23 やっちゃった
一人ファッションショーは続く。完全に我を忘れて楽しんでいる。
自分が着ているとはいえ、自分じゃない人間の美少女に可愛い服を着せるのは楽しいっ! なるほど彼氏が彼女に服をプレゼントする心境ってこんな感じか?
彼女いない歴イコール年齢の俺にはその心は分からずにいたが、まさかこんな形で知ることになろうとは。
だがこの荒療治のおかげか、少しだが耐性がついてきたように感じる。
「次は、これとこれの組み合わせで――」
夢中になっているうちに、いつの間にか部屋中は服だらけである。
最初、この部屋に入ったときは机の上のみとはいえ、本まみれ。
だが、今は服まみれ。使う人が違えばここまで変わるものなのだ。
「おおっ!! これもやっぱり似合うなぁ」
鏡に映るリリアは楽しそうな顔をしている。気分が乗っているのか、クルクルと身体を動かし、スカートをひらつかせる。
「ああ……可愛――」
――カチャ。
「リリア、明後日の事なんだけ……ど」
静かに開いた扉の音でビタリと動きが止まり、目が合い固まる母と娘。
リリアもとい俺は青ざめた表情をし、冷や汗も出てきた。
一方で母はこの部屋の様子を見て悟ったのか、次第に嬉しそうな表情に変わっていく。
この状況に動揺した俺は、言い訳を始める。
「いや、あのおかあ……じゃなくってママ、あの、これは……」
しまったぁーー!! こんなところ見られたくなかったぁーー!! 一人ファッションショーとか見られたくないよ!! 女の子ならともかく男はそんなのただのナルシストじゃん!!
彼に注意、貴方は今絶賛女の子です。問題無いですよ。
ひどく動揺し、言い訳もおぼつかずにいるところにさらに追い討ちが掛かる。
「リリアぁ!! やっっとアンタはオシャレに目覚めてくれたんだね!!」
感極まってか、ぎゅうっと抱きしめられた。
ダイレクトに胸が顔を埋める。母性という名の暴力とはこういうことなのだろうか。物理的な意味で。
(く、苦しい……む、胸がぁ……)
必死に母親を突き放そうとすると、抵抗している行動に気付いたのか、パッと離してくれた。
「いやぁ、母さん嬉しいよ。せっかくこんなに可愛い娘ができたのに、貴女、全然用意した可愛い服着てくれなかったじゃない」
やっぱりそうだったのね。
オシャレしない理由はイジメも関係したのだろうが、元々彼女は根暗そうだしね、オシャレなんて考えなかったんだろうな。
「それにやっぱり娘と洋服選びとかしたいじゃない? 明日までは居るんだし、王都行きの準備がてら買い物に――」
「行かない! 行かない! 明日はやる事があるからダメ!!」
俺はハッとなり、母親の提案を速攻拒否。すると残念そうな表情をされ、少し罪悪感がした。
「ほ、ほら、王都の学校で長い休暇でもあれば帰ってくるからさ。その時にでもどう?」
俺は彼女自身の事はあまり知らないが、母親の反応を見るあたり、中々の親不孝者ではなかったのではないだろうか。実際、自殺未遂を繰り返していたらしいし。
「まさか……そんなこと言ってくれるなんて。ぐすっ……ホントにどうしたのよぉ〜〜」
嬉しさのあまりか、特に疑うこともなく目に涙を浮かべながら今度は優しく抱きしめられた。
「ははは……」
ホントにどうしたんでしょうね〜。ははは……はぁ。
こんな状況にどうしようもない鬼塚なのでした。




