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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
8章 ヴァルハイツ王国 〜仕組まれたパーティーと禁じられた手札〜
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09 はじめてのちょうはつ

 

 彼女は小さい頃から生き物が好きな女の子でした。


 召喚士(サモナー)であった父の影響から、魔物と触れ合う機会も多く、最初こそ小さい魔物を愛でる可愛い女の子でした。


 だが成長していく内にその生態に興味を持ち、好奇心が芽生える。


 そのため、召喚士(サモナー)としての能力をつけ、次々と魔物を捕まえては研究に没頭していた女の子でした。


 村の中でもかなり変わり者だった彼女は、人間社会に必要な人間関係の形成、知識や道徳を後回しにし、ひたすら研究にのめり込んでいった。


 当時の女性の在り方とはまったく異なる生き方をしていたせいか、誰からも認めてもらえないという下積み時代を経験するも、(のち)に魔物の生態研究者として名を馳せることとなる。


 だが輝かしき成果の裏で、どのような認知の仕方をしたのか、どのような研究を行なっていたのか、知る者は少ない――。


「あんた達、よくもやってくれたねえっ!! 不良品とはいえ、アタシの可愛いペット共をぶっ殺しやがってえ!!」


「不良品ならよろしいんではなくて?」


「良いわけあるかい! あれはあれでデータが取れたんだよ!」


 子蜘蛛の口から激怒する老婆の声が叫ばれるが、一応の確認。


「貴女、それが本体じゃないですよね?」


「当たり前だよぉ。こんな子蜘蛛が本体なわけないだろぉ! あたしゃあ人間だよぉ?」


 その人間という発言に、違和感というよりは怒りを覚えた。


 人としての一般常識があるなら、放たれていた魔物を殺した際、明らかに人体実験を行なったであろう証拠として人の死体が上がるわけがない。


 ましてや今、大人しくしているが、オオムカデの身体の一部も人のパーツへと変わっているはずもない。


 バザガジールなどは百歩譲って、人間の業が深くなり過ぎたと考えられるが、ドクターといい、アミダエルといい、人をなんだと思っているのかと考える。


 その感情が一番昂っていたのはアイシアだったようで、いつもの明るい様相はなかった。


「……ねえ、どうしてあの亜人さん達を殺したの?」


「ん? ああ、見せしめだよ。あんた達をいつでも殺せるってね! まあお前さんは殺しゃしないから安心しな。クルシアから聞いてるよ、龍の神子だそうじゃないか。今あの亜人共を守っているドラゴンは中々実験体向きさね! 勿論、その主人であるあんたもねえ!」


 ゆらりと静かに怒りを燃やすアイシアに対し、舐めた口調で饒舌(じょうぜつ)に話すアミダエル。


「是非その肉体をアタシの研究に役立てて欲しいもんさ。あんたの魔力、最強種の肉塊……ヒェヒェヒェ、堪らないねえ……」


「――ふざけないでっ! あの亜人さん達は……信じてくれたのに……!」


「あぁあ? なんだい。あんなゴミ共の心配をしてたのかい? 酔狂だねぇ、あんた」


「ゴミ? ゴミですって!?」


 アイシアに続き、ナタルも激怒すると、宙ぶらりんの子蜘蛛はケタケタと(わら)うアミダエルに合わせて揺れる。


「ゴミはゴミだろぉ? エルフ共は脳みそと魔力回路が役に立つくらいで、獣人やドワーフなんかは身体は良いんだが、いかんせんエルフほどの知能を持っちゃいない。長寿ってとこも評価が低い。脳細胞の成長が緩やかなせいか、中々成功体が生まれなくてねぇ。あんた達も不良品を見て思ったろ? 力任せに暴れるだけで、頭を使って戦おうとしない。本能が研ぎ澄まされるだけなのさ……」


