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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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19 制服という魔力

 

 新生活――それは環境、立場、出会い、思い出など色んな物事の変化や成長を感じる門出。


 そこから感じる気持ちは高鳴る期待と募る不安。人によって気持ちは様々だろうが、大体の人間はそうだろう。


 誰も新しい生活に期待しない人などいないし、その新しいに不安を覚えることも人間として必然的なことである。


 実際、彼もそうだ。巻き込まれた形とはいえ、新しい世界へと放り出された。ファンタジーという空想の世界でありながら、自分の現実では知らない世界に胸躍らせながらも、女として生きていくこと、ファンタジーという知らない世界で生き残る不安は常にある。


 ハイリスク、ハイリターンとはよく言った言葉だ。まさに異世界転移はこの言葉がよく当てはまる。


 そして現在、その異世界転移した彼は転移した彼女の新しい姿に胸を高鳴らせる。これだけ聞けば、ただのナルシストだ。


 ――数日後の朝、彼は、彼女は鏡の前へ立って、制服姿を確認する。今日は入学式だ。


 入学式と言って連想するのは、どんな景色だろうか。暖かな日差しに包まれて、桜色の木々が通りを彩り、花びらが紙吹雪のように舞い、門出を歓迎する景色なんて容易に想像できるのではないだろうか。


 ピシッとした綺麗な制服に身を固め、少し緊張気味に初々しく表情を強張らせながらも、高鳴る期待を隠さず、表情が和らいでいった覚えはないだろうか。


 だが、異世界では違う。後者はそのままだろうが、前者は違う。何せ異世界だ、残念ながら桜は存在しないようだ。窓から見える木々は青々としている。


 そうやって日本を懐かしむと日本の春は風情があり、中々贅沢に感じる。四季がある、ないでここまで違いがあるかと思うと切ない気持ちに苛まれる。


 この国は四季はないが、気温に差はちゃんとあるようだが、基本穏やかな気候だそう。過ごしやすさを考えればいいことだが、変わりばえしないことがここまで寂しいと心から感じたのは初めてである。


「リリィ、着替え終わった?」


「終わったよ」


 シャっと着替え用に作ったカーテンを開けるとそこには真紅のブレザーに深碧のミニスカート姿のアイシアがいる。俺も同様の姿だ。


 濃い色合いなのは目立たないようにする為だろうか。しかしこの組み合わせで銀髪は結構目立つ。せめて青色であれば自然な感じだったろうに。


 だが似合う! 可愛い! 制服というのはどうしてこう、初々しくも可憐に見えてしまうのか。あの溺愛父さんが見たら、発狂するだろう。


 向こうにいた時は女子の制服姿なんて考えた事もなかったが、こうして見ると実にいい! 何かいけないものに目覚めそうだ。


「ねぇ、リリィ……」


「何?」


「このしきり必要ある?」


 そう言ってカーテンを軽く握る。


「窓はわかるけど、女の子同士なんだしここは必要ないでしょ」


「あはは……まあいるんだよ」


 女の子の生着替えは俺の精神的に色々くるものがあるから勘弁して。男の子の純粋な欲望も騙しているような罪悪感もあるの!


「とりあえず朝ご飯食べよ」


 荷物を持って俺達は自分達の部屋を後にする。


 俺とアイシアは賑わう食堂へと入っていく。寮に来たての時とは違い、人が多い。その中に、


「おはよ! リュッカ、フェルサ」


「おはよう。シア、リリアちゃん」


「おはよう」


 朝食を食べているリュッカとフェルサの姿があった。俺達は朝食を取るとリュッカ達のいるところへ相席する。


「遅かったね、二人共」


「ごめん、リリィが手間取ってたの。手伝うって言ったのに……」


「ごめんごめん」


 予習して前日着る練習はしていたが、やはり手間取った。だからとはいえ、手伝ってもらうのはこれからの為にならないと思ったが、結局迷惑をかけた。


「にしてもフェルサも合格して良かったね」


「私はどっちでも良かったけど……」


 ――フェルサは試験は一発合格。やはり冒険者としての実績があるためか、戦闘能力を買われる形で推薦枠に無理やりねじ込んだそう。


 そのフェルサは少し機嫌が悪そうな表情をしている。心なしかソワソワしているようにも見える。


「フェルサ、緊張してるの?」


「別に……」


 聞いてみたがふるふると首を横に振る。ソワソワしている元凶を尋ねてみる。


「いやフェルサ、ソワソワしてるからさ……」


「確かに……」


「ああ、それはね。フェルサちゃん、肌があまり出てないから気持ち悪いんだって……」


 獣人は基本男女問わず、かなり肌を露出して生活するのだそうで、寮内でもテルサに叱られているところを何度も見た。この寮内でもちらほらと獣人を見かけるが肌の露出は抑えているようだ。


 獣人と言っても耳と尻尾以外はほとんど人間と変わらないのに、種族が違うだけで身体の性質がここまで違うなんてと思った。


「まあ慣れるしかないよ」


「そういえばテテュラは?」


「テテュラちゃんは私が起きた時にはもういなかったから……」


 リュッカのルームメイトは実はテテュラだったことに驚いた。てっきりフェルサになるものと思ったが、獣人同士の方がいいだろうと猫型の獣人のエルムという女の子と一緒なのだが、フェルサの性格上、コミュニケーションはあまり取れてないようで、エルムは別の女の子グループと一緒だ。


「そっか。残念」


 寮内でも顔があったら挨拶する程度。アイシアはリュッカのルームメイトだからか仲良くなっておきたい様子。俺もはぐれた件で世話になったからそれきっかけで仲良くなりたいとも思ったが、本人がその気がなさそうなら仕方ない。


「まあ、学校生活はこれからだから、気長に仲良くなればいいよね」


「そうだね!」


 窓から射し込む晴れやかな日差しの中、これから異世界での学園生活が始まる。

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