29 魔法について学ぼう 実技編その三
「この勢いでどんどん試すか」
おもむろに魔術書を開き、初級魔法を確認する。
「予習じゃあ、自分の属性以外は発動が出来ないらしいが……」
この世界での魔法原則を知るため、リリアが使えるであろう火と闇以外を試すことにする。
水の初級呪文を見つけた。
「アクアシュートか。後は……おっ、アイスシュートってのもある。へぇ〜、氷も水属性の魔法として扱うのか。いや、まあ当然か」
ゲームでも統一されていることが多いためか、あっさり納得。
「アクアシュートは水鉄砲みたいな感じか? それともファイアボールみたいに……? いやいや、それならアクアボールになるよな?」
イメージが大切な為、眉間にしわを寄せ、胡座をかいて座り、唸り始める。
「ん〜〜、分からん! アイスシュートの方がイメージしやすいかも……」
タンっと立ち上がると再び杖を岩へと向けた。
氷を岩へぶつけるイメージを連想するも、先程のような魔力が集まる感覚がない。
先程とは違う感覚を覚える。
今度は強くイメージすることを念頭に、唸りながら岩を睨みつける。
「んん〜〜っ! 氷が出るイメージ……氷が岩目掛けて飛んでいくイメージっ!!」
残念ながら周りの魔力はちっとも反応しない。勿論、体内魔力もである。
さっきの魔法を使おうとした際の魔力が寄ってくる感覚が本当に無い。
出来ないとここまで現実突きつけられると、少しばかり気を落とした表情になる。
「……仕方ないのか。この世界ではそういうルールらしいから、受け入れるしかないかな」
気を取り直そうと今度は闇の初級魔法を探す。
「おっ、あったな。えっと……ダークスナッチ? 何だこれ?」
アイスシュートより、よっぽどイメージしづらい呪文が出てきたと、苦難の表情を浮かべる。
「さっきのアクアシュートより分からんぞ。……っ、どうすっかな?」
舌打ちをして頭をかいてページを見ているとその呪文の上に詠唱文字だろうか、記されていた。
ただ、もちろん、日本語ではない。その部分を指でなぞる。
「……これ、文字呪文ってやつか? 読めん」
だが、イメージが湧かない限り下手な事は出来ない。何が起こるか検討もつかないからだ。おそらく無詠唱で発動出来るが――、
「そうか! 別に読めなくてもいいのか。確か……」
ふと思い出したように家で読んでいた魔法の発動についての本を探し、文字呪文について調べ始めた。
「……あった! えっと――文字呪文は特に決まりはないが魔力を込められるもしくは魔力そのもので文字を書き、発動を行うもの……」
ならばと杖で魔力を込めて空気をなぞる。すると、ぽうっと淡く白い光が杖先に出てきた。
「おおー。じゃあこのまま、えっと……」
わき見しながらその文字っぽく書いていく。するとその文字達が少しずつ書いていった方から紫色へと変わっていく。
「だ、大丈夫かこれ?」
文字呪文に疑問を抱きながらも空中に書いていく。
これもちゃんと試さないとな。後々必要になるかも知れないし、それに魔法自体が分からないなら……そっか! そのためのものか!
魔法自体が分からないから書いて発動、一度発動出来れば思い出せばいいだけだと理解する。
文字を間違えないようにゆっくりと書いていく。完成した文字がゆらゆらと浮かんでいる。なんとも不思議な光景だ。
「これで魔法を唱えるだけ……ダークスナッチ!」
ボンッと大きな音がなる。
「――きゃあ!?」
岩の方で黒い煙のようなものが発生。しばらくすると薄っすら消えていく。
「な、なるほど、攻撃魔法じゃなくて牽制とか視界を少し奪ったりする魔法か……」
ふむ、使い方によっては便利かも。




