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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
4章 ラバ 〜死と業の宝玉と黄金の果実を求めし狂人
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27 聞き込み開始

 

「それじゃあ、私はグラビイス達と合流してくる。サニラ達はフェルサと一緒に調査を進めてくれ」


「はい」

「了解〜」


 俺達はミューラントのお屋敷の玄関前で、調査方針を固める。


 ジードはグラビイスと合流し、魔物の生息域を調査。


 バーク、サニラ、フェルサは町の中を調査する。フェルサにはメトリーの匂いも記憶した為、手掛かりに期待したいところだが、ここのギルドにも獣人はいた為、難しいとは考えられる。


 カメレオンパウダーみたいな件もあったし。


「で、私達は……?」


「そうだな……聞き込みをお願いしてもいいかな? ギルドの者だと言えば、信用してくれるだろう」


「わかりましたわ。メトリーの為にも必ず……」


 いつにも増してやる気を出すナタルだが、


「委員長は留守番しててよ」


「――なっ!?」


 何を言い出すのと表情が訴えかけてくる。


 今の彼女は冷静な判断も難しいのではないかと思う。


「委員長はさ、町長の娘でしょ? 下手に被害者の家族に刺激を与えるのはマズイよ」


「そ、それは……」


「心配な気持ちは、ナタルさんやお父さんを見ればわかります。ここは任せてもらえませんか?」


 俺とリュッカの意見を聞いたナタルは、悔しそうに渋々無言で頷いた。


「留守番してる間にさ、お父さんに向こうでの話でもしてあげよ。きっと喜ぶよ!」


 確かにあのお父さんの状態を見るに、癒しは必要だろう。娘の頑張っているところを知れれば、活力になるだろう。


 ナイスアイデアだよ、アイシア。


「……そうね、わかったわ。お願い……するわね」


「よし、じゃあ聞き込み開始――」


「あ、待って」


「だあーっ?」


 張り切っているところを遮ると、俺は別の奴にも調査をお願いする。


「――召喚(サモン)! インフェル!」


 魔法陣が展開され、その中から爆発と共に召喚。


 召喚しといてなんだが、相変わらず派手だ。


「お呼びですか? 主人(マスター)


 呼び出されたインフェルは周りを見ると、やるせない表情を浮かべる。


「ごめんね、不満だよね?」


「だと思うなら、召喚しないで頂きたい」


 初めてインフェルノ・デーモンを見た一同は勿論、驚く。


「すげぇー、上位のデーモンなんて初めて見たぜ」


「そうだな、そうお目にかけるものじゃない」


「ちょっと! リリア! こんなの急に呼ばないでよ! びっくりするじゃない!?」


 驚き各々意見を言っているが、それが耳障りなのか害虫でも見るかのように見下す。


「黙れ、人間共。灰になりたいか?」


 その一言でシンとなる。


「あのさ、ちょっとは人間と仲良くしない?」


「それは無理な話ですね。他の魔物ならともかく、我は悪魔です。それと今はこうして主従の関係ではありますが、本来魔物は人間を餌としています。この意味、わかりますよね?」