 アミダエル曰く、その脳細胞の活性化が遅い亜人種は、自分の望んだ成功体を生むことは難しいと説明する。


「その分、人間はいい。寿命もいい具合で短いせいか、脳細胞の活性化も劣化も実験向きさね。そこそこに腕力もあるし、使い勝手がいいのさ」


「このムカデや先程から攻撃してくる謎の刃も人間を混ぜたものだと?」


「んにゃあ。ありゃあエルフ共さ。こいつらは虫型の魔物だから、筋力より脳みそが動くエルフ共の方が具合が良い。欲を言うなら人間の方が良かったがね」


 脳細胞の新鮮さを考えると、人間ほどバランスのとれた素材はないそうだ。


 まったく不快な感情しか芽生えないと表情は曇るばかり。


「だがそんな中でも中々の出来の奴らがコイツらさぁ!」


 すると高らかに自分の成功作について自慢げに語る。


「先ずはこの装甲オオムカデはこの鎧のような鱗を作り上げるのに苦労したもんさ。魔力回路の流れから強固な鎧になるようにエルフ共を頭蓋から食わせて、魔力を帯びさせたものよ。お陰で知能もだいぶ高くなったからねぇ! ヒェヒェッ!」


「……!? エルフを食わせた……?」


 すると魔物の性質に精通するリュッカはアミダエルの研究の一端の答え合わせをする。


「貴女はオオムカデの魔力回路を改良し、エルフさん達との魔力回路と接続し、オオムカデの魔力回路を変化させて、性質を変えたのですか?」


「!? お、おおっ! 話がわかるじゃないか、小娘! その通り、その通りさぁ」


「ど、どういうことですの?」


「魔物は、そもそも宙を漂う負の感情と魔力が干渉し合って生まれるもの。だから魔力回路によって魔力の循環役を担えるわけだけど、この人は元々持っている魔力回路の性質をエルフの魔力回路と繋がることで新しい魔力回路を生み出し、その魔物の身体に変化を与えたんだよ」


 そのリュッカの説明を聞いてもイマイチ、ピンと来ないが、話が進まないとなあなあな返事をする。


「よ、要するには魔力回路が変化したから別の魔物になったってことですよね?」


「はい。ですが、それだけだとあの腕については説明できません」


 装甲オオムカデについている人型の腕。


 いくら別の魔物に変質したとはいえ、あそこまであからさまに人型の腕が生えてくるとは考えにくい。


 するとリュッカのことが気に入ったのか、上機嫌に説明する。


「ヒェヒェ。食ったという時点で気付いたのかと思ったが、中々冴えてるねぇ」


 魔物が鉱物や食べ物、環境によって変化するのは特に珍しい話ではない。


 だけど食べただけで人型の腕が生えてくるなら、今までの魔物の中でも、そんな発見例はいくらでもあったはずだ。


 魔物が人間を喰らわないってことはないはずなのだから。


 だからリュッカは疑問に思い、説明できないと言ったことにアミダエルは納得したのだ。


「頭蓋から食わせたと言っただろう? 魔物共が基本的に食い散らかすのは、肉のついてるところだ」


 鶏肉や牛肉など身体の肉の部分を食べることを考えると、想像は難しくない。


 人間も中々頭を食う食べ物は少ない。


「つまり頭を食うことはほとんどないのさ。生物の脳みそってのは思った以上に魔力が乗っててねえ。魔物共は食うことを嫌うのさ。あんたならわかるだろう?」


 リュッカはキュッと唇を噛んでいる。


 魔物達でも急な魔力補給は身体に毒であり、魔力回路を暴走させる問題となる。


 人種のようなコントロールに特化した魔力回路ではないのだ、濃厚な魔力を保有する脳みそは簡単には食べられない。


 勿論、例外もある。


 身体の大きな魔物は誤って小さな魔物を食らっても魔力回路自体が大きいため、影響は少なくなるという例。


「でも答えは簡単だろ? 魔力回路の変質に加え――このオオムカデの脳細胞をエルフ共のヤツに変えたのさ」


「!?」


「そうすりゃあ魔力回路の魔力の流れも順当に運び、どんな変化が生じるか研究できるってもんさね。他にも色々やったよぉ――」


 アミダエルは魔物のみならず、人種の身体もバラバラにし、組み替えることで色んな変化を作り上げてきたと話す。


 それはまるで沢山ある人形をズタズタに引き裂き、千切り、綿まで掘り出して、別の人形同士の腕、足、胴、目、耳、鼻、頭をちぐはぐにくっつけて中身の綿も本来の量、柔らかさを追求することなく、無理やり押し込んだ(いびつ)な人形のよう。


