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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
6.5章 地底都市アンバーガーデン 〜ヘレンと愉快な仲間達と極寒の地と地底の神秘
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03 蚊帳の外は嫌なのです!

 

「ルイスちゃん。どうしたの?」


 ルイスのクラスメートが、フグのように頬を膨らませているルイスに問うと、ご機嫌斜めな彼女はふいっとそっぽを向きながらプリプリと文句を垂れる。


「最近、アルビオさんの態度が冷たいと思いまして……」


「「あーあ……」」


 そんな可愛いらしく怒るルイスを撫でながら、納得するクラスメート。


 また子供扱いしてと、さらに機嫌を悪くするルイスを無視しながら思うことは、アルビオにとってはパラディオン・デュオでのパートナーってだけだったんだろうなぁと考えた。


 それもそうだろう。アルビオは勇者の末裔だ。前のような貴族嬢は勿論、パラディオン・デュオの影響もあってか、女性人気は高い彼。


 まあルイスを選ぶことはないだろうと思うクラスメート。


 それにアルビオの性格を考えれば、恋愛に積極的な性格でもないだろう。


「――ていうか、そんな同情は要らないんです! 結局、あの事件の時も寝たきりでしたし、お見舞いには一度しか……」


 テテュラの事件の際には、光属性の影響をもろに受けて身動きは取れず、事件が終わった後もお見舞いを期待していたが、特に何かが起きることもなかった。


「私はあの時限りの都合のいい女だったんですかぁっ!! 蚊帳の外にも程があります!」


 誤解の生みそうな叫びをあげるルイスだが、その容姿でそれを叫ぶと犯罪臭が漂うと思ったクラスメートは、ある提案をする。


「まあみんながみんな上手くいくわけじゃないからね」


「あのシドニエって子もそうでしょ?」


「あのリリアさんの……」


 他人事のように哀れんだ表情をするルイスだが、クラスメートもまた表情には出さないが、哀れんでいる。


「シドニエさんもお可哀想に。リリアさんはあの容姿ですから、モテモテでしょうし……」


「まあね。それに黒炎の魔術師なんて呼び名が浸透したせいか、彼女を囲いたいなんて貴族まで出てきてるって話でしょ?」


「ああ……リリアさんもお可哀想に」


 正直、どうでもいいと投げやりに言うが、ここで本題。


「言っておくけど、ルイスちゃんだってその『お可哀想』だよ」


「な、なんですとぉーっ!!」


「いや、自分で相手にされてないって言ってるじゃない」


「うう……」


 結局、建国祭でも二人っきりになれず、ライバルであるリュッカも一緒だった。


 パラディオン・デュオである程度の関係まで築きたかったルイスだったが、クラスメートからは脈が無いと宣告されたのだ。


「どうすればいいと思います!?」


「だからシドニエ君だよ」


「え?」


「ほら、リリアちゃんもアルビオ君もあの召喚テロ事件の功労者なんでしょ?」


「まあ、噂では……」


「きっとまた殿下に頼み事とかされてるだろうから、リリアちゃんの情報はイコール……」


「アルビオさんの情報!!」