 要するには分かり合えることは難しいと言いたいのだろうか。


「そうかもしれないけど、インフェルは情があるみたいだから、分かり合えるんじゃないの?」


「だとしても主人(マスター)だけです。まあ、今主人(マスター)との間にある信頼は、あの約束だけの不安定なものですが……」


 アルビオを殺す約束ね。


「はは、信頼を得られるよう、努力します」


「それで用件は? この町を灰にすればよいのですか?」


「――そんな訳ないでしょ!!」


 余程暴れたいのか、物騒なことしか言わない。


 まあ今まで召喚しても戦わせることはなかったし、上位の悪魔としては不本意な命令が続いているのだ、ストレスもあるだろう。


 とはいえ、今から出す命令もストレスになる可能性があるが、


「先ず、この町に何か変な違和感とか、変わった感じとかない? 例えばここだけ魔力の流れが変とか何とか……」


「いえ、特には」


 俺の質問にさらりと答えた。


 まあ事件が起きたばかりならともかく、今はないかと思う。


 だが、事件が発覚してから町長達は魔力の異変がないかも調べたはずだ。


 それなのに子供達が見つかっていないということは、本当に魔力の痕跡はなかったということになる。


「まさか、それだけではないですよね……」


 ちょっと声が苛ついてるように聞こえた。


「そんな訳ないでしょ。もう一つ、この町の周りを調べてきて欲しいの。異変があったら知らせて」


 一応周りはジード達、ギルドの冒険者が調べに行ってはいるが、空から探せるインフェルを使わない手はない。


 だが、そのインフェルは不服そうな表情を変えない。


「え、えっと、ほら空を自由に飛んで、景色を楽しめば豊かな気持ちに――」


「なりません」


「うぐ……」


 このやり取りを見て、サニラはリュッカに耳打ちする。


「ちょっと、大丈夫なの? この関係……」


「た、多分……」


 リュッカも大丈夫とは明言できず、苦笑い。


 インフェルは面倒臭そうに、大きなため息をつくと、バッと翼を大きく広げて、飛び立とうとする。


「あ、待って」


「まだ何か?」


「ほら、貴方が空飛んでたら、パニックになるから、姿消せる?」


「はあ……出来ますよ。悪魔ですから」


 再びため息をつくと、インフェルの身体が透けていき、景色と同化し、姿が消えた。


「では……」


 姿が消えたところから声がしたかと思うと、翼を羽ばたかせた風が巻き起こり、スカートが揺らめく。


「はあ、行ったわね」


「ごめんね、迷惑かけて」


 インフェルを見送ったジード達は、自分のやるべき事へと向かった。


「さて、私達も行きますか。どこに聞き込みに行こうか」


「そうだね……」


 それを聞いたレイゼンは聞き込んで情報が出そうなところを教える。


「この辺りの居住区を回られるのが良いかと。向こうの港区の居住区では被害者は居ませんでしたから、情報を得るにはこちらかと……」


「えっ……?」


 俺はてっきりこの町の子供達がランダムで(さら)われたと思ったが、こちらの居住区域のみと聞いて驚いた。


「向こうの人達は大丈夫だったんだ」


「ふーん……」


 俺達はレイゼンに言われた通り、この辺りの家々を回ってみることにする――。


 町の雰囲気は港町ということもあって、明るい白色の外壁の家が多い。潮の香りも心地よく鼻をくすぐる。


 これで晴れて、こんな事態でなければ完璧だったのだが、誠に残念である。


「――ありがとうございました……ふぅ」


 アイシアは一軒目の聞き込みを終えて一息。


 一軒目からいきなり被害者宅の玄関戸を叩いたらしく、聞き辛かった様子だ。


 一方で俺は赤ん坊を抱き抱える、若い奥様に話を聞いている。


「ごめんなさいね、特に何もなかったと思うわ」


「本当にですか? 何か些細なことでもいいんです、何かいつもと違うことがありませんでしたか?」


「そう言われてもねぇ……」


 彼女は困ったような表情で考えてくれている。


 はっきり言って、魔法でもサスペンスもののトリックの痕跡もないでは、犯人を見つけることも子供達を助け出すこともできない。


 どこかに手掛かりはあるはずと、無理を承知でしつこく聞いたのだ。


 すると彼女は抱いている赤ん坊を見て、何か思い付いたようだが、さっきより眉を歪める。


「うーん、確かにあったけど……」


「本当ですか?」


「お役に立つかわからないわよ」


「何でもいいんです。お願いします」


 取りつく島が欲しい俺は、真剣な眼差しを送る。


 彼女は一息つく。


「わかったわ。えっとね、この子なんだけど――」


 赤ん坊を抱き直す。


「――ほら、赤ちゃんって夜起きちゃったり、夜泣きするって言うじゃない? だからね、私もこの子を産んだ時、大変だろうけど頑張ろうって思ってたんだけど……」


 まあ子供を育てるのは大変だろう。正直、その苦労を元男子高校生がわかるわけもない。


 実感がないからねぇ。


「この子、その辺りはなかったのよ。周りのママさんも珍しいわねって。ただ起きてる時はやんちゃなんだけど……」


 子育ての苦労話を楽しげに話す辺り、充実した生活を送っているように感じる。


 何だかこちらまで嬉しい気持ちになる。


「それでね、その事件が発覚したって言われた前の夜にそういえばって思い出したの」


「何をですか?」


「起きたのよ、この子」


「は? はぁ……」


「いやね、物音がしたと思って起きたら、寝ていたはずのこの子がいなくなっててね、慌てて探しに行こうとしたら、廊下にいたのよ。肝を冷やしたわ、あの時は……」


 それって単なるたまたま夜起きただけじゃないかと思った。


「えっと……」


 俺のちょっと困った表情を見た彼女は、


「ほらね、お役に立ちそうではないでしょ? たまたま夜起きちゃっただけの話よ。きっとお腹が空いたのよね」


 そう言って、再び赤ん坊を抱き直す。


「す、すみません、聞いておいて……」


「ううん、いいのよ。こっちこそ話を聞いてくれてありがとう。あんな事件があってから、ご近所でこんな話も出来なくて……」


 子供が攫われた被害者家族がどこで聞いてるかわからないのだ、不用意に傷付けることになるだろう。


 そんな話も気軽に出来なくなっているのは、何とも悲しいことだ。


「いえ、こちらこそお話、ありがとうございました」


 俺はお辞儀をしてその彼女の家を後にした。


「どうだった?」


 アイシアが後ろで待ってくれていたよう。


「うーん、何も……」


 特に変わった情報がないと確認すると、次の聞き込みに向かうと同時にリュッカを探しに行く。


 すると、


「――うおっ!?」

「――きゃっ!?」


 町角を曲がった時、俺達と同じ歳くらいの男の子がぶつかってきた。


 その際に彼が持っている買い物袋から中身が飛び出した。


「ご、ごめん」


「ううん、大丈夫」


 俺達はその転がった中身を拾ってあげることに。


 そこで俺は見覚えのない小瓶を手にして、ちょっと不思議そうな顔をするが、すぐに彼に手渡す。


「はい」


「あ、ありがと……う」


 彼は頬を赤らめて、照れた表情を見せると、すぐに隠すように逸らす。


 初見のこの反応にも慣れてきた。


 全て拾い終えると、軽く頭を下げて彼は足早に去っていった。


「ねえ、アイシア」


「ん?」


「私がさっき手に取ってた小瓶、ポーションじゃないよね?」


 この世界の魔法薬をいれた小瓶は透明だ。なので中身が何なのか大体わかるようになっている。


 ポーションは透明度の少ない緑色。マジックポーションはこれまた透明度の少ない青色。後は解毒薬や状態の回復薬など様々あるが、エナジードリンクみたいな色の薬は初めて見た。


