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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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78 零れ落ちる不安

 

「――そうですか……ありがとうございました」


 アイシアとテテュラはタイオニア方面の方の門前で情報収集をしていた。


「……リュッカ、どこ行ったんだろ」


 だがこちらは情報がなかったようで、アイシアは特に落ち込んだ様子を見せる。いつも元気で明るい彼女をテテュラも知っている。


 こんな沈んだ声を聞くと、あの時リュッカを止めなかった自分に後悔する。


 テテュラはこれまで友人という人間関係をあまり作ってはこなかった。だがこの学校へ来て、リュッカと同室になり、不器用ながらも少しずつ、向こうからとはいえ彼女に対し心許していく自分がいた。


 テテュラにとってもリュッカは大切な存在になりつつあった。その彼女の行方不明事件に責任を感じている。


「……ごめんなさい。私があの時止めていれば。せめてどこに行くかだけでも聞いておくべきだったわ」


 責任を感じるように落ち込んで話すテテュラに、自分が落ち込んじゃダメだとテテュラを励ます。


「テテュラちゃんのせいじゃないよ。大丈夫! きっと見つかるよ!」


 自分が一番つらいはずなのに励ましてくれるアイシアにテテュラはその気持ちを汲むように和らいだ表情を見せる。


「そうね。聞き込みを続けましょうか……」


 ――懸命な聞き込みも虚しく、成果が出ずに寮での帰り道。


「そんなに落ち込まないで。こちらに情報がなかったということは、向こうの方には情報があった可能性が高いわ」


「……そうだね」


 アイシアの寂しげな背中に心が痛む。大丈夫と無理されても彼女自身が寂しさを隠し切れていないところを見ると、どうしても責任を感じざるを得ない。


 テテュラは尋ねた。友人という存在を持たない彼女はその気持ちを少しでも知りたく、どうしても聞きたくなった。


「アイシアさんとリュッカさんってお友達なのよね?」


 テテュラから自分の話を聞いてきたのが初めてなせいか、少し笑顔を見せた。


「……アイシアでいいよ。……うん、そうだね。小さい頃から一緒だよ」


「そう……。正直な話、私はあまり真っ当な人生を歩んではこなくてね。こんな気持ちは初めてなの……」


 テテュラは何とも言えないもやもやした気持ちで苛まれている。罪悪感もそうだが、それとは違う気持ちもある。


 だから思わず自分の事も少し口から零れた。


 アイシアはそれに深く尋ねない方がいいと思い、リュッカの話を始める。


「リュッカの実家は解体屋でね。おかげで友達ができなかったみたいでね。学校でも一人だったの……」


 魔物の解体などを行う仕事に加え、屈強な冒険者も出入りする為、同い年の子供から見れば怖い印象を持つ子が多かった。その影響でリュッカは避けられたり、怖がられていたりしていたのだ。


「そこを貴女が強引に友達になったのかしら?」


「えっ!? 何でわかったの?」


「普段の貴女をちらほら見てたら、何となくね……」


「まあ、うん。そうなんだ……」


 大変な状況だが、思い出話に花が咲く。アイシアにとってリュッカの存在は特別なんだと確認するよう。


「リュッカはさ、小さい頃こそ大人しくて引っ込み思案で、よく私が引っ張りまわしてたけどね。今はそんな私のことを優しく、しっかり見てくれてね。それでいてお父さんの仕事の為にって勉強を頑張ってる姿とか見ちゃうとさ……」


 話をする内に少しずつ涙声になっていく。


「私もさ……頑張らなくちゃとか、何か力になってあげたいとか……思っちゃってさぁ……」


 リュッカの行方がわからないことが不安を募らせ、思い出す度に寂しさが堪らずこみ上げてくる。


「どこ……行っちゃたの……リュッカぁ……」


 寂しさや不安、焦りが涙に変わって、頬を伝い零れる。


 そんな不安を少しでも抑えてあげたいとテテュラは手を握る。


「貴女の溢れ出るその気持ちは私にはわからないわ。だけど、こうして支えてあげるくらいならできるわ」


 正直、常識的な悲しみなら彼女にもわかるが、内心アイシアがどれだけの不安と恐怖、悲しみなどが入り混じった気持ちなんて、そんな親しい人間関係を作っていない彼女にはわからなかった。


 彼女自身、過去の関係上、人を避ける傾向があったことが要因とされる。


 だから彼女が考えうるアイシアの不安を少しでも拭う手段として、手を握って暖かさを感じてもらおうというこの行動までが限界だった。


 そのリュッカを想う暖かくも悲しい涙をこれ以上、零さぬようにと。


「――ありがとう! テテュラちゃんっ!!」


 堪らず泣きながら抱きつくアイシア。テテュラは疎らに行き交う人の目も気にせず、彼女を優しく受け止めた。


 以前の自分ならこんなことはしていないだろうと、内心困惑しながら。

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