96 生意気な精霊
「は?」
こっちは真面目にリュッカ達の捜索を話していたのに、フィンなんて知らない人の、というか妄想とお話中とは危機感が無いと、ムッとした表情になる。
それを見たアルビオはクエスチョンマークが頭の上に沢山出たかのように不思議な顔をしてこちらを見る。
その事を知ってか、ウィルクが首を挟む。
「ああ……風の精霊の彼だろ?」
「風の精霊?」
「……うん。僕自身はやっぱりまだまだ未熟だから、顕現して手伝ってほしいってお願いをね」
そういえば、アルビオは六属性持ちとか精霊を使えるとか言われているけど、その辺りを見てはいない。
「で? 気まぐれな精霊様はどうだって?」
「協力するって言ってくれています」
精霊は人間を毛嫌いしてるんだっけ?
だが、この表情を見るに別に説得に困難を極めた訳ではないらしい。
「――フィン!」
緑色の光がアルビオの頭隣に集まっていく。そして集まった光の集合体は弾けるように光が飛んで、砕けるような音が鳴った。
「――おうっ!! アルっ!!」
小生意気そうな面の裸の男の子精霊が現れた。裸と言っても身体の部分は黄緑色に発光している。
見方を変えれば生意気そうなつんつん頭の男の子の顔が宙に浮いているようにも見える。
「ほえ〜〜……これが精霊君かぁ」
アイシアは興味津々の表情で彼に近付くと、手をバタバタさせて拒否する。
「近付いてくるなぁっ!! 人間!!」
「ええっ!? 何で?」
「何ででもだっ!!」
ヒュッとアルビオの後ろに隠れる。
「ごめんね、フィンは他の人にはあんまり不慣れでね……」
「不慣れじゃねぇ!! 人間が嫌いなだけだ!!」
アルビオの後ろに隠れながら悪態をつく。
「何で嫌いなの?」
「決まったんだろっ!! 人間なんて欲深くて、傲慢で、狡猾で――」
文句をぺらぺらと並べて喋る。
嫌いな割には結構喋るなぁ。
そんな精霊を横目にカルバスが理由を語る。
「お前達も知っているだろ? 人精戦争を……」
「人精戦争?」
「太古の昔あった精霊との戦争のことだ――」
――人精戦争はかの昔、精霊の力を利用しようとした人間を懲らしめる為に行われた戦争とされている。
その当時の人間達は精霊を痛めつけたり、力の利用をし繁栄を求めたことから、大精霊達の怒りを買った。
かの戦争は凄まじく、沢山の人間が死んだと記録されている。
だが、勝者は人間だった。狡猾に精霊を騙して、大精霊達を追い詰めたのだ。
結果、大精霊達は人間を見限り、人間の前から姿を見せなくなったという。
だが、アルビオの先祖にあたるケースケ・タナカには何を思ったのか、感じたのか、協力する形でその生前活躍した記録が残っている。
そして現在、大精霊ではないとはいえ、精霊が付いている。
俺は何故、精霊がこの二人に肩入れするのか推測はできる。
ケースケ・タナカはこちらの世界の人間ではない。その影響があるのではないかと。アルビオにも同様の理由が考えられるが、推測の域を出ない。
この人間に対して偏見とも思える文句を垂れ流す精霊に尋ねても、おそらく答えは返ってこないだろう。
「――とにかくっ!! 気安く話しかけんなっ!! いいな?」
「はーい……」
アイシアは渋々了承。猪突猛進娘を止めるとはさすがは精霊?
「それにしても随分と喋る精霊だね」
「寂しかったんじゃないかな?」
「何言ってやがるんだ、アルっ!! コイツらにしっかりと身の程ってヤツを教えてたんだよ」
上から目線で生意気に話してみせる。だが、どこか可愛げがあるせいか、茶化したくなってくる。
「またまた〜、そんなこと言っちゃって〜」
「そうそう。寂しいなら寂しいって言えば――」
「てめぇーらっ!! 勝手なこと言ってんじゃねぇーーっ!!」
茶化す俺とウィルクにヒュンと近寄り、怒鳴る。
「お前達、じゃれあうのもその辺にしておけ」
「はーい」
緊張で張り詰めた空気も少しは和らいだからいいだろうとカルバスが止める。
すると、俺の近くまで寄ってきていたフィンは、品定めでもするように、片目を大きく開き見てくる。
「んん〜〜……」
「な、何?」
「何かお前、アルビオと雰囲気が似てるんだよなぁ……」
胡座をかいて不思議そうにそう言って、宙をふわっと彷徨う。
「いや、私はアルビオの親戚じゃないよ」
「そうだよ、フィン。どうしたの?」
「いや、そう言うんじゃねぇんだよ。なんて言うかその……んんっ?」
上手く言葉に出来ないのか、それとも感覚的なものだからか、言葉が出てこない。
だが、俺はある程度言いたいことがわかる。
おそらく、この精霊は異世界の人間の雰囲気を感じたのではないだろうか。リリアの中身は異世界人だからな。
精霊が何故、異世界の人間には干渉したのか、どうして強くその遺伝子を受け継いだアルビオに懐いているのかは定かではないが、今知る必要はない話だ。
それに下手に勘繰られても困るだけなのだが。
「フィン、今はそれどころじゃないんだ。頼むよ」
「そうだな、あいよ」
精霊である彼はアルビオの為なのか、人間を毛嫌いしている割には、リュッカ達を助けに行くのに抵抗はないようだ。
精霊の力にも期待しつつ陣形を取った。
「では行こう」
俺達はフェルサを先頭に迷宮の奥へと入っていく。




