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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
4章 ラバ 〜死と業の宝玉と黄金の果実を求めし狂人
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03 建国祭があるそうです

 

「まったくっ! またですか、先輩方!」


 そう怒るナタルの後ろへ避難する俺とリュッカ。


「いやぁ、可愛い後輩ちゃんを愛でてただけだよ〜」


「可愛い子には撫でてあげろって言うでしょ〜」


 それを言うなら、可愛い子には旅をさせろでしょ。意味どころか使いどころもあってない。


 ナタルは、はあっと区切るような息を漏らすと二人の先輩に注意する。


「ここは他の生徒も使う、公共の場なんですよ。周りの迷惑も考えて下さいっ! いいですね?」


 その威圧的な物言いにやる気が萎えたのか、渋々返答。


「はぁ〜い」


「ありがと」


「貴女達も貴女達です。ちゃんと抵抗して下さい」


 ナタルはそう言いながら、身体を洗いに向かった。俺とリュッカも温まり直すことにする。


「お疲れ」


「お疲れじゃないよ、助けてよ」


「そう? 楽しそうだったけど……」


 攻める側はね。やられる側は戸惑うだけである。


 しかも元男の俺には女の子のスキンシップには慣れない。


 よくドラマやアニメとかでカップルが腕を組むところとか、見たことはないだろうか。


 男性よりも女性の方がスキンシップの頻度が多いというのは、言わずともわかることではないだろうか。


 まあ女性にとって、異性の興味を引く一番的確な手段だと本能的に理解しているように思える。


 元男の俺ならわかる。男はその辺は単純である。


 でも俺には、そんな色めいた展開などなかったからね、悲しいことに。


「楽しくないよ……お風呂で疲れるとか」


「そうだね、疲れをとるはずなのにね……」


「で? 結局何で落ち込んでるの?」


「……その話はいいよ」


 ぶくぶくと顔半分沈めながら、不機嫌そうに言う。


 どうせ元の世界に帰る方法なんてないし、慣れしかないし、慣れしか!!


 実際、慣れたから飽きたなんて思う訳だし……はは。


「まあ、貴女は悩みがこれから増えそうですけどね……」


 向こうで身体と髪を洗い終えたのか、ナタルがこちらに来て、湯船へと浸かる。


「えっ? どゆこと?」


「今年は特に盛大に行われるみたいですから、パートナーの方も大変ってことよ」


「ああっ! あれだっけ? えっと……」


「パラディオン・デュオ……?」


「そう! それ!」


 パラディオン・デュオ? 何それ?