「そう。そしてシドニエ君だってもどかしくしてるはずだよ。何かしら情報を持ってるかもしれない」


「なるほど。外堀から攻めていこうと言うわけですね。ありがとうございます!」


 素直に助言を受け取ったルイスは、善は急げと教室を後にした。


 笑顔で手を振るクラスメートの内心は、どうなるかなぁ? と面白がっていた。


「えっと、彼は確か騎士科の――きゃあっ!?」


 廊下を走っていたルイスは角で激突する。


「ちょっと! ちゃんと前向いて……あれ? ルイスちゃん、だっけ?」


「貴女達は確か……」


 ぶつかってきたのはユニファーニ。側でミルアは大丈夫かと寄り添った。


 ルイスの記憶では彼女らはシドニエの幼馴染。


「お会いしたかったです!」


「は、はい?」


 キラキラした目で両手を握られるユニファーニは、顔を引き()らせた。


「――なるほどね。アルビオ君の情報を得るために、リリアちゃんの情報が欲しいと……」


「はい!」


 ユニファーニは着眼点は悪くないと思うが、実際問題、そこまで情報を得ていないことも知っている。


 何故ならユニファーニ自身もシドニエからそんな話を訊いていたからである。


 殿下は彼女らは巻き込まぬよう、情報を隠しているため、知らないのは当然のことだった。


 だがシドニエ自身、建国祭以降、コンタクトがほとんどない。


 マリエール兄妹とは、コンタクトを取っているようだが、彼らに訊いても情報はないらしい。


「悪いんですけど、シドもそのあたりは知らないらしいの」


「そうなんです!? いい案だと思ったのに……」


「ふふふ。諦めるのはまだ早いよ、お嬢さん」


「ユファ?」

「?」


 ミルアとルイスは、自信に満ち溢れたユニファーニを見て首を傾げる。


「情報の入手が難しいなら、その手のプロに頼めばいいのよ」


「「プロ?」」


 ***


「で、俺達か」


「そう!」


 ルイスが連れられたのはギルド。何でも屋であり、情報通な彼らならば情報を得るのは容易いと考えたのだろう。


 さすがとルイスはユニファーニを尊敬の眼差しを向ける反面、二人の幼馴染は嫌な予感が的中したと思いながら、怯えている。


「てかどうした?」


 顔色の悪いシドニエとミルアにそう尋ねると、いや、何でもとバークに答えはしたが、ユニファーニにすぐに耳打ちする。


「何でギルドなのさ。しかも……」


 バーク達とは面識があるとはいえ、ギルドに踏み入れる機会は少ない。


 しかもよりにもよって今日は厳つい強面の冒険者がゴロゴロ。


「別にいいでしょ? 伝手を頼ったって……」


「それで? 私達に何をさせたいの?」


 ちょっと機嫌の悪いサニラは頬杖をつきながら尋ねる。


「実はね、リリアちゃんとアルビオ君についての情報が欲しいの」


「「……」」


 それを聞いた二人は黙り込む。


 何やら都合が悪いというか、訊かれても困るといった表情。


「悪いんだけど、私達は何も知らないし、詮索もするなってギルドマスターから命令されてるの」


「えっ!? ということはそれだけの……」


「――詮索するなって言われたって言わなかった?」


 とはいえ、サニラは疑問を口にする。


「とはいえ、ギルドマスターも王宮も何考えてるんだか。先日の召喚テロ事件の犯人も有耶無耶に公表したし、市民はある程度、納得するでしょうが、私達からすれば不信に思うわよ」


