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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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51 やっぱりと言うべきか引き強だった

 

「散々な目にあった……」


 どんよりと疲れた様子で落ち込むミルア。あれだけ騒いで叫んだんだ、そりゃあ疲れる。


「ドンマイドンマイ」


「……私もユファみたいに動物系が良かった」


「でも、望み通り、利便性は――」


「やっぱり可愛さが一番!!!!」


 さっきの意見をまるっとひっくり返した。もうこの話は止めとまだ召喚を行なっていない俺達へと話題を振る。


「二人は火属性だよね?」


「さっきもしなかったその話……」


「いいから!!」


 さっきのてんとう虫を忘れたいらしいので話に乗ることにする。


「まあ二人のを見た感じはあんまり期待できないかな? アイシアは引き強そうだけど……」


 きょとっとした表情をするアイシアを見た二人は、


「「あー……」」


 思わず納得の一言。こういう天然が確立という壁を平気でぶち壊していくんだろうなと思う。


 なんていうか素直なんだよな。受け入れてくれそうとか思うのかな?


「あ、ねぇ、リリィ?」


「ん?」


「リリィは闇属性も持ってるし、すごいの呼べるんじゃない?」


「あ……」


「えっ?」


 そうだ。俺は闇属性も持ってるんだ。そっちも視野に入れたら、結構期待できるんじゃないか?


 その一言を聞いたユニファーニとミルアは少し動揺した感じで尋ねてきた。


「えっ? リリアって火属性だよね?」


「うん。後は闇属性も……」


「えっ? 二つ持ち?」


「うん」


「……」


 二人共、ぽかーんとした表情。


 正直、闇属性については極力隠せるなら隠した方がいいんだろうが、いずれはバレるだろうしと明かした。どちらにせよこの国なら安全らしい。


「ええええーーーー!!」


双属性(ツヴァイ・エレメント)!!」


「う、うん……」


 この反応、王都に来てから二目かな? 王都でもレアケースなんだなと改めて感じる。


「それならもっと凄いのが呼べるんじゃない!!」


 何か本人よりも盛り上がってきたぞ。


「スカルナイトとかポウゴーストとかデュラハンとか……」


 急に魔物らしい名前の数々。しかもアンデット系が多い。


「リッチーとかデーモンとか呼べちゃうかも!!」


「ちょっと夢広げ過ぎじゃない? そもそもこんな魔法陣にリッチーとかデーモンなんて呼べないよ」


「それもそっか。残念」


 俺達が召喚するかも知れない予想を肴に話を盛り上げると、声がかかる。


「――アイシア・マルキスさん! こちらへどうぞ」


「はーい」


 呼ばれた方へ軽い足取りで向かう。


 アイシアは二人と同じようにナイフを手渡されるが、彼女は全然緊張した感じもなく、血を魔法陣にまぶし、詠唱を始めた。


「――魔の者よ、今我が呼びかけに応え、我が前に姿を見せよ……召喚(サモン)!!」


 力強く言ったアイシアに応えるよう、強く光ると魔物が召喚された。その姿は――、


「――カァウウっ!!」


 小さい真っ赤なトカゲが現れた。くりっとした眼、見た目はトカゲのようにみえるが、トゲトゲした鱗、背中には小さいが羽がついている。顔も何処かしら、あの有名な生き物――ファンタジーによく出る――そっくりである。


「……ねぇ、これって……」


 俺がある魔物の特徴を多く捉えているのではないかと尋ねようとした時、アイシアは震えていた。


 ショックだったのだろうか。確かにいくら可愛いのがいいとはいえ、この大きさだ、赤ん坊だろ?


「――か……」


「アイシア?」


「可愛いーーーーっ!!!!」


 その魔物を抱き抱えてくるくる回り始めた。


「きゃああーーんっ!! とっても可愛いよぉーーっ!!」


「ちょっとアイシアさん、落ち着いて……」


 俺の話など聞く耳を持たず、見つめては抱きしめての繰り返し。


「このくりっとした目、ちっちゃい身体……そして――」


「カウウ?」


「――可愛いーー!!」


 まあ赤ちゃんだし、可愛い鳴き声を上げるわなぁ。


「あのさ、これって……」


「ドラゴン、だよね」


 ああ……やっぱり。


 驚いた顔でユニファーニとミルアがそう言う。立ち会っていた先生はいつの間にかいなくなっていたが、エリック先生を連れて戻ってきた。


「なんだい?」


「あの! あれは……」


 エリックはアイシアが抱えるドラゴンと思われる魔物を見る。


「ちょっと見せてくれるかな?」


 そう言うとアイシアに抱えられたまま、その魔物を見る。


「……間違いないね、赤龍(レッドドラゴン)の幼龍だね」


「えっ!? 赤龍(レッドドラゴン)!?」


「って強いの?」


 一同、ズッコケ。いや、異世界人である俺でもわかるわ!!