「あれは酔い止めだよ」


「酔い止め?」


「そ、お父さんは馬車酔いするから、よく買いにいったな。まあお世話にもなったけど……」


「え?」


 不思議そうな顔をすると、不思議そうな顔で返された。


「え? リリィだって魔力酔いした時、飲んだでしょ?」


「魔力酔い?」


「リリィほど魔力が強かったら、ちっちゃい頃、魔力酔いも酷かったんじゃない?」


 マズイ。初めて聞くやつで、この世界では常識的な話のやつだ。


 久しぶりだ、これ。


 驚いた表情でそう言うアイシアに、相槌を打つようになあなあな返事をする。


「う、うん、まあね。でも酷かったせいか、よく覚えてないや」


 必殺! ど忘れの術。


 後で当たり障りがない程度に、俺が聞いても特に疑われなさそうなバーク辺りにでも聞いておこう。


 女の子の質問ということで、追求もしないだろう。


 ――という訳で、この聞き込みの後に聞いた話だが、子供の頃は魔力に敏感で、たまに魔力に当てられて酔いを起こすのだという。


 大体、十歳前後くらいまでだそう。


 とはいえ、その年齢までに二、三回くらいだそう。内包している魔力が多かったり、濃い子供はそれ以上の回数だったり、一回の酔いが酷いとかで酔い止めを飲むのだという。


 ――とアイシアと話をしていると、玄関前で苦笑いを浮かべながら立っているリュッカを見かけた。


 言ってみると、そこには小太りな奥様がペラペラと喋りまくっている。


「それでね――」


「はは……」


「えっと、リュッカ?」


「あ、リリアちゃん」


「あら、お友達?」


「あ、はい」


「大変よねぇ、ウチの子は大丈夫だったけど、子供を攫うだなんて、酷い話よねぇ! 大体、この町の町長さんも――」


 色々言いたいことがあるようで、エンジンがかかったように喋り始める。


 それをさっきから何を喋っているのか様子を見に来た、十歳くらいの男の子が現れた。


「母さん! 困ってるだろ?」


 息子に注意された母親はしまったと反応した。


「ごめんなさいね。ついつい……」


 俺は驚いた。彼がいることに。


「あの!」


「何かしら?」


「彼は無事だったんですか?」


「え、ええ……」


 というのも、港区の居住区には被害者はいないと聞いていたが、こちらの一帯の子供達は攫われていたと聞いている。


 彼はどう見ても攫われた子達の年齢だ。いたことに驚く。


 これは手掛かりになると思った俺は、目線を彼に合わせて話を聞くことに。


「ねぇ、君……」


「な、何?」


 俺を見て赤面されるのにも慣れてきたので、そこは無視。


「貴方の周りの子達はいなくなっちゃったんだよね?」


「うん……。僕以外の近所の子供達は全員みたい。だから外にも出づらくて……」


「そっか、ごめんね」


 寂しそうにそう話す彼に、酷な質問をしたと謝る。


「ねえ? 事件があった日の夜、変わったこととかなかったかな?」


 同じ歳くらいの子達はいなくなったというのに、彼は無事なのには理由があるはずと、聞いて迫る。


 彼は辿々しくわからないよと言うが、彼の母親がある事を思い出す。


「あっ! あんたあの時、骨折してたじゃない!?」


「あっ……」


「骨折?」


「そうなのよぉ〜、この子、俺だってやれるんだぁとか言って、魔物の生息域に友達と行ったらしいのよ」


「か、母さん!!」


 息子の止める声も聞かず、話を続ける母親。


 わかるよ、少年。男だったら、こんな可愛い女の子の前で恥になるような話はされたくないよねぇ。


 元男だからわかるよぉ。母親って大体そういう息子のプライドってわかんないから。


「そしたら怪我して帰って来たのよ。この子ったら足まで骨折してね」


「あの治癒魔法で回復とかは……」


「反省させる為に敢えてしなかったわ」


 どこにも病院はあるこの国。治癒魔法術師もいただろうに。


 まあ自業自得だがね。


「でも、変わったことなんてなかったよ。夜痛みで起きたくらいで……」


「そっか、ありがとう」


「ごめんなさいね、役に立たなくて……」


 そう謝られた親子に、お話ありがとうと別れを告げた。


 ――結局この後も目ぼしい情報はなく、屋敷へと戻ったのだった。

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