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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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20 ナンパ男

 

 俺達は校舎までの道を歩く。と言っても寮からはそんなに距離がある訳ではないのだが、俺達を含めた生徒が制服に身を包み、通学していく。


「勇者校か。勉強とか追いつくかな? 大丈夫かな?」


 アイシアはそんな不安を口にしつつも、表情は何処か楽しげである。やはり友達との通学は楽しいものだ。


 俺も向こうであいつらとゲームとかキャラクターとか馬鹿みたいな話まで色々したもんだ。


 ふと思ったが、恋愛話はマジでしてないな。まあ男はあんまりその辺しない人が多いらしいが……(言い訳)


「その辺は頑張ろうよ。リュッカはともかくアイシアは勉強苦手そうだし……」


「うっ……」


「はは。また勉強見てあげるよ、シア」


 図星を突かれたアイシアはリュッカに縋るように詰め寄る。


「ありがとうリュッカ! リリィの意地悪」


「ていうかリュッカとは学科違うし、勉強の内容も違うんじゃない?」


「あっ!?」


「じゃあリュッカ。代わりに私の見て……」


「ああーっ! リュッカ取られた〜」


 アイシアとフェルサでリュッカが取り合いになる。なんだこの光景。性別が変わっても根っこはそんなに変わらない感じのようだ。


 王都の門辺りを見てみると、綺麗な女の子の群れが出来ていた。


「ねぇ、あれなんだろ」


「さあ?」


 よく見ると俺達と同じ色のリボンをつけている。


 黄色のリボンだ。同じ学年のようだ。


 この学園ではリボンの色で学年を判断する。三年間同じ色で、卒業したらその次の一年生は卒業生のリボンの色となる。


 ちなみに一年は黄色、二年は水色、三年は紫となっている。男子はネクタイがそうなる。


 群がっているのを横目に男子は素通りする。女子達も挨拶もせずにスルーだ。


「多分、あの貴族嬢達は殿下を待ってるんじゃないかな?」


「ああー……」


 そういえば今年の一年生は殿下が入学するそう。噂があったって言ってたな。


「じゃあ何? あれは殿下への伴侶になる為のアピールをする為に待ってるって感じ?」


「あれ? 確か殿下には婚約者がいるって話じゃなかったっけ……」


「そうじゃなくても側室とかあの辺りでも十分狙い目だと思うけどね」


 フェルサはとんでもないことを言い出すが、王族の子孫を残す話とかを鑑みるとあり得なくもない話か。向こうの今の常識とは違う以上、受け入れるべきことなのだろう。


「まあ、私達平民には関係ない話だよね。それよりリリィと同じクラスか気になるから行こうよ」


 向こうが気にしてくれれば関係ない話でもないだろうが、例え王族だろうと俺は男とのそんな付き合いは断じて嫌なので、よしとしよう。


 俺達は群がり、黄色い声を上げる貴族嬢達を背に校舎の中へと向かった。


 だがその校舎までの道のりは、やたらと視線を感じる。アイシアが雑談を繰り広げる中に混じって、遠巻きからひそひそ話が聞こえる。


「あんな可愛い()いたか?」

「銀髪のあの()、いいな……」

「どこかの貴族だろうか? いや姫か?」


 などなど、惚けながら歩く男子が目立つ。闇属性の特性に魅力も多少はある為、その影響も少なからず影響しているだろうが、ここまでのものかとも感じた。


 そしてその色香に当てられた男が一人やってきた。


「そこ行く麗しの君よ……」


 そう言って俺の目の前に傅くように跪き、さらっと優しく手を取った。


「俺の名はウィルク・アーマイン。ウィルと呼んでほしい。可憐な君の名を伺ってもいいかな?」


 ウィルクと丁寧に名乗るこの男は金髪の優男系の顔立ち。装飾のいい剣の鞘が見える辺り、貴族だろう。とりあえず名乗ることにする。


「えっと、リリア・オルヴェールです……」


「リリア……オルヴェールっ! ああ……何と美しくも可憐な響き。麗しの君にはぴったりの名だ。素敵だよ」


「は、はあ……」


 このノリに完全に置いてけぼり状態の俺をさらに置いてけぼりにするようにアイシア達の名前も尋ね始める。


「そこの愛嬌が素敵な君の名を教えて頂いても?」


「……アイシアです」


 流石のアイシアもこのテンションにちょっと引き気味に答える。


「赤髪のおさげと眼鏡が可愛らしいな君も……いいかな?」


「か、可愛らしいですか? えっ、えっとリュッカと申します」


「そんな控えめに言わなくてもいいさ。素敵だよ」


 動揺するリュッカに優しく微笑むと、どうせ次は私だろうとさっさと名乗る。


「私はフェルサね」


「――フェルサ! ごめんよ、尋ねる前に言わせてしまうなんて。男として情けない」


 この男、ナンパ男だな。多分、女を泣かせるタイプのやつだ。顔はどこぞの王子と名乗ってもおかしくないほどの優男なのに性格は三枚目そうだ。


「どうだろ? 素敵な君達をディナーへとお誘いしたいのだが、放課後にでもどうか――」


 そう跪きながら食事のお誘いをするウィルクの耳を青々とした緑色のキノコ頭の小柄な男子が引っ張る。


「なだだだだーっ!?」


「いい加減にしなさい! 仕事もせずにナンパなんていいご身分ですね!」


 ウィルクはキノコ頭の男子の手を乱暴に振り払うと怒鳴り始める。


「煩い、この雑草男! こんな素敵な彼女達を放っておく方がどれだけ罪深いか……」


「その彼女達は随分と困っているようですが……」


「照れているだけさ……」


「都合のいいように解釈するな!」


「煩い! キノコ男!」


 喧嘩はヒートアップ。いわゆる犬猿の仲なのだろう。先程の余裕がある表情から一転、眉間にしわを寄せて怒るウィルク。


「とにかく行きますよ。手に負えなくなる前に。皆様すみません、このアホには言い聞かせておきますので……」


 キノコ頭の男子はペコっと謝るとウィルクの襟首を掴んで引っ張っていく。


「ちょっ、お前! 離せ! あ、君達また後でね〜」


 まだ、入学初日なのにいきなり変な人達と知り合った。

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