 この精神的に狂った研究を自慢げに語るアミダエルに、腹の奥から不快な感情が湧き出てくる。


「いいかい? 生物の進化というのは、その身体同士の複合にあるのさ。それをあのドクターってクソガキは魔石こそが万物を創造する物だとか()かしやがる。魔力の循環の要になるのが魔石だってことは理解できるが、それを保護し、その魔石を活かしているのは肉体に宿る魔力回路であり、肉体であることを理解できていない。あの石ころはあくまで心臓ってだけさ! 魔法の研究資産であって、生物学の研究ではない! アタシにそれを押し付けられても迷惑さね!」


 自分は理不尽な意見をぶつけられているのだと、ドクターへの怒りを露わにするが、アイシア(こちら)側からすればどちらも理不尽の権化でしかない。


 こんな風に亜人達の命を平気で奪い、兵器にする化け物(アミダエル)も、人の身体に変質を与える人工魔石を開発し、テテュラやアリアのような被害者を作った化け物(ドクター)も、どちらも許容できるものではない。


「貴女は……貴女達は人をなんだと思ってるんですか!?」


 思い出して怒り狂う子蜘蛛はピタリと止まり、リュッカの方へ振り向いた。


「ああ? なんだって?」


「人の命をなんだと思ってるんですか?」


 すると子蜘蛛はハンと笑う。


「自分以外の命は道具だよ」


「……!?」


「だぁって、そうだろぉ? 我が身は可愛いが、他人なんてただの踏み台さぁ。アタシを認めさせ、完璧な生命を生み出すための世界。ここはそういう世界さぁ」


 身勝手な意見に少し驚いたが想定内通り、人の命を踏み躙ってしかない。


 正直、言葉にしてくれてほっとしている。


 だが上手くいかないと子蜘蛛はまた糸に吊るされたまま暴れる。


「それなのにっ! あのクソガキ(クルシア)は勝手にアタシの実験体を連れ出すわ、あの研究者共はアタシの研究を狂気と呼ぶだけで、中身を見ようともしない! 更には……」


 ギョロっと子蜘蛛も目玉が血管を浮き出させて、こちらを凝視する。


「あの銀髪のメスガキぃ!! アタシの丹精込めて育て上げた魔人マンドラゴラをブッ殺しやがってっ!! しかも身体は灰になったそうじゃないかっ!! 嗚呼っ!! 忌々しい!! 忌々しい!!」


 四人は正直、リリアが作戦に参加できないことが残念であり、不安でもあった。


 リリアはとても頼りになる存在であったから。


 だけどアミダエルのこの激怒している様子を見ると、連れて来なくて良かったと思っている。


 この狭い空間に影魔法が発動しづらい地下空間。


 いくら火属性や他の闇属性魔法が使えるとはいえ、得意な魔法を封じられるのは、この魔物達を相手取ることを考えると正解だった。


 すると思ったことがあるようで、シドニエはその怒り狂うアミダエルに話しかける。


「……貴女はなんでも人のせいにするんですね」


「ああ? なんだって!? そりゃあそうだろう! アタシは天才だ! これだけの丈夫で強く、そしてアタシ自身、順調に寿命を延ばせている。完璧な生命を作り上げているんだぞ? 世が認めないことがおかしいのさあ! 死を超越できる技術を作り上げるのに、一番近いところにいるこのアタシが――」


「自分に酔っている人が研究者を名乗らないで下さい!」


「「「「!!」」」」


 アミダエルを含めた一同は、真剣な声で一喝したシドニエに驚く。


「自分に酔ってるだとぉ!? クソガキぃ!!」


「そうでしょう? 自分の研究が一番だ、自分が正しい……そう考えること自体は悪くありませんよ。研究者の方々ってのは、自分の欲望や野心に忠実な方が多いように思いましたから……」


 北大陸で会ってきた研究者を思い出して語ると、それをアミダエルも察したようで、


「もしかして北の連中共に会ってきたのかい? アイツらは紛い物さ。情なんてあるから望む研究ができないのさ! 進化に犠牲は付き物さ! その犠牲も許容できず、臆病なアイツらにアタシが劣っているわけがない!」


