04 匂い袋
魔石事情と魔物事情はある程度、話し終えると森の中へと移動する。
「この森を抜けるとクルーディアだ」
そう言うと一度馬車を止める。すると馬車の上の方に、カンテラのようにぶら下がっていた白い小袋に魔力を流し込んでいるようだ。
「何をしてるんです?」
「魔物避けだよ。この中には魔物が嫌う匂いがする粉末が入っていてね。魔力を込めて使うんだよ」
何か蚊取り線香みたいだな。
「でも、今までぶら下がってましたけど、使ってなかったんですか?」
「いや、使ってたよ」
でも変な匂いはしなかったけどなぁ。
小首を傾げ不思議そうにしていると親切に教えてくれた。
「気付かなくても無理はないよ。人体には無害だし、無臭だからね。おじさんは見た事はないけど、魔物が嗅ぐと凄い反応をするらしい。ゴブリンにこれを投げ付けた人がいるらしく、白目を向いて倒れたらしいよ」
とんでもない匂いなんだなぁ。白目向くほどとか。
「じゃあそれがあれば安心って事ですね」
「そうだね。最近新しくした物だし、この旅の間は大丈夫だと思うよ。強力な魔物や鼻が効かない魔物以外なら問題ないよ」
フラグが立つような事を言わないでほしい。不安になったのでもう一度確認を取る。
「本当に大丈夫……ですよね?」
「ああっ……ごめんごめん、怖がらせたね。大丈夫だよ。今から行く道はこれが効かない魔物の所なんて行かないから……」
魔物に遭遇しないに越したことはない。この世界はゲームみたいに――魔物を倒してレベルアップ! 技を習得しましたー!! ――なんて作り話じゃない。
今、俺がいる世界はファンタジーでも現実だ。危険は極力回避すべし。
バトソンさんは魔力を流し終えると手綱を握った。
「それじゃあ、行くよ」
パシンッ……軽快に走り出す。
***
木漏れ日が射し込む森の中を軽快に進む。涼しげな風が吹き、静かな森の中、葉音が小さく響く。
再び眠気を誘われると、うとうとと意識が朦朧とする。
「………………っ!」
遠くから微かに何か聞こえたような気がしたが、はっきりしない意識の為か気に止めなかった。
「………………ぁっ!」
何か聞こえたと今度は分かった。眠気を振り切るように目を擦り、意識をハッキリさせるとバトソンに尋ねる。
「……あの、何か聞こえませんでした?」
バトソンは首を傾げる。
「いや、何も?」
蹄の音が近いせいか俺にしか聞こえていなかったらしい。荷馬車の後ろの方へ移動し、耳を澄ませる。
「…………あぁっ!」
「……けてぇっ!!」
眠気が一気に飛んだ。はっきりはしないが、悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。




