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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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23 やはり想像通りでした

 

 入学式を終えて、教室へ戻るとホームルームが始まる。


 パンパンと教室に響くほどの大きな手を叩く音を鳴らし、沈黙を与え、注目を受ける。


「はい、皆さん改めまして、入学おめでとう。わたくしはここ、魔法科Aクラス担任、副学年主任のマーディ・ヒューマディと言います。これから一年間よろしくお願いしますよ」


 にこりとも笑わず、表情を変えずにこう話す。改めて厳しそうな先生だなと感じた。


「それではまず皆さんには自己紹介して頂きましょう。名前と何か一言挨拶なさい」


 通例といえば通例だ。自己紹介は大事なのはわかるが、何故かな、この歳になると別に自己紹介とか今更なんてカッコつけるような事を思ったことはないだろうか。


 実際、このクラスでも野次が飛んでいる。その野次の中には貴族だろうか――僕様の事も知らないのかい? なんて偉そうな声すら聞こえた。


 貴族ならそもそもそんな野次飛ばすな。


 そんな野次をマーディは箒ではたくように杖を教壇にカンカンと激しく鳴らす。野次が収まるまで叩き続けた。


「名乗れないのであればそれでも結構。名乗れる者だけ名乗りなさい」


 普通ここは黙りなさいとか言って怒鳴るとこじゃないかな?


 冷静沈着に話すマーディに疑問を抱きながらも、この野次を聞いてか周りが馬鹿馬鹿しく見えた俺は名乗ることにする。まあ、実は別の理由でしっかり名前を覚えてもらうつもりではあった。


「はい!」


 そんな事を考えていると、隣から聞き覚えのある元気な声で席を立ち、マーディに見えるよう挙手する。


「よろしい、自己紹介なさい」


 つんとした喋り方を変えることなく、アイシアに指示する。


「はい! 皆さん初めまして。アイシア・マルキスです。クルーディア近くの村から来ました。王都は初めてでわからないことも多いので、色々教えてくれると嬉しいです! よろしくお願いします」


 とっても素直な自己紹介。田舎村から来たなんて名乗ったら、揶揄(からか)われる対象にされかねないのにとハラハラしながら聞いていたが、教壇の方から拍手が聞こえる。


「ありがとう、マルキス。次はどなた?」


 まだ名乗る者はいないのかと尋ねるマーディ。アイシアの素直な自己紹介を皮切りに次々と名乗っていく。だが、ほとんど平民だ。プライドが変なところで高い貴族は知ってて当然だろうと踏ん反りかえったり、そっぽを向く令嬢の姿もあった。


 というわけでこんな奴らと同じになりたくはないので名乗ることに。


「次、いいですか?」


 すっと挙手して尋ねた。


「構いませんよ。名乗りなさい」


 その場で席を立つと一同が注目する、特に男子。偉そうにしていた貴族連中だろうか、そいつらも食い入るように俺を見る。あからさま過ぎるが今後のことを考えれば、それで良し。


「はい。皆さん初めまして、リリア・オルヴェールと言います。色んなことを学べればいいなと思ってます。よろしくお願いします」


 他の平民や貴族風を吹かせない者達の自己紹介終わりより激しい拍手が鳴る。鳴り終わると少しシンとなる。


「……他には名乗る者はいないのですか?」


 他に自己紹介してないのは、踏ん反りかえるデブ貴族とその取り巻きっぽいやつと髪が縦ロールの女貴族を中心としたグループのあの辺とおどおどしている気弱そうな女の子くらいだ。


 ていうか、あの辺はマジで態度で貴族ってわかりやすいな。


「――あ、あの!」


 おどおどしていた女の子がばっと手を上げる。おそらくこれが最後の自己紹介になるだろう――。


「――それではもういませんね?」


 マーディは周りを見渡し、改めて確認するも無言の了承が返ってくるだけだった。


「よろしい。名乗らなかった者達はこれから常識知らずと呼ぶのでそのつもりで……」


「はあっ!? 何だよそれ!! 僕様に対して失礼だろババア!!」


「はっ! 常識知らずですって。そのセリフお返ししますわ」


 名乗らなかった貴族のリーダー格が威嚇するように悪態をつくが、マーディは一切ひるまない。


「貴方がたがどれだけご大層な子供かは関係ありません。この学校はそういう学校だと学園長先生がおっしゃっていたでしょう……」


「僕様のルールには関係ないね!!」


「ならそれでも結構。そのような態度が続くほど人間関係というものが成り立たないということを身をもって知りなさい。常識知らずの皆さん」


「といいますか、先生が生徒に対する態度でもないのでは?」


「呼んでほしい名を言わないなら呼びようがないでしょ? それでは――」


 この明らかに傍若無人な貴族達を無視して、授業のことや学校生活でのことなどの説明業務を淡々と話していく。


 この先生、こういう生徒の扱いや対処に慣れているのか感心するのと同時に、強メンタルで逆らい難い印象を持った。

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