「貴女ね! ドラゴンが強いくらいわかるでしょ?」


「それくらいわかるよ。でも、この召喚じゃあそんなに強いのなんて出るわけ――」


「出たんだけど……」


「ん?」


「これ、その赤ちゃん」


 アイシアはその幼龍を見つめる。


「え?」


「カウウ!!」


「ええええーーーー!!」


 やっぱり引きが強いなぁ。


「とりあえずその子は召喚したままにしておきなさい。まだ子供だ、召喚空間に移動させてもあまりいい影響はないだろう」


「わかりました」


 召喚空間とは召喚魔がいる空間のこと。何でも居心地がいい空間だとかなんとか。だが、基本的にはその空間にはその契約主の魔物のみが存在するとのこと。


 ある程度、成長した魔物ならともかく、子供なら寂しがるのではないか、成長に悪影響を与えるのではないかということ。


「何かあれば相談しなさい。育て方も教えましょう」


「ありがとうございます! よし! よろしくね!」


「カウ!!」


 新しい家族でもできた感じだ。微笑ましい。


「――リリア・オルヴェール! 来なさい!」


 マーディが呼びかける。よりによってあの先生のとこか。まあ一番しっかりしてそうな先生だからいいけど。


「はい!」


 いよいよ俺の番か。何と契約するんだろ。


 ワクワクしながらもマーディの元へ。マーディは相変わらず冷静にお仕事を進める。


 指を切る事にはふと思うことがあるが、過ぎた事と割り切り、俺は受け取ったナイフで指を切り、血を魔法陣にまぶす。


 さて、ご対面だ。


「――魔の者よ、今我が呼びかけに応え、我が前に姿を見せよ……召喚(サモン)!!」


「……」


「……あれ?」


 みんなも俺が何を召喚するのか気になっていたようで注目を浴びる中のこの静寂、恥ずかしい!


「オルヴェール、もう一度やってみなさい」


「は、はい……」


 この中で淡々とそのセリフが出てくるマーディのメンタル力、恐るべし。だが、ふと疑問が浮かんだ。


「えっと……もう一回、血を?」


「ええ。消えているでしょう?」


 魔法陣を見てみるとまぶしたはずの血が消えていた。


 ということは一応呼びかけたということか?


 原因がわからないまま、もう一度指を切り詠唱する。


 彼女(リリア)は指を切り続けることに縁があるのだろうか、そんな縁こそ切るものだろうに。


「――召喚(サモン)!!」


「……ふう」


 思わずマーディがため息を漏らした。


 それは俺のセリフもとい俺のため息。


 また召喚されなかった。そもそもみんなみたいに光ることがないのだ。


「……オルヴェール、もう少し多めに魔力を注いでみなさい。それでもダメならちょっと考えます」


 頭を抱えているように眉間にシワを寄せ話す。周りもどよめき始める。最上級魔法を撃てる魔術師が召喚に誰も応じないことに驚きを隠せないよう。だが、それは本人である俺が一番痛感している。


 何で召喚されないんだ? 魔物が謙遜? いやいや、それはないだろ! 魔力量が足りない? いやみんなのを見てたんだ、最低限の魔力は注いでる。なのにどうして!?


 もう一度、やってみる。


「――魔の者よ、我が呼びかけに応え、我が前に姿を見せよ……」


 ええい! 二度あることは三度あるとか言うけど、知るか! 三度目の正直とか言うし、これで出てこいよ!


 圧をかけるように魔力を注ぐ。


「――召喚(サモン)!!!!」


「……」


 やはり、召喚されない、そう思ったその時――。


 何やら空間が揺れる感覚が襲う。その感覚は俺だけでなく、みんなが感じているようで、キョロキョロと辺りを見渡し始める。


「な、何だ!?」


 マーディは魔法陣の変化に気付く。


「――皆さん下がりなさい!! オルヴェール!! 貴女もです!!」


「は、はい!」


 俺は魔法陣から離れる。そしてその時、視界に入った魔法陣は光ってはいるものの、みんなと同じ光り方ではない。


 歪にちかちかと点滅を繰り返すように光る。明らかに様子がおかしい。そうして見ていると、また変化が生じる。魔法陣に亀裂が入ったのだ。


「えっ!?」


 ビシビシと痛々しい裂くような音と共に地鳴りも鳴り響く。明らかにヤバそうな雰囲気が漂う。


 そして――。


 ガッシャーーン!!


 魔法陣が割れる音と共に何かが魔法陣から飛び出してくる。


「ふはははははははっ!!」


 大きな笑い声が空から聞こえる。


「……やっとだ! 長かったぞ……」


 その大きく黒い影が何か喋っている。


「――我は帰ってきたぞぉおおっ!!」


 その姿に皆、驚愕していた。

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