 今の連中には会ったことはないがと、自信満々に自分の考えが正しいのだと語る。


 だがシドニエには、ただのわがままをほざくだけの子供にしか見えなかった。


 だからリリアさんならこれを挑発に使い、アミダエルを引きずり出せるだろうと、勇気を振り絞る。


 この人と戦わせないために。


「ふふ。あっはははははは……」


「何がぁ、何がおかしいんだいっ!?」


 予想通り、馬鹿にするように笑ってやると簡単に乗ってくれると、内心ヒヤヒヤしながらも悟られぬよう、ニヤッと笑う。


「貴女はその情を捨てたから、研究者として二流なんですよ!」


「な、何だとぉ!!」


「ここに引きこもっているのが、その証拠じゃないですか? 何故世間に認めて欲しいなら表に出ないのです? 何故正しいと思うなら表に出て主張しないのです? こんな地下の誰にも届かない場所で自己主張しても誰の耳にも届かないし、聞こえない。本当はわかっているのでしょう?」


 珍しく挑発的に話すシドニエに、アイシア達も無言で見守る。


「――自分が世の研究者の誰よりも劣っていることを!!」


「――そんなわけないだろぉっ!! クソガキぃ!! アタシが正しい!! アタシこそがこの世界を変えるに相応しい人材なのだぁ!!」


「少なくとも僕はそう思わない。貴女には研究者として欠けているものがある」


 ふるふると首を振るシドニエに対し、怒りのボルテージが上がりっぱなしだ。


「たかだか十五、六年生きた程度のガキに何がわかる!?」


「わかりますよ。たかだか十五、六年生きたクソガキでもね」


 すると木刀をビッと子蜘蛛に差して指摘する。


「それは研究対象に対するリスペクトだ! 貴女は他人のせいにするばかりで、その研究対象に対しても、周りの研究者に対しても、協力してくれることへの感謝と敬意を全く感じない!」


 アミダエルの発言の数々、この(いびつ)な魔物の身体、平気で命をむしり取り(もてあそ)ぶ幼稚な考え。


「北大陸で僕があった研究者の方々は、変わった人が多かったですが、それでもそのものに対し、取り組む姿勢は紳士的でした。その研究対象に対し調べ、知ることに感謝と敬意を払っている……」


 シドニエはテテュラを治療する彼女らや、精霊研究を行なっていた彼女達を見て、そう感じた。


 勿論、一般常識から若干外れてはいるが、それでも非人道的なことをしないということは、そのものに対し、尊重するべきことがあるからだと考える。


 だから親身になって取り組むことができるのだと考える。


 だから、


「その世界から生まれた生命にリスペクトする心がない内は、貴女の望む栄誉、名声、地位、権力、充足感を得ることはない!」


「ぐくうっ!!」


 言わせておけばと、子蜘蛛の瞳の血管がビキビキとキレかけている。


「そもそも幼稚なんですよ。自分は正しい、あーでもない、こーでもない。お前が悪い、お前も悪い……正直に言いますよ――貴女の方がよっぽどクソガキです!」


 ビキビキッ!


「さっきから貴女の言ってること、子供のわがままなんですよ! 欲しい物を強請(ねだ)り、他人の物をめちゃくちゃにする……どう考えたって子供です」


 ビキビキビキッ!


「それなのにこんな誰にも聞こえないところで、陰口を叩きながら、自分が正しいと自己主張。周りを怖がっているだけの子供のすることです」


 ビキビキビキビキッ!


 子蜘蛛がピタリと止まり、凄い勢いでシドニエを凝視するその様にアイシア達は威圧される。


 内心――どこまで挑発するのと心臓ばっくんばっくんである。


「何百年生きてるか知らないけど、脳みそ一桁のクソガキに何言われても説得力ないぞっ!! たかだか十五って言ったな? 十五年しか生きてないクソガキにもわかることがわからないクソガキにそんなこと言われる筋合いはない!」


「……ガ、ガキぃっ!!!!」


 するとトドメの一撃でも放つように大きく息を吸って、吐き出すように叫ぶ。


「――悔しかったら、その歳重ねただけのシワだらけで臭いだけの身体晒して出てこいっ!! この脳みそクソガキババアっ!!」


 ブチンッ!!