「召喚テロ……」


 シドニエ達はアルビオと対峙したクルシアのことを思い出す。


 犯人はリリア達が駆けつけた上で起きたことだろうが、あの水色髪の少年クルシアも関係しているのだと思い出す。


 それを思い出したのは二人も同じようで、


「あの化け物みたいな魔力を持った子供でしょ? あっという間に気絶させられたんだから……」


「えっ? 貴方達、犯人を知ってるの?」


「えっと、正確には犯人の一人かな? アルビオさんが対峙していた水色の髪の少年に私達もやられちゃって……」


「「……」」


 水色髪の少年に心当たりがあるサニラとバークはお互いを見合うと、サニラはおもむろに紙とペンを取り出し、


「――ねえ? こんな奴じゃなかった?」


 サニラはクルシアの似顔絵を描いたのだ。


「そうそう! コイツコイツ!」


「そうなんだ……」


 ユニファーニがこのクソガキよと、指差して肯定すると、サニラ達はクルシアに対して不信感を抱く。


「あの男はなんて?」


「とりあえず、僕の噛み癖を笑われました」


「というか、詳しいことは何も。さっきも言ったでしょ? 魔力が凄かったのと、アルビオ君含めてボッコボコにされたのよ」


「確か、リリア達の話だと上級魔法を無詠唱で使えるとか……」


「使ってました。驚きましたよ……」


 一通りクルシアの情報を聞き出したサニラは、クルシアのことを考察する。


「つまりは何? リリア達はあの時の召喚テロ事件の犯人であるクルシア……だったわね」


「確かな」


 二人はナタルの屋敷で、一応名前は知っている。


「あいつの情報を追ってるってことになるかしら?」


「おおっ!」


「召喚テロの事件を掘り下げていけば、リリア達の動向も掴めそうね」


「おい、サニラ。余計な詮索はするなって……」


「わかってるけど、酷いじゃない! 私達にだって頼ってくれたっていいじゃない」


 サニラはフェルサの件もあってか、リリア達に恩義を感じている。


 自分達がヤバイ奴と関わってるなら、少しでも力になりたいと考える。


「だよな。でも……」


「何? まだ引きずってるの?」


「う、うるせぇな!」


 バークの不安はバザガジールとのやり取り。


 自分があの事件から成長できているのか。あのアルビオですら簡単にやられたクルシアをやれるのか、不安がある。


「まあとにかく、リリア達が任されていることが何かわからないことには、行動にも移さないわね」


「じゃあ、調べてくれるんですね!?」


「え、ええ……ていうか、貴女はパラディオン・デュオで一緒だったってだけよね?」


 クルシアの話に頷いていたのは、ルイス以外。


 サニラは特訓中、ルイスがアルビオに好意を抱いていたのは知っているが、先程の話から関わるのが危険だと承知したはず。


 だがルイスの行動理念に揺らぎはないようで、


「恋する乙女は無敵なんです!」


「……は?」


 ドヤっていきなり語り始める。


「単刀直入に言いますと、アルビオさんのお力になり、彼のハートを射止めたいのです!」


「あーあ……なるほど」


 するとサニラの視線はとりあえずルイスの胸の方へ。


 その視線を感じ取ったルイスは、不思議そうな顔をする。


 サニラはその後、ジト目でルイスのあどけない表情を見た後、笑顔で答えた。


「無理じゃない?」


「無理じゃないです!! 判断の仕方がおかしくないですか!?」


「だって彼、あんたみたいな幼女趣味じゃないでしょ?」


「――この人は気にしてることをズバッと!?」


 確かにルイスは女性として、魅力的な身体付きはしていない。


 するとサニラは思ったことをズバズバと言っていく。


「パラディオン・デュオの時に仲良くやってたのは、妹でもできた感じじゃなかったの?」


「――妹っ!?」


「横に並んで歩いても、周りからはカップルには見られないでしょ?」


「――ガハッ!?」


「私達、今まで黙ってたのに、そんなこと言っちゃ……」


「現実を教えてあげる優しさって必要よ」


「――辛い現実をありがとうっ!!」


 しかし、ルイスはめげないとばかりに宣言する。


「確かに私は幼女体型の童顔美少女でしょうが……」


「自分で美少女はどうなのよ」


「――貴女のツッコミはいちいち切れ味がいいですね!? ……こほん。女の子にとって、恋愛は戦争です! 障害があることなんて当然! アルビオさんなんて特にそうです!」


 周りからはうじゃうじゃと詰め寄られ、最大のライバル――リュッカもいるのだ。


 足踏みなどできない。


「周りの有象無象を取り払うには、行動あるのみなのです!」


「お、おお〜」


 思わずバークとシドニエは拍手をするが、他人事ではないとシドニエを指差す。


「シドニエさん! 拍手などしている場合ですか!? リリアさんだって同じでしょ?」


「えっ!?」


「リリアさんに至っては私と同じ女の子。いくら魔人を倒し、テロ事件を止める勇敢な彼女でも、死線をくぐり抜けたイケメン男子でもいてみなさい!」


 ここからはシドニエがこう妄想してるのだと思って下さい。


「リリアさんがピンチに陥った時、颯爽(さっそう)と現れるイケメン男子。そんな彼の勇ましさに心が揺れるの……。今までにない感情に戸惑うリリアさん……」


 シドニエを(あお)るように、わちゃわちゃと感情を込めて演技する。


「この胸の感じは何? この締め付けるような、でもこのどうしようもなく彼のことばかり考えてしまうのは何故? これは……恋!?」


 サニラは馬鹿馬鹿しそうな表情を浮かべ、バークは何を言ってるのかわからないと言った表情。


「そして――彼女が幸せそうな顔で、彼と腕を組み歩いているの……どんな気持ちですか!?」


「――凄く嫌な気持ちになりましたっ!!」


「その隣を獲得したくば、行動あるのみなのです!」


「そ、そうですねっ!」


 ユニファーニとミルアは(そその)かされるシドニエを見てこう思った。


(幼馴染がおかしくされている……)