 聞き慣れない単語に首を傾げていると、さらにそれを不思議そうな顔で見られた。


「貴女、まさか知らないってことはないわよね?」


「へ? あっ、いや、えっと……」


「知らん、何それ?」


 俺が言い淀んでいると、フェルサがさらりと尋ねた。


「貴女は確か、別の国出身でしたっけ?」


「うん、だから知らん」


「パラディオン・デュオというのは、秋頃に行われる学園祭にて開催される闘技大会のことです」


 ニュアンスで何となくは伝わってきてたが、闘技大会ね。


「で? 今年は何で盛大なの?」


 俺は流れで尋ねると、フェルサ以外の周りの人達に信じられないような表情で見られた。


「あのリリアちゃん? 今年は建国祭が行われるんだよ」


「……貴女、この国の人間よね?」


「えっ!? あ、あはは……ド忘れしてたんだよ」


 何か久しぶり、この感じ。


 ――後々調べてわかったことだが、この国では五年に一度、建国祭が行われるとのこと。


 丁度、学園祭と重なるくらいなので、建国祭がある年は学園祭はなく、建国祭に参加する感じなのだという。


 パラディオン・デュオはそのイベントの一つとして、祭りを盛り上げるらしい。


 そんな時に転移してくるなんて、ラッキーと言うべきだろうか。


「そ、それで? 何で私が大変になるの?」


 本当に何も知らないのねと顔に書いてあるよう。


「パラディオン・デュオは騎士科と魔法科の生徒、男女一名ずつで構成される二人一組の闘技大会。つまり……」


「私と組む男子達の争いが起きる?」


「ええ。貴女、随分と人気があるようですから……」


 確かに、ここ二ヶ月で少なくとも二十人から告白を受けている。


 こっちの男子はがっつくのか、それとも俺が草食系男子だっただけで知らないだけか、定かではない。


「ああでも、ペアは先生達が決めるんだよ」


 パラディオン・デュオに参加経験のあるであろう、ユーカがさらりと答える。


「え? 何で先生が?」


「ほら、みんなの授業の時に見慣れない先生の姿がなかった?」


 そう言われて見れば、勇者校では見かけない先生みたいな人達がちらほらいたようなと、思い出す。


「パラディオン・デュオは大会自体を盛り上げることは勿論だけど、知らない人と組ませて、ちゃんとやれるかも確認する為に、実力を均等にするんだよ」


 そういえば合同授業の際に、カルバス先生がそんなことを言って、授業をさせてるな。


「実力を均等にというのは?」


「現段階でのペアバランスを取って組まれるんだよ。極端な例を挙げれば、騎士科で最優秀な成績の持ち主と魔法科の最低な成績持ちを組ませて、他のペアとバランスを取るんだよ」


「そりゃまた、難儀な組み方させるなぁ……」


 要するには、現段階でどんなペアと当たってもいい勝負ができるように、実力を合わせる訳ね。


「ああっ、だから他の学校の先生方も来ていて、実力が均等になるように見ていたと?」


「そう」


 おそらく別の学校の先生達が見て、不公平がないようにする為のものと思われる。


 ということは最近、こっちの先生もちらほらと居なかったのはその影響か。忙しそうだな。


「だからそろそろ組み合わせも発表されると思うよ。今年は建国祭でもあるから、先生としても早めに組ませたいだろうし……」


「建国祭と関係あります?」


「建国祭は色んな国の人達も来られるらしいですから、生徒の安全確保とか警備とか、色々あるんじゃないです?」


 確かに、先生の仕事は何も授業をしたりだけじゃないからね。


 見回りとかも仕事だろうし、この言い方だと建国祭も結構派手みたいだし、色々と準備が大変なんだろう。


「じゃあ知らない男の人と組むんだ……」


「私、大丈夫かな?」


 アイシアはまるで他人事のようにポツリと呟く一方、不安な物言いで話すリュッカ。


 アイシアは人見知りしない性格してるから、大丈夫そうだけど。


「リュッカさんに関しては、例の件もあったんですから、気をつけて下さいね」


「は、はい……」


 ナタルはリュッカの事件を棚に上げて心配する。


 リュッカの事件については、アーミュ達があの呪印をしている影響もあってか、あっさりと学校中のみならず、学園区全体のほとんどの人間が知っている。


 人の噂が広まるのはやはり、随分と早いものだとちょっと恐ろしさも感じた。


 パソコンとかが無くても、人の噂話とは簡単に歩いていくものだ。


「委員長、大丈夫ですよ。さすがに男相手なら警戒心も強く持ちますよ」


 冒険者に襲われた経験もあるんで。


「でも、ユーカ先輩。何で今頃組み合わせを発表するんです? 建国祭は秋ですよね?」


「そりゃあ組む人と仲良くなったり、作戦を練ったり、弱い人と組む場合は対策や特訓もしないとね」


「……それ、全部生徒がやるんですか?」


 先生の職務放棄に思えてくる。


 将来をいい方向へ導くのも先生の仕事だと思うのだけれど、いくら忙しいと言ってもねぇ。


「いわば自主性を鍛える為じゃなぁい?」


 自主性が無さそうなタールニアナから一言。


 説得力ゼロの気怠そうな声と湯船にどっぷり浸かる姿を見て、思わず苦笑い。


「だからこの時期の男子達はソワソワしてない?」


「そう言われてみれば……」


「組んだ女の子とワンチャンっ!! みたいな……」


「不謹慎だわ」


「はは……」


 さすが真面目な委員長気質のナタル、即答である。


 まあ、かく言う俺もそんなことはないと思うのであった。

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