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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
4章 ラバ 〜死と業の宝玉と黄金の果実を求めし狂人
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22 失踪事件

 

「……失踪事件ね」


 リュッカの事もあったせいか、ちょっと他人事のようには思えなかった。


 俺はデートらしくないと散々ユーカに説教された後、俺とアイシアの部屋で女子会中。


 まあ女子寮には女子しかいないんで、いつでもどこでも女子会な気はするが、というか女子会でする話でもないような話題が出ている。


「うん。殿下とかギルドマスターとか色んな人が解決に乗り出してるみたいだよ」


 魔物騒動が落ち着きを取り戻したかと思ったら、これだ。どこの世もそうだが、何かと問題は絶えない。


 アイシアはポチを抱きかかえて、両手を持って遊んでいる。


「ねえ、シア……苦しくない?」


「重いけど、抱っこしてって甘えてくるし……」


「甘えさせちゃダメって言われなかった?」


「程々にしてるよぉ〜、ねえ?」


「ガウッ!」


 ちょっと呆れたため息を軽く漏らすと話を戻す。


「まだ何もわかってないの?」


「詳しいことは聞かなかったから。でも殿下が解決に乗り出しているなら、大丈夫じゃないかな?」


 確かに、リュッカを救い出す為の頭の回転の良さは良かった。


 頼もしい男性というのは、あのような貫禄と度量を兼ね備える人間のことを言うのだろう。


「早く解決するといいね」


「そうだね……」


 俺は窓に視線を送って、空に浮かぶ月を黄昏て見た。


 リュッカが居なくなった時、後悔したことを覚えている。


 大切な人が側から居なくなることが、どれだけ怖いことか知っているから。


 リュッカに限った話ではない。俺の場合は両親もそうだ。


 時々思う……天然だったり、趣味が渋くても、俺を産んで育ててくれた両親だ。元気なのかなとホームシックになることがある。


 その気持ちは落ち着いてはきたけど、失踪事件なんて聞いたら、その失踪した子供の親はどれだけ心配しているのだろうと考えたら、俺の親は心配しているのだろうかと考えてしまう。


 出来る事があれば助けてあげたいところだが、今ある情報だけじゃ、手も差し伸べてあげられない。


 歯痒い思いとはこういう事だろうか。


 ***


 翌朝、ハーメルト城内は騒がしい朝を迎える。


 だが、いい意味ではなかった。


 大きなこの城内を騎士や王宮魔術師、使用人がバタバタと動き回っている。


「一体、朝から何事だ」


 朝支度を終えたハイドラスは廊下にいた使用人に尋ねる。


 そのメイド服を装った使用人はただならぬ表情を浮かべながらも、丁寧にお辞儀をしてみせる。


「殿下、おはよう御座います」


「挨拶はいい、何事だと訊いている」


 ハイドラスは向こう側の廊下をバタバタと走り去る騎士達を見る。


 緊急を要することなら、自分にも連絡が来るはずだろうにと思っての質問だ。


 尋ねられた使用人は、目を泳がせながらも報告すべきがするまいか悩んでいるよう。


 その明らかにおかしな様子の使用人に、ハイドラスは真剣な表情で尋ねる。


「私に言えないようなことが起きているのだな」


「そ、それは……」


 図星を突かれた使用人は驚く。


 ハイドラスは王子という立場があるにも関わらず、挙動不審な態度を取り、言い淀むとはそう言うことだろうと判断できる。


「その内わかることだ、話せ」


 殿下の仰る通りだと、使用人は深く頭を下げて詫びるように話す。


「申し訳ありません、殿下!! それが……姫殿下のお姿がなく、(くま)なく探したのですが見つからないのです」


「何……!?」


 ハイドラスはメルティアナとの兄妹仲は良く、小さい頃からアルビオと共に遊ぶこともあった。


 昔はよく姿を隠して使用人を困らせるような事もあった。


 だが英才教育も本格化して、本人も王族としての自覚してきた今日この頃、そのような子供じみた行動はしなくなってきたメルティアナ。


 ませてきたメルティアナが、今更使用人をこのような悪戯で困らせるような事はないだろう。


 ハイドラスの頭に嫌な予感が過る。


「……このことを父上は?」


「陛下にはお伝えして御座います」


「何故私には言わなかったのだ?」


「陛下のご命令でして、殿下は例の件について調査を進めていることから、要らぬ心配をするのではないかと……」


 その言い方だと、父上は悪戯の方だと考えたいのだとハイドラスは悟った。


 ハイドラス自身もそうであって欲しいと願いたいが、現実逃避をする訳にもいかない。


 とはいえ、陛下がこれだけ騒がしく捜索しているの以上は、例の件の可能性も示唆してのことだろう。


「――殿下っ!!」


 使用人の話を聞いている途中で、ハーディスとウィルクが慌てた様子で駆け寄る。


「どうした?」


「はあ、はあ、それが王城門の前で子供が行方不明になったとご家族の方々が……」


「何!!」


 息を切らしながら話すハーディスの話を疑わざるを得なかった。


 昨日はそんな話をこの王都に住む民からは聞かなかった。なのに今日になって、行方不明になったと訴えてきている者達がいる。


 つまり、昨日の夜に失踪したことになる。


 だが、昨日の夜は特に何ら変わることのない月明かりの綺麗な夜だったと記憶している。


「それも問題ですが、どうしたんです? さっきからみんなバタバタと……」


 さっき来たばかりのウィルクは慌ただしい城内について質問すると、ハイドラスは深刻な表情で返答する。


「…………メルティが行方不明になった」


「――っ!」

「――なっ!」


 二人共、息があったように同時に驚く。そして二人の頭にも過った。


「まさか、最近起きている失踪事件が関係しているのでは? ――殿下!!」


「わかっている。とりあえず落ち着け」


 ハイドラスはハーディスに言ったが、本当は自分に言い聞かせる為に言ったのだ。


 顔を手で押さえて、どうにか平静を維持するように息を整えながら、おでこを(さす)った。


 そして焦燥感を抑えながら、ここにいる各自に指示を出す。先ずは使用人から。


「お前はこのことを父上に連絡しろ。ハーディスは訴えている者達を王城へ。私が直接話をすると伝えろ。ウィルクはギルドに連絡だ。メルティのことも含め、行方不明になった者達の捜索を優先するよう伝えろ。後、メルティのことは民には伝えるなと念を押しておけ」


 メルティアナが行方不明となっていることが明るみになると、暴動が起きる可能性がある。


 王族が拐かされたということから、警備体制や危機感の欠如、解決能力の有無まで疑われる可能性がある。


 ましてまだ犯人の情報が一切ない。


 ハイドラスは細心の注意を払いつつ、行動を指示した。


「は!」


 指示を受けた一同は行動を開始する。


 ハイドラスは一人、廊下で俯きがちに佇む。


 悔しそうに歯ぎしりを軽く、自分の無力さに表情を歪ませていた。

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