 シドニエが焦る気持ちは理解できる。


 リリアはとっても魅力的であり、才能にも溢れた存在。ほっとかれるものではないだろう。


 実際、殿下を始め、色んな人達が黒炎の魔術師と称え、注目を集めているのだから当然だろう。


 だがそれを見越してか、あり得ないと吐き捨てる女性が一人。


「そもそもリリアはそんなに乙女じゃないでしょ……」


「そんなことはありません! どんな女の子は誰だって恋する乙女になるものです。貴女だってそうでしょ?」


 すると少し照れ臭そうに(しか)めっ面をして、そっぽを向いた。


 その表情は上手くいってないような悔しそうな表情。


 するとルイスは、両腰に手を当てて、


「ほーらぁっ!」


「べ、別に私は関係ないでしょ!?」


 同情できるでしょと指摘する。


 するとこの天然デリカシーゼロ男は尋ねる。


「お前に好きな奴なんていたのか?」


 特にサニラにそんな人がいることに何も感じていないように尋ねるので、


「――ふんっ!!」


「――いっだあっ!?」


 いつもの足踏み攻撃。


「何で踏むんだ!? 聞いただけだろ!?」


「デリカシーが無いのよ、あんたは!? 普通そんなこと女の子に聞く?」


「幼馴染なんだから別にいいだろ? もしかしたら力に――」


「ふん!!」


「――あだぁっ!? お前なぁ!! 今のはおかしいだろ!?」


「おかしくないわよ! この馬鹿ぁっ!!」


 全く気付く気配すらないバークに激怒。


 シドニエは特訓していた際の光景を目の前にし、あわあわとしている最中、ルイスはユニファーニ達に耳打ちして尋ねる。


「このお二人はまだお付き合いしてないのですね?」


「……見てわかるでしょ? ツンデレと鈍感の恋愛は中々成立するには難しいの」


 (はた)から見れば痴話喧嘩のように見られる二人。


 このギルドではこの二人のこんな喧嘩は日常茶飯事で、他の冒険者はやってると微笑ましく笑ったり、揶揄(からか)う野次が良く飛ぶ。


 だがそこは空気を読まないルイス。


「貴女がそんな態度だから、彼はわからないのですよ」


「な、何の話よ」


「好きなの――むぐうっ!?」


「あんたはストレート過ぎでしょ!?」


「人には人のペースがあるんです!」


 余計なことをさらりと言おうとしたので、全力で止めに入った二人。


 すると察したのか、シドニエが話を戻す。


「と、とにかくお願いです! 僕、少しでもリリアさんの力になりたいです」


「そ、そうね。わかったわ。一応、ギルマス命令が入ってるから限界があるだろうけど――」


「ワシがどうかしたか?」


 ビックーンっとバークとサニラは背筋を伸ばして固まる。


 そろっと振り向くと、ギルドマスターのハセンの姿があり、ハセンは二人の頭を鷲掴む。


「ギルドマスター、早いお戻りでしたね?」


「まあな。それより相変わらずだな、オメェさんらは……」


 二人の痴話喧嘩はギルドマスターですら知っている。


「ていうか、何でギルマスまで俺とコイツをくっつけようとするんです?」


「まあ傍観させてもらってる身としてはなぁ」


 サニラは頬を赤らめてまんざらでもなさそうに、照れるもバークの反応は、サニラの望むものではなかった。


「いやいやこんな暴力女とくっつかされても困――」


 サニラはめちゃくちゃ機嫌が悪そうにオーラを垂れ流す。


「本当に相変わらずだな。それでワシが何だって?」


「え、えっとー……」


「リリアさんやアルビオさんの情報を集めに来たのです」


「ちょっとあんたっ!? あ……」


 マズイことを喋られたと、冷や汗が流れるバークとサニラはハセンを見る。


「そのことに関しちゃあ、詮索は無しだって言ったよな?」


「は、はい」


「だったら断ってもらえ。いいな?」


 ハセンの登場に話が止まってしまいそうな雰囲気を裂くように、ルイスが説得する。


「それでは困ります! 私達はどうしても彼らの情報が欲しいのです!」


「あのなぁ……」


 言い返そうとしたハセンは良く見るとと、シドニエ達を見た。


 部下の報告によれば、先の事件でクルシアと対峙していた三人だと気付く。


 すると気が変わったのか、


「……わかった。ワシの部屋で話をしよう。ついてきな」


 のしのしと階段を上がっていくハセンの後ろを嬉しそうについていくルイス。


 その後をシドニエ達は恐る恐るついていく。


 サニラ達もついて行こうとしたが、


「てめぇらはそこにいな」


「えっ? でも……」


「ついてこいって言ったのは、学生のガキどもだけだ。おめぇさんらじゃねぇ。わかったか?」


 ハセンは圧のこもった視線を二人に浴びせると、サニラとバークはわかりましたとその場に固まった。

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