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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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68 実戦授業終了

 

 すっかり二人の表情も明るくなり、落ち着きを見せ、フェルサも安堵する。


「さて、じゃあそろそろ戻ろうか」


「……そうだね。今日は聞いてくれてありがとう。何だか少し、気分が晴れた気がする」


 その表情は穏やかだ。自然とリュッカも笑みが零れる。


「いえ、こちらこそ。殿下に相談しづらい時はいつでも……」


「戻らないとあの傲慢貴族が暴れられても困るしね」


 中々いい雰囲気なとこ悪いねとばかりに現実も教える。


「はは……そうだね。戻ろう」


 そう言って、この場を後に皆が待つ場所へと向かった――。


 戻るとアーミュがすぐにアルビオに駆け寄る。


「アルビオ様!! お待ちしておりました。そこの娘共に何かされておりませんでした?」


 強引に腕を組み、リュッカ達から離す。


「大丈夫でしたよ。お陰で休めました」


 アルビオの先程とは少し違う様子に驚く者がいれば、アーミュのように表情を変えずに聞くものもいる。


 様子が違うことに驚いたリュッカと同じパーティーの男子が尋ねる。


「何したんだ、ナチュタルさん」


「いえ、ちょっと悩みを聞いただけです」


「そ、そう?」


 彼の驚きも当然。さっきまでおどおどしていた彼が、ちゃんと答えを返したのだ。それも休憩中のほんのひと時。


 彼は、はぁーと感心する。


「やっぱ女ってすげぇなぁ……」


「ええ……?」


 その言葉にはさすがに動揺を隠せないリュッカ。さらに驚きの発言をアーミュから聞くことになる。


「さあ、アルビオ様。参りましょうか」


「えっ?」


「彼女とパーティーを入れ替えてもらいましたの!!」


「えっ!?」


 なんとアーミュは自分の友人である取り巻きと入れ替わろうと提案してきたのだ。


 その提案について聞こうとした時、リュッカの肩に手をかけられて止められる。


 その先を見ると無言で首を横に振る同パーティーの人達の姿があった。


「えっ!? でも……」


「アルビオ様、終わりが近付きましたら、元に戻ろうと話がついてますから。どうかわたくしの友人をよろしくお願いします」


 取り巻きの彼女がぺこりとお辞儀。周りの止めない様子から察したのか、アルビオは了承する。


「わかりました……」


「では、参りましょう♩」


 アルビオの腕を組み行く上機嫌の彼女のパーティーを見送った。


「……そういうことなのでよろしく。言っておきますが、わたくしは何もしませんので……」


「は、はあ……」


 取り巻きの彼女はそう言うとリュッカ達から距離を置いた。


 その後、男子達はリュッカとフェルサを手招くとひそひそ話を始める。


「お前達がアルビオに何したか知らないが、注意しとけよ!」


「何が?」


「あのラサフルって貴族が何しでかすかわからないってことだよ」


「何で?」


 さっきから他人事のような返答のフェルサ。だが、リュッカもわかっていない。


「……あの貴族嬢達、お前達のところを覗き見てたんだよ」


「えっ!?」


 おそらくは無属性の遠視魔法の類だろう。貴族である彼女達は騎士科に入る才能はないものの、魔法科としては才あるものではある。


「その時、見たんだよ……眉間にすげぇシワができるほどキレてた顔がさあ!」


「そ、そうなんだ……」


 思わずビビるリュッカだが、フェルサは何でことはないとばかりに表情を変えず、


「だから?」


 特に気に病むことはないと返答。


 フェルサは元々冒険者だ。恨み辛みは慣れっこといったあたりだろう。


「とりあえず忠告はしたからな。気を付けろよ」


「ありがとうございます」


 そして他の休憩していた人達も加わり、魔物の討伐を再開する。


 ***


 授業終了。みんな再び演習場へと集まった。


「これにて今日の実戦授業は終了とする。今後もまたパーティーを入れ替えて行われる為、今日のことを教訓とするように。最後に今回、一番優秀だったパーティーを発表する」


 今後も励むようにとか、やる気を上げる為の競争心を持たせる為だろうか。


「一番優秀だったのは……ビッツ・フェンナ、ロバック・ウェルスト、カルディナ・ワヤリー、リリア・オルヴェールチームだ」


「――えっ!? 俺達か!? ははっ、やったぜぇ!!」


「すごいやっ!!」


「ふむ……」


 マジか。こういうのって地味に恥ずかしいよね。


 ちょっと顔を染めて照れていると、横からアイシアが激励する。


「おめでとう! リリィ!」


「いや、別に……」


「彼らは魔物の討伐は勿論だが、パーティーとしての戦い方も実に良かった。これからも慢心せず励むように……」


「あ、はい!」


 俺達を褒め終わると、何やら少し怒りが混じったような感じで次の話に入る。


「これで解散だが、今から名前を呼ぶ者はここに残るように。では――」


 というと次々と名前が呼ばれる。呼ばれているのはどうやら貴族嬢ばかり。呼ばれる度に――、


「何故わたくしがっ!!」

「はあ!? 何なんですの?」


 苛立ちを見せ、反感を口にする者ばかりだから実にわかりやすい。そして、その貴族嬢達にも見覚えがある、いわゆる媚び売り貴族共だった。


「――以上だ。名前を呼ばれた者以外は速やかに解散してくれ」


 どうやら説教でも始めようとばかりの空気に、皆一目散に解散する。


「何が始まるんだ?」


「説教でしょ?」

「お説教ですわ」


 俺とカルディナの意見が一致する。


「どうしてわかるの?」


 アイシアがきょとんとして尋ねると、ハーディスが答える。


「あそこに呼ばれた貴族嬢の方々は真面目に授業をしていませんでしたからね。お陰でもう一方の前衛の方々の負担が重かったことからのお説教でしょう。実際、怪我をなされた方も少なくないとか……」


 まるで見ていたかのように語るハーディス。


「ああ……! あの時助けたパーティーの人達!」


「そういうことです」


 どうやらそういうパーティーに出交わし、助けたらしい。


「でも、どうして先生がそれを把握してるの?」


「そりゃあ監視してますからね」


「遠視魔法とか?」


「そうです」


 そう話しているとリュッカのパーティーもこちらへと来た。


「あのアーミュさんが呼び出されたんだけど……」


「そっか。リュッカも媚び売り貴族とだっけ?」


「そうそう。私も……」


 フェルサもご到着。だが、フェルサのパーティーには貴族嬢らしい方もいるのだがと首を傾げる。


「その彼女は呼び出しを食らわなかったの?」


「私、しごいたし……」


「お、お陰様で……」


 その疲労困憊の表情にさすがに同情を覚えた。フェルサは元冒険者、しごいたとなると結構なことだろう。


「えっと……彼女が呼ばれた理由って?」


「リュッカっとこの貴族嬢さんはサボりだったんでしょ? だから呼び出されたんだって……」


 リュッカは心当たりがあるのかはっとなる。


「とにかく今からお説教が始まるのでしょうし、お邪魔にならぬように早く行きましょう」


 淡々と他人事のように話すあたり、カルディナの知り合いはいないよう。


 俺達はこの場を後にした。リュッカはどこか不安げに視線を送っていた。

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