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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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34 実戦授業

 

 早速、色々と問題が起きた昼休みを終えてからの午後、俺達は野外演習場にいる。いわばグラウンドみたいなところ。広く渇いた土が広がる殺風景な風景だ。


 ここは学園というだけあって、色んなところに演習場が設けられているよう。ここもその一つ。


 学校自体は距離があるものの、こういうところは共同で使う感じらしい。勿論、自分達の校舎近くにもあるが、何せ生徒数が多い。


 この勇者校だけでも新入生は魔法科と騎士科を含め、二百人以上とのこと。三学年あるため、簡単に計算しても一つの学校に六百人くらいは通っていることになる。


 四つの学校合わせて二千四百人だろうか……貴族校はもう少し少ないだろうから、それを差し引いても二千人くらいだろうか。


 何分この大陸全土から来てるだけあって、数が多いように思えるが、ギルドに所属している若者達もいるため、どうだろうとも思うが――。


「それではこれより、実戦授業を始めます」


 魔法科の一年生徒全員とその教師陣が並ぶ中、渇いた空気の中を手を叩く音が響き、マーディの一声から授業が始まる。


 何でも初めてのこの授業では、各々の実力を見る為、自分が出せる最大魔法を使って実力を見せよとのこと。


 演習場の中心にはルーンを刻まれた巨石が我が物顔で居座る。あれに向かって撃てとのことだ。


 人によって才能は疎らだ。ある程度、実力を知っておいた方が教育する側もやりやすいのだろう。


「何か緊張するね」


 アイシアが小さな声で耳打ちする。


 中等部の時にもあったらしいが、アイシア達が通う学校ではせいぜい中級魔法くらいらしい。


「やっぱり王都の出身の人達はスゴイのかな?」


「別にいいんじゃない? スゴイ魔法が使えるから偉いなんてことないでしょ?」


「それはそうだけどさ……」


 そんな事を話していると、一人ずつ名前を呼ばれて魔法を唱え始める。


「――フレア・ボム!!」


 そう唱えた一女生徒の魔法が巨石に当たるとその刻まれたルーンが光る。爆発した割には傷一つ、ついていない。おそらく破壊されにくくなっているのだろう。あのルーンはその術式の類ではなかろうか。


「よし、次――」


 人数がいるにもかかわらず、一人一人やるのは時間効率が悪い気がする。とはいえ例年よりも今年はだいぶ少ないとのこと。


 理由はお昼一緒にいた例の人物達が原因。チャンスをものにしたい気持ちもわからんではないが、全員が騎士としての適正なんてないだろうに。


「――次、アイシア・マルキス」


「あ、はい! ……行ってくるね」


「頑張ってね」


 呼び出されるとアイシアは定位置へと向かう。


「では、始めなさい」


「はい」


 目を閉じ、小さく息をすると王都で購入した魔導書を手にして唱え始める。


「――高き燃ゆる精霊よ、我が――」


 アイシアを中心に赤い魔法陣が展開、魔力も彼女の周りを踊るように赤い蛍のような光が舞う。魔導書は勢いよく開いてバラバラとページがめくれ、目的のページの部分なのか止まった。


 先程から俺が使うワンドを中心に色んなものを媒体にしている人も多い。ロッドや魔導書、指輪や腕輪なんて人もいた。


 魔力の巡りを良くするなら、媒体は何でもいいのねと改めて自覚した。


「――フレイム・アックスッ!!」


 燃え盛る轟音と共に巨石の上に炎の塊が出現。そこから素早く斧の形状へと変わり、振り落ちる。


 どうやら中級魔法の武器系統の術は敵近くに炎の塊が出て、振り落とす感じのようだ。以前に唱えたことのあるファイア・ランスとよく似ている。


 だが、派手な音がなるものの、巨石にダメージはないようだ。それを見たマーディは淡々と手に持つ評価表だろうか、書き上げると……、


「次」


 あっさりと次の生徒を呼ぶ。アイシアは軽くお辞儀をするとパタパタとこちらへ戻ってきた。


「ふう〜〜、緊張したぁ」


 こちらから見た様子だとそんなことはないように見えたが、本人なりに程よい緊張の中やれたのならいいのではないだろうか。


「アイシアでも緊張ってするんだね」


「そりゃするよ」


 また、他の人の魔法を見ながら、他愛のないを喋っていく。


 今のところ、平民ぽい人達は中級魔法がメイン。たまに上級魔法を使う人もいたが、ほとんど上級魔法を使ったのは貴族だ。


 ある程度、英才教育があっての差だろう。貴族方は自分の家柄に随分な誇りがあるようなのでマルファロイがそんな感じだった。


 ただ、それでも上級魔法までなんだとも思った。ぶっちゃけリリアも上級魔法までならさらりと使える。


 旅の途中でザーディアスから最上魔法の話までなら聞いていた。リリアが持つ書物の中にもあった。


 一応、あとは神級魔法と禁忌魔法と存在するらしいが、このあたりは本当に才能のある人間のみが扱い可能とのこと。


 勇者あたりは使えてたのだろうか?


「――次、リリア・オルヴェール」


 あ、呼ばれた。


「はい」


 俺はどんな魔法を披露するから少々悩んだ。これは先生達が生徒を把握すると同時に周りに対する自己アピールにも繋がる。


 基本的には魔法を使ってしまえば、属性が何なのかわかってしまうのがこの世界での常識といえよう。


 何せほとんどの人が一つしか持ち合わせてないし、無属性は全員持ってるしで隠しようがない。勿論、魔法を使わなければその限りではないが、この世界で魔法を使わずは少々厳しい気がする。


 とはいえ闇属性を使う選択肢はなかった。ザーディアスの話を聞くあたり、闇魔術師は(いわ)れのない恨みをぶつけられそうなので無し。


 悩んでいるのは魔法の階級である。


 正直な話、最上級魔法を使える自信はある。リリアの身体にも慣れてきた影響もあってか、魔力をコントロールすることも容易になってきている。


 それに元々はファンタジー系のゲーム好きとあってこの世界で重要なイメージに関してもクリアしている。


 とはいえ最上級魔法は使ったことがない。上級魔法ならザーディアス監修のもと、使ったがそれでもヤバかった。


 あれをポンポン使って戦争なんてやった日にゃあ、世界終焉の時到来ですよってほど。


 だがそれの上、さらに上があるのだから驚きだ。


 だから先生達がいるこの場でどれだけの威力なのか把握する選択肢は悪くないとは思うが、使えなかったら格好がつかない。


 結局悩んだ結果は――、


「では、始めなさい」


「はい!」


 失敗より可能性と把握を優先した。何事にも前向きにいこう。

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