 すると地下通路の奥の方から殺気のように激しく魔力が放たれる。


「――このクソガキがぁあっ!!!! いいだろうっ!! そんなに殺して欲しいなら直々にブッ殺してやるっ!! アタシがそこに行くまで、虫共と遊んでろっ!! ――虫共ぉ!! このガキ共を半殺しにしておけぇ!! クソガキぃ……テメェの目の前でっ! そのメスガキ共の悲鳴を聞かせながら、絶望させてからじっくりと殺してやるぅっ!!!!」


 すると子蜘蛛はスッと天井に上がり、装甲オオムカデは奇声を上げながら、また天井伝いに激しく動き回る。


「挑発するのは構いませんが、限度というものがありませんか?」


「す、すみません! で、でもリリアさんならあそこまで言うかなって……」


 リリアは感情的になると口が悪くなり、男らしくなることからと自分なりの挑発をしてみせたのだが、慣れないことに加減が効かなかった。


 でもアイシアはグッドポーズ。


「でもよく言った! スッキリしたよ!」


「はい! 私もそう思います!」


「あ、ありがとう……」


 褒め称える二人に呆れながらも、ナタルも同意するが、


「それは無事にアミダエルを倒してからにしましょう。ですがこれなら研究所へ向かわずとも捕らえられそうです」


「は、はい」


 アミダエルの研究所はこの地下道よりも魔物の巣窟だろう。


 それにこの地下道でアミダエルを暴れさせれば、誤って外に出ることになった場合、ディーガルの悪行の明るみとなる。


 こんな魔物を作り出し、先程の発言を考えると、アミダエル自身も想像を絶するくらいの化け物になることは想像がつく。


 それらを含めた挑発。


 それを認めざるを得なかった。


「ではあそこまで喧嘩を売ってしまいましたから、勝ちましょうか!」


 するとアミダエルの怒号の指示を受けた装甲オオムカデにくっついていた武装魔蟲が人型の腕に張り付くと、ゴキゴキと物々しい音を立てながら変質せていく。


「来るわよ!」


 リュッカとシドニエは武器を構えて前に出るが、アイシアとナタルは壁から何かの気配を感じた。


「くっ……」


 どうやらまだ正体を表さない刃の持ち主も健在のようだと、警戒心を高める。


「アイシアさん! 常に感知魔法を発動しつつ、警戒を!」


「わかった!」


「な、何あれ?」


 目の前で装備を整えた装甲オオムカデの腕には、八本のガトリング砲が構えられていた。


 シドニエ達からするとまったく見覚えのない武器に、固まってしまったが、


「――あれ! 多分、リリアちゃんの武器みたいなヤツだよ! 伏せて!」


 リュッカの声に反応し、シドニエは滑り込むように伏せた。


 あの銃口の形状を見て脳裏に浮かんだのは、リリアの拳銃。


 装甲オオムカデは、挑発的に大きく口を開けながら、ガトリング砲を乱射する。


「「――魔法障壁(マジック・シールド)!」」


 リュッカの声に反応したのはシドニエだけではない。


 アイシア達も防ぐために防御壁を展開。


 辺りはその防御壁に反射して、壁や装甲オオムカデに向かって跳んでいく。


 壁には埋め込まれるが、装甲オオムカデの鱗は貫通しないようで、更に跳弾する。


「これじゃあ身動きが取れません!」


「リリアさんのと違ってかなり激しいですわね!」


「どうしてあんな武器を!?」


「多分だけど、さっきクルシアから聞いたって言ってました。多分その時に……」


 クルシアかアミダエルか、どちらかの案が採用されてあんな武器ができたのではないかと予測する。


 その弾丸を放ち続ける装甲オオムカデは辺りを移動し、翻弄しながら弾幕でこちらの動きを封殺する。


 そこへ謎の刃が迫り来る。


「――!?」


 魔法障壁すら、すり抜けて迫る音なき刃がアイシアを襲う。


「させない!」


 咄嗟にリュッカがその刃と剣を交えた。


 するとその正体が明らかとなった。


「カ、カマキリ……!?」


 以前、迷宮(ダンジョン)で確認したシャドー・マンティスに近しい姿をしているが、あちらのように完全に真っ黒というわけではなく、枯れ葉のような焦茶色をしたカマキリだった。


 仕留め損なったと判断したのか、現れたであろう地面にズプンと沈むように潜っていった。


「は、速い!?」


「くっ! このままでは(なぶ)り殺しですわね! 作戦を練りつつ、今は距離を!」


 装甲オオムカデと神出鬼没のカマキリの連携はマズイと全員駆け出す。


 勿論、命令を受けた装甲オオムカデとカマキリは追いかけていく。


 今は出遅れているもう一匹とアミダエルも移動している彼らを感知する。


「あのガキぃ……見ておれよ!!」

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