24 迫る危機?
「ところで何か言いかけてなかった?」
「ああ! そうそう、明後日の事なんだけど――」
その後、母親は明後日の予定を説明してくれた。
なんでも約六日間かけての長旅になるらしい。王都までって遠いなぁなんて思いながら詳しい詳細を訊いていた。
「――て感じよ。わかった?」
「うん、わかった。ありがとう」
「じゃあリリア。後はお風呂に入ってもう休みなさい。まあもう少しくらいなら……いいけど♩」
部屋をもう一度見てウインクして悪戯げに言った。
「いやっ! しないからっ! 今から入る――」
ファッションショーは即否定したが、ふとある事に気付いた。
お風呂…………お風呂だとぉっ!?
――皆さんご存知でしょうが一応説明します。
お風呂とは特定の湯船にお湯を入れて身体の老廃物や疲れを取り、身体を清潔に保つことを目的としたものである。入る条件として基本は全裸で入るものである。
俺はその場で固まった。だが、脳内では絶賛葛藤中である。
待て待て待て待て待て待てっ! 俺は男だが現在進行形で女の子だ。しかもただの女の子じゃない、美少女だっ! 銀髪碧眼、華奢な細い身体に白いきめ細やかな肌。
「……」
「どうしたのよ、リリア?」
頰を赤くしながら固まる俺を見て疑問を投げかける。
「あ、うん。すぐ、その……入るよ」
「そ。後がつかえるから早くね」
そう言うと母親は扉を閉めて出ていった。そして足音で遠ざかるのを確認すると現状を確認するべく独り言を早口で呟き始める。
「お風呂は入らなくちゃいけないよね。健康上仕方ないよね」
一人、言い訳をしながらも期待せざるを得ない。先程から下着姿は確認している訳だし。
「いやっ、俺だって男の子だし、興味もあるよ。ネットサーフィンしてそういう画像だって探したことくらいあるよそりゃあ……」
どんどん早口になっていく。俺の中には期待もあるが、現実の裸にはやはり免疫力があまりないため、ひどく動揺もしている。
「だけどだけどさぁ! 生の美少女の裸はハードルが高い!! いや、普通の女の子でも多少動揺はするだろうけどさ。こういう時プレイボーイどもならどうせ……女の裸くらいで何動揺してんの? 童貞乙、とか言うんだろっ!?」
勝手に想像した偏見にツッコむ。
「ええっ!! どうせ童貞ですよ! 女の子との面識なんて殆どないから免疫もほぼゼロのチキン野郎ですよ!」
一人でツッコミ、一人でキレる。男として情けない限りのセリフがダダ漏れになりながら。
「だがどうだ? 美少女に転移した俺は彼女の裸を見放題なんだぞ!? どうだ!」
誰に向かってでもなく勝ち誇るが、最低発言。
だがすぐに我に帰る。
「でも俺、今、女だからあんまり意味ないかも……ていうか他の男になんて――」
ネットに転がるそういうシーンがふと浮かぶと背筋からこれまで感じた事の無い寒気がよぎる。
「やめやめやめやめっ! これは考えないでおこう。……とにかく」
こほんと咳き込み、妄想を一掃すると、
「…………………………どうしよ」
長い沈黙から結論に戻り、振り出しに戻る。
だが少し考えを吐き出したせいか、少し落ち着いたので冷静に考えてみる。
(正直入りたい。日本人として、男として……)
日本人としては言わずもがな、清潔感を重んじる特有の日本人文化。男の子としては純粋かつ素直な気持ち。
欲望に忠実って意味でね。
「いや、俺だって男だもん! 下心だって邪な事だっていやらしい事だって考えるよ! こんな状況だし。でも――」
ちらっと自分の身体を見てみる。
「なんか虚しいよ……」
普通の男なら彼女を、なんて考えるんだろうけど、俺の今のこの状況は……、
「はぁ……」
残念そうな表情でため息を漏らすと、ふと更に残念なことに気がつく。
アレ? これってもしかして生殺しのレベルが最上級クラスじゃないかな?




