダエルは悶えて苦しみ、飛んだリュッカはその勢いのままに地面に前転しながら受け身を取った。


 これには思わず、俺とアイシアも目を丸くして驚く。


「凄い! 凄い! リュッカぁ!」


「ほえー……」


「まだだよ!」


 バッと体制を整えたリュッカの言う通り、コイツは魔人マンドラゴラとは比較にならないほどの強固さを誇るはずだ。


「この……ガキ共があ!!」


 斬り捨てたはずの部分が一気に再生したが、


「煩えよ、この語彙力ゼロババア」


 さっきからガキ共と自分勝手なことばっか。


「アンタの我儘が通る時代もここまでってことさ。もう終わりにしようぜ!」

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