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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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58 野外実戦授業

 

 俺達は現在、演習場にて待機中。相変わらずの殺風景な景色の中、騎士科と魔法科の生徒達は駄弁りながら、先生を待つ。


 そして、演習場入り口から両学科の先生方が入ってきた。駄弁っていた生徒も自然と静かになる。


 カルバスは静かになったのを確認すると、いつもより沢山生徒がいるせいか、声を張り、授業を始める。


「これより、野外実戦授業を始める。まず、この授業の内容を説明する――」


 内容はこうだ。


 騎士科と魔法科から男女二人ずつの合計四人一組のパーティーでの魔物討伐。


 午前と午後でタイオニア大森林とザラメキアの森で場所を変えて行われる。


 ちなみにザラメキアの森は西門を出た先にある場所でタイオニア大森林とは違い、規模は小さいが、虫系の魔物が多く存在する。


「――という事だ」


 タイオニア大森林を抜けてきた自分達からすれば、あそこの魔物の討伐はある程度、熟知している。


 だが、ザラメキアの森は初めてだ。しかも説明を聞く限り、俺達が考えていたパーティーを組むことが出来ないみたいだ。


 自ずと不安が募る。


「それでは、今から名前を読み上げる。呼ばれた者はこちらへ」


 右手を出して空きスペースを示す。妙に先生方が生徒が並んでる場所から傾いていると思った。


「この者達は午前はタイオニア、午後はザラメキアでの実戦を行なってもらう。尚、パーティーはこちらで決めさせてもらう。では――」


 さらっと言った発言に生徒達はどよめく。勿論、急ぎ、挙手して質問をする生徒も出た。


「あの! 友達と組んではダメ何ですか?」


 不安そうな声で尋ねる。当然の質問だろう、だがカルバスはあっさりと突っぱねる。


「ダメだ。決めたパーティーによってはそうなる日も来るだろうが、基本、こちらで決めさせてもらう」


「それはどうしてですか?」


「……では君達は急な戦闘や災害になった際、仲の良い者達が常に一緒にいるとでも? 君達は将来、色んな人間と関わる上で状況など幾らでも変わる。その変わるがわるの環境に適応する力を学生の間に身につけるという訳だ……」


 そういう事ならこの授業の意図も理解ができる。


 騎士科と魔法科が組むのは連携の意味。魔物の討伐場所を変えるのは環境の変化の対応。


 男女混同及び知らない人とのパーティーはコミュニケーション能力の向上に判断能力や対応能力の向上を促すもの。環境の変化もあるだろう。


 実にしっかりと考えたカリキュラムと感心する。


 その質問した生徒達を含め、どよめきは収まり、質問した生徒達も不安ながらも納得したと答えた。


 カルバスは、ではから始まり、改めて生徒を呼び出し、生徒を分ける工程を終了する。


 俺は午前中、ザラメキアの森組みだ。その組の生徒の人混みから知り合いを探すと、アイシア、ユニファーニ、ミリアを発見する。だが、他の知り合いは見当たらないので、向こうを確認。


 どうやら向こうにいるようだ。見事にこちらの知り合いは魔法科と騎士科で分けられてしまっている。


 こういうイベントの場合、普通一人くらい知り合いとパーティーが組めるもんじゃないかなと身勝手な疑問を抱く。


 そして、俺が組まされたパーティーは騎士科の男子、目つきが悪い顔が特徴的なちょっとお馬鹿そうな印象の一名、さっきから頬を紅潮させて俯きがちにもじもじしている身長以上の杖を持つ大人しそうな魔法科の男子が一名。


 そして、背筋をピンと伸ばし、凛々しい立ち振る舞いから貴族と思われる騎士科の女子が一名、そして銀髪美少女の俺一名の合計四人パーティー。


 何か女子のパンチが強い気がどうしても否めないパーティー編成。


「あ、あの! オルヴェールさん!」


 さっきから俯いていた彼が勇気を振り絞って声を張り上げる。


「は、はい……」


「今日は一日、よろしくお願いします。僕、オルヴェールさんよりも弱いかもしれないけど、頑張るから!」


「あ、はい」


 そんな弱気な発言を聞いてか、その彼をはんと小馬鹿にするように笑うと、今度は彼が言い寄る。


「お前みたいなヤツが彼女を守れっかよ! オルヴェールさん、俺はビッツ。君のことは騎士科の俺が守ってやっからよ。よろしくな!!」


 照れながらも嬉しそうに言う声は、俺と組めたことに浮かれているようだ。前者の彼もそうだったが。


 そんな様子を見ていた彼女も割って入る。


「貴方達だけで話を進めないでくれる? わたくしもいるのよ」


「げっ!?」


「その反応はないでしょ? ビッツさん?」


「……つかアンタは守らなくてもいいだろ!」


 ビッツの言い方から、彼女はどうやら騎士科でも強い方の人のようだ。媚び売り貴族側と組む羽目にはならなかったことを感謝する。


「わたくしはか弱い女子に見えないのね、残念。貴方、名前は?」


「ロバックです……」


 彼女の頼り甲斐のある態度に畏縮したのか、自分との差に卑下してか細い声で名乗る。


 そして、こちらへ向くとニコッと自己紹介。


「まさか貴女と組めるとは思わなかったわ、オルヴェールさん。カルディナ・ワヤリーよ。よろしく」


 すっと綺麗に握手を求めてきた。彼女の凛とした姿に惚けた為、少し慌てたが応じる。


「あ、ああ……よろしく」


 ここでふと頭に何かが引っかかる。


 はて? 何処かで聞いた名前だ? 何処だ? 騎士科に知り合いなんて、ましてや貴族っぽい人との知り合いなんて。


 笑顔のまま、彼女の手を離しながら考えると、ふとハイドラスの話を思い出す。


「あっ!? ああっ!!」


 その思い出した表情を見て、カルディナは首を軽く傾げた。


「どうかされましたの?」


「フェルサが嫌ってた人!!」


 その言葉に目をパチクリとさせるカルディナ。するとすぐにクスリッと微笑した。


「ああ……貴女、彼女とお友達なのね。フフ、彼女は元気? 顔を合わせてもぶすっ〜としたり、睨んできたりで、中々嫌われているようで……」


 相当嫌いなんだなぁと普段知らないフェルサの様子を聞けた。


「まあ元気ですよ。私達と接する時はぼうとしてますから……」


「あらそう」


「ところで彼らはわかりますけど……」


 俺はある疑問を抱く。


 彼らは男子だから可愛い女子の噂話で名前を知ることはあるだろうが、女子の……しかも貴族の彼女からすれば、田舎娘の名前を知るのは不自然だと思った。


「何で私の名前を?」


 不思議そうに尋ねる俺を見て、楽しげに微笑する。


「貴女、自分が有名人だという自覚を持った方がいいですわよ」


「どういう……あっ」


「気付かれました? ……マルファロイとの事件、最上級魔法での火柱、勇者が封印した悪魔との契約、挙句に貴族顔負けの容姿とくれば、男子でなくとも名前くらい耳にしますわ」


 そうだわ今朝、そんな事をフェルサが言ってたじゃないか。


「まあ、そんな訳でよろしく。オルヴェールさん」


 頼もしくも、俺もフェルサのように弄られるのかなと些かの不安を抱える羽目となった。

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