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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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63 カースド・フレイム

 

「……消えない炎ですか」


「正確には違うけど、試してもらった通り、()()()には消えないよ」


 俺の発言に疑問を隠せない一同だが、ハーディスは仮説を立てる。


「物理的に消えないということは、そもそも実態がない炎ってことですよね?」


 俺は首を横に振る。


 そもそも水の中にある黒い炎は燃え続けていることを証明するように、気泡が出ている。


「答えは簡単。これは呪いだよ」


「呪いってことは付与魔法の一種ってことかしら?」


「そうだね。付与魔法は基本的に身体に影響に与えるものだけど、目に見えるものではないよね?」


「確かに……」


 付与魔法は肉体強化や弱体化、病魔を与えたり、その予防をかけたりなど、目に見えることではない。


「なら目に見える付与魔法をと思って、作ったの」


「作ったのってとんでもないものですよ! 本来の付与魔法のかけ方はわかっていますよね?」


「わかってるよ。付与魔法は範囲が決まってたりするもんね」


「ええ。それをこんな距離から……しかもまだ飛距離出ますよね?」


「うん。ほとんど攻撃魔法としての運用ができるよ」


 俺が淡々と説明をするが、みんなどこか驚きを通り越されているような表情で聞きいる。


「……つまり、この魔法は火という物理的現象を与えながら、呪いという精神的現象で相手を惑わす訳だ」


「そういうこと。相手からすれば水で消そうとしたり、擦りつけたりして消そうとするだろうけど、その間も火と同じ熱さで相手を追い詰められるから、運用次第では拷問とかにも使えるかも……」


 みんな、俺から後ずさる。


「どしたの?」


「いや、発想が怖い」


「そうですわね……」


「え、えっとこれの解き方は?」


 俺は指を鳴らす。すると水の中に沈む石から黒い炎が消える。その炎が出ていた部分には焦げ跡があった。


「付与した本人が消すか、解呪魔法だけだね」


「要するに火の消し方が面倒になった魔法という訳だね」


「そうは言いますが、消せる人間が限定されます。水属性の解呪魔法が使える者、後は光と闇の属性の人のみです。これは脅威ですよ」


 深刻そうな表情で語るハーディスの言う通り、この魔法はエグい。


 普通の火なら消す方法などいくらでもある。だが、この黒い炎は解呪魔法が使える魔法使いに限定される。


 水属性の精神型の治癒魔法が使える者、これだけでも限定的だが、光と闇属性持ちも、そもそも希少なのだ。この魔法の対策が厳しいのだ。


 呪いのような類を解く薬や魔道具も対策として取れるが、常に持っているということもないだろう。


「よくこんな魔法を思いつきましたね」


「んー……黒い炎っていうのは最初からイメージにはあったんだけど……」


 中二病といえば黒い炎という印象は外せない。そのお陰で先輩方からからかわれる羽目になったのは内緒だ。


「黒いだけの炎じゃあ、芸がないと思ってね。だったら何か効果でもつけようかなって思ったの」


「なるほど、火の特性を生かす形の魔法を作ったということね」


「すごい……すごいよ! リリアちゃん!」


 ミルアがすごい興奮して褒める。


「こんな魔法を作るなんて……ああ、もうすごいしか出てこないよ」


 語彙力がなくなるほどのことのようだ。


「どうしたんだよ? ロバック」


 ビッツが様子の変な彼に尋ねた。どこか落ち込んでいるように見えた。


「あ……ううん、すごいなぁって……」


 沈んだ声で答える。どうやら実力差を見せつけられたのか、自信をなくした様子。


「ロバック、余計なお世話かもしれないけど、私には出来ない事を貴方は出来るよ」


「そんなことは――」


「だって私は水魔法なんて使えないよ」


「……」


 励ますが、あまり受け止められないようだ。


 俺がロバックを励ますのは、この力が本来、俺のものではないからだ。だからこそ出来ることがあれば挑戦しようと思える。


 俺はあくまでリリアの才能があって、向こうの知識があったからできたまでのこと。いわばこれもチートと呼べるだろう。


 だから、これで落ち込まれるのは見ていられない。


 だが、これも身勝手な理由だ、自分が傷つきたくないが為。


 正直、俺はずるいんだ。リリア・オルヴェールという人間だから勇気を持って挑戦できる。だけど鬼塚勝平でこの異世界へ来たら、同じように挑戦できただろうか。


 俺は責任を取っているだけにすぎない。不本意な形とはいえ、彼女の身体を使う以上、彼女に貢献する義務がある。例え、戻る戻らないどちらにせよだ。


 だから――。


「才能を見ないでほしい」


「それは……?」


 言葉の意図が読めないようで、ロバックは俯いた頭を上げた拍子に思わず目が合う。


「この世界は生まれ持っての才能である程度、人生が決まってしまう……」


 ハイドラスも言っていたことだが、この彼の表情もまたその犠牲の一つだろう。


「だけど自分という人間はやめられない。生まれ持っての属性、体内魔力の種類、才能、環境も自分を作る存在であるだろうけど、その才能を生かすもまた貴方なんだよ」


「僕が才能を活かす……」


「そう、先ずは自分を見よう。そうすればいつか貴方の持つ才能が応えてくれる。だって貴方の中にある才能は貴方のものでしょ? 貴方あっての才能、才能あっての貴方、どちらか一方が欠けるだなんて間違ってるよ」


 本当ならこんな偉そうな事なんて言える立場ではないが、彼自身の成長には必要だ。


 ロバックは俺の励ましを受けてくれたのか、とても嬉しそうだ。


「ありがとう、オルヴェールさん」


「どう致しまして」


 礼を言うのは俺の方だ。改めて認識できたよ、彼女の才能を責任を持って使うべきなのだと。

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