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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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61 見た目はほにゃらら、頭脳はほにゃらら

 

「――ロバックさんっ!!」


「――コールドコート!!」


 魔物の足元に冷気が見えるほどの氷が張る。そして、その冷気は魔物の足から這いずるように凍らせていく。


「――はあぁっ!!」


 足元が凍り付き、身動きが取れず混乱する魔物に一閃。虫型の魔物は頭を貫かれて生き絶える。


「さて、そちらは……と必要ないようだな」


 カルディナは自分達の戦闘を終えると、こちらを見るが戦闘は終了していた。


「ないです! 連携は順調そうですね!」


「ああっ! 俺とリリアちゃんの連携はバッチリさ!」


 いや、俺はカルディナ達のことを言ったのだが。嬉しそうに話す彼にそのツッコミはよしておこう。


「そろそろペアを変える?」


「いや午後もあるし、その時でいいんじゃないかな?」


「俺はこのままでもいいかな?」


「それではこの授業の意図に反するわ。リリアさんと離れたくない気持ちもわかりますが……」


 悪巧みでもするかのような笑みでビッツに言い寄る。図星を突かれたようで、


「べ、別にっ! そんなんじゃねぇし……」


「――では決まりですわね!」


「うっ!」


 実に楽しそうである。何となくフェルサが嫌う理由にも納得がいく。


 こうして見るとお父さんが泣くほど女らしくないとは思えないのだが、


「あれ? リリィ!」


 ふと聞き慣れた声が聞こえる。声の方へ向くと既に抱きつく体勢で来ていた。


「リリィーー!!」


「ちょっとま――」


 ぎゅーうと抱きつく。相変わらず人懐っこい。


「こんなところで会うなんて奇遇ですね……」


「あら? ハーディスさんではありませんの」


 アイシアの後ろからハーディスとミルアと見覚えのない男子生徒が来た。


「アイシア、ハーディスやミルアと一緒だったんだ」


「そうだよ! 凄いんだよ! ハーディス君めちゃくちゃ強い!!」


 興奮気味にハーディスのことを褒める。


 殿下の護衛としての仕事を任されるくらいだ、ここの魔物に遅れをとるような実力ではないだろう。


 見た目は完全に陰キャラに見えなくもない、キノコ頭の地味な見た目というのに。


「お褒めに預かり、光栄です」


 ぺこっと綺麗にお辞儀をするハーディスだが、その隣にいるミルアの顔色が悪い。


「ミルア、どうしたの? 顔色悪いけど大丈夫?」


 ミルア以外のパーティーは事情を知っているのか、何処か遠い視線を送る。


 この反応を見る限り、心配は無さそうだが、


「ああ……うん、叫び疲れてね……」


「叫び疲れた?」


「彼女、虫の魔物が苦手らしくて大変でしたよ……」


「そうそう。叫ぶから魔物が次々と出てきちゃってさ……」


「それの無限ループみたいになったんです……」


「ああ、そういえばてんとう虫を呼んだ時も騒いでたっけ」


 この森、虫型の魔物が多かったからな。ゴブリンとかウルフとかもいたが、圧倒的にミルアが嫌いな種類の魔物とよく戦ったなぁ。


「それでこの先に開けた水辺があるので、そちらで休憩しようかと。もう午前の実戦訓練も終わりですし……」


「私達もついていっていい?」


「勿論です。皆さんも大丈夫ですよね?」


 ここにいる全員でその水辺へ向かう。


「おおっ! ここでなら休めそうだね」


 その場だけを照らす太陽の光のおかげで、美しく透き通る小さな川とわかる。心地よいせせらぎは鼓膜を優しく撫でるように気持ちが良い。


 さっきまでいた不気味な森の黒々としていた木々も浄化されるように、光当たる場所は美しい緑の葉が織りなす。


 都会人からすれば、このような自然を身体いっぱいに感じる機会はないだろう。


 リリアの故郷では山の麓というだけあってか、濁りを一切感じない澄んだ冷たい空気だったが、ここは肌に馴染む暖かな空気を感じる。自然と表情も緩む。


 みんな、思い思いに休憩を取るが、安全確認も含めて尋ねる。


「ここでよく休憩するの?」


 ハーディスの口ぶりから、いくらかここを利用したことがある言い方だったが故の質問。


「ええ。我々騎士科は何度かこちらでの訓練を行なっておりますので、その際に何度か」


「やっぱり魔法科とは違うんだね……」


 魔法科は基本的には、演習場での魔法訓練がメイン。誰しもが王宮魔術師や冒険者になる訳ではない魔法科は、魔物による実戦訓練はこの合同授業でない限りはしない。


「あの、二人は知り合いなんですか?」


 その質問にふとハーディスとカルディナは顔を見合わす。


「ええ。同じ上級貴族の家柄上、交流がありまして……」


「それに同じ騎士の家系で風属性ということもあって、何度か手合わせもしていますよ。とても良い刺激を貰っています」


「わたくしもですわ。ですがこの学校へ来て正解でした。フェルサさんのような方と出会ったり、このように魔物の討伐に出られるなど、貴重な経験をさせて頂いてますわ」


 そのカルディナの言葉に少し苦笑いを浮かべるハーディス。


「確か、本当なら貴族校の方へ入学なさるつもりだったのですよね?」


「ええ。だけど、わたくしはもっと強くなってこの国の為にと父上の反対を押し切り、ここへ参りましたわ」


「貴女のお父様もさぞ心配を――」


 二人はお互いの立場を知ってか話が弾むようで、中々区切りがつかない。


 俺はずっと気になっていた本題を割って切り出す。


「あの、彼女のお父さんのことが少し気になったんだけど……」


「わたくしの?」


「はい。お父さんは何でも、女の子ぽくないと嘆いていたとか何とか。とてもそうは見えなくて……」


 するとカルディナはくすくすと笑い始める。


「わたくしも小さい頃は可愛らしい洋服に身を包んでいたのよ。あの騎士として立派な父上もとても嬉しそうにしていたのをよく覚えていますわ」


 おそらく可愛い娘にデレデレだったのではないだろうかと容易に想像がついた。


「ですが確か、お父様の騎士としての戦いを目撃する機会があって、そのまま一目惚れして、騎士としての道を志したんでしたよね?」


「そうですわ」


「そして、持っていた可愛らしい服や小物等を全部処分させたり、お父様と呼んでいたのを父上と呼ぶようになり、剣の稽古をせがんだり、大変だったそうで……」


 ああ、先ずは形から入ったのね。


「ええ。洋服を捨てた時なんて、泣いて捨てないようにと懇願されましたが……」


「捨てたんだよね」


「ええっ!?」


 そりゃあ泣くよお父さん。目撃したのは不意なのか故意なのかは知らないが、いいとこ見せた影響が父親的には裏目に出た訳ね。


 貴族ってここら辺の割り切りはいいのかねぇ。


「昔は確かにふりふりのドレスとか着てましたからね」


「昔のことですわ。もう二度とあんなものは着ません!」


「……一応聞くんですけど、ご趣味は?」


「そうですわね。素振りと剣の稽古と闘技大会の観戦とかですわね」


 聞けば聞くほどお父さんが可愛そうになってきた。きっと趣味も昔はこうではなかっただろうに。


 俺はこの見た目は麗しの娘、頭脳は少年の彼女を見て、同情心を募らせるのだった。

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