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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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73 嫉妬に狂った笑み

 

 ――彼女達一行は西門からザラメキアの森へと到着。奥へ奥へと進んでいく。


「まだ先ですか? あまり奥に行き過ぎると危険ですけど……」


「もう少し先だと思うんです……」


 何でも魔物に驚いて走って遠くに逃げてしまったという。その時に落としたのではないかと言うのだ。


 いくら匂い袋があるとはいえ、油断は禁物。慎重に奥へと進んでいく。


「この辺りだと思います」


 そう言われて着いた場所は所々茂みが生い茂った広場のような場所。


「では、手分けして探しますわよ」


 アーミュは広場の中央辺りに匂い袋を置くと、指を差して各自に指示を出した。


 その献身的な姿にリュッカは、本当に改心してくれたものと安心し、指示された場所辺りを散策する。


 元々薄暗い森だが、そろそろ日も暮れる頃。リュッカは魔物が夜、活発になることは勿論知っている。


 探す要領も焦りが見えてきた。すると、


「――きゃああっ!?」


 手で茂みを分けながら探していて不意を突かれたのか、目の前の大穴に気付かず、頭から落ちかけた。


 だが左手を掴まれて助けられる。その手の主はアーミュだった。


「……大丈夫ですの?」


「ありがとうございます」


「落ちていたら大変でしたわよ。そこは蟲の迷宮(ワームのダンジョン)なのですから……」


 リュッカはその大穴を見て、思わず身震いして怯える。無理もない、その穴の中は真っ暗で底が見えないのだ。


 ――リュッカはこの迷宮(ダンジョン)についての記憶がある。カルバスがこのザラメキアの森での魔物討伐の際に説明を受けている。


 ここザラメキアの森には複数の迷宮(ダンジョン)が存在するが、最も危険な場所がここ、蟲の迷宮(ワームのダンジョン)である。


 名前の由来はワームという巨大蛆虫の魔物が穴を掘ってできたものだという。


 迷宮(ダンジョン)にしては珍しく、横穴ではなく縦穴から入る迷宮(ダンジョン)である為、そういう意味でも危険とされているが、奥にある所なせいなのか、魔物が迷宮(ダンジョン)に入る為なのか、周りの柵らしきものも破壊されている。


 リュッカはアーミュの手に掴まったまま、身を軽く委ねる。


「気をつけて探してくださいまし……」


 優しい言葉をかけられ、安心したリュッカはアーミュの手を離して体勢を戻した、その時だった。


 ――ドンっ!!


 リュッカは右肩を強く押された。突然のことに後ろに倒れるように大穴の方へ。


 リュッカは抵抗できなかった。アーミュの発言に気を許し、一度は穴に落ちるのを助けられ、注意を受けたのだ。


 まさか押されるとは考えなかったのだ。


 咄嗟のことでそのまま穴の中へ。だがその時、リュッカは見たのだ――、


「……さよなら、蛆虫」


 ぼそっと言ったのだろう。リュッカからは何を言っているのか聞こえなかったが、良くないことを言われているのはわかった。


 その時見えた顔は悪意に歪んだ満足げな笑みだった。


 リュッカがアーミュの悪意を考える間もなく、迷宮(ダンジョン)の穴へと消えていった。


 それを遠巻きに確認したのか取り巻き二人とソフィスが近づく。


「……終わった?」


「くふふ……ええ、終わりましたわ」


 あまりの嬉しさに笑みが零れる。だがその表情は悪辣さに歪んでいる。


 そんな様子を見てソフィスはその場で女の子座りで座り込み、両手で顔を覆って泣き崩れる。


「……ごめんなさい! リュッカさん! ごめんなさい……!」


 何度も何度も祈るように謝罪の言葉を繰り返す。するとそんな彼女を取り巻き二人はソフィスの両手を持って穴の前へ。


「ちょっ、何を……」


「何って……口封じですわ」


「――っ!! 待って下さいっ!! やることはやりました!! この事も喋りません!! だから――」


 抵抗する彼女を鎮める為に一言。


「ああ、そういえば貴女のお父様の件ですが……アレ、嘘ですの♡」


 ニコッと満面の笑みを見せて嘘を告白。その告白に茫然とするソフィス。


 どうやらソフィスは彼女達に騙されていたようで、思わず抵抗を止めた。


 ――ドンっ!!


「えっ? ――きゃあああっ!?」


 リュッカと違って落とされることをわかっていたソフィスは何とか穴の淵を掴むが、アーミュに手を踏みにじられる。


「……やめて……痛い……」


 アーミュは恐怖心を与えるように、ジリジリと踏みにじる。泣きながら助けを求めるも、三人の貴族嬢は侮蔑するようなニヤついた表情で見る。


「――お願いしますっ!! 助け――」


「ふんっ!!」


 アーミュは思いっきりソフィスの手を踏んだ。あまりの痛みに手を離してしまった。


「――いやああぁぁーーっ!!!!」


 彼女は悲鳴を上げて、穴へと消えた。


「ふふ、これで終わりですわね」


「上手くいきましたわね……」


「アーミュ、私達も突き落とすのは無しだよ」


「わかっていますわ。わたくし達は貴族ですもの。誰がアルビオ様に選ばれても恨みっこなしですわ」


 ソフィスの悲鳴も彼女達には届かず、平然と話をしている。


「これでアルビオ様に這い寄る蛆虫は消しましたわ。これでアルビオ様も惑わされることはないでしょう」


 まるで自分達が相応しいとばかりに誇らしげに話す。


「でも、本当にバレないのかしら?」


「まあ、確かに……」


「あら、その為の――」


 匂い袋を手に持つ。


「これですわ!」


「まあね」


「それにしてもここまでやる?」


 取り巻きの一人が尋ねるとアーミュは、はんっと嘲笑する。


「馬鹿言わないでくださいな。わたくし達は何も悪いことなどしていませんわ」


 取り巻き二人は首を傾げる。


「わたくし達は()()を巣に帰しただけですのよ。お家に帰して何が悪いのかしら?」


「ああっ! そうですわね」


「私としたことが……」


 当然のように納得する一同。罪の意識など微塵もない様子を見せる。


「さあ……効果が切れないうちに戻りますわよ」


 アーミュ達はそそくさとその場を後にした。


 嫉妬という悪意に呑まれた二人を置き去りにして。

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