11 亭主関白でも無い限り、母親は強いです
女は子供を産むと強くなるとよく言いますよね。勿論、個人差はあるでしょうが。
何故か? 命がけで産んだ子供を守ろうとする使命感が働くのではないだろうか。母性本能とも言えるのかな?
何でも男性は出産の痛みに耐えられないという。こんな例を聞いた事はないだろうか。
出産の痛みは鼻からスイカを出す痛みだと。
それだけの痛みと戦った後だからこそ、ちょっとやそっとの事では負けない精神力も身につくのではないだろうか?
まあ、この母親の場合は元々の性格のような気もするが……。
「ほら! 晩御飯の用意ができたからさっさと来なさい!」
「「はーい」」
俺と父親は怯えながら返事をした。すると物置きの入り口にいた母親は床の魔法陣に気付く。
「――あんたっ! また変なことしてたね!」
俺を指差して怒る。俺の母親はおっとりした感じだったから、ちょっと怖い。
「それ、ちゃんと消しておいてよ」
「は、はい……」
日常的なことなのか、しょぼくれた顔でお返事する父親。
これを消されるのは非常にマズイ。
「あ、あの、私が消すよ。書いたの私だし――」
「ダメよ。貴女一人にすると何するか分からないから」
俺の提案はあっさりと否定された。
それもそうだ。血で書いた魔法陣に、父親の話を聞くあたり自殺未遂を繰り返してたようだから、信用されてないんだなぁ。
「じゃあせめて、お父さんと一緒に消すよ。ね?」
俺は次の提案を上げると不思議そうな顔をして、俺に近づき顔を見る。
「ん〜、なんか顔色変わった? それに言っている事も変ねぇ?」
げっ! 怪しまれてる。そりゃあ中身違いますからね。さすが母親。溺愛して冷静に分析できない父親と違って鋭い。
とはいえ、本当の事を喋っても多分理解されないし、信じてくれてもどんな扱いをされるか分かったもんじゃない。
俺はこの世界の常識を知らないんだ。この両親には悪いが娘を演じさせてもらう。
「えっと、王都の……学校だっけ? せっかく合格したんだから、ま、前向きに考えてみようかなぁ……なんて……」
遺書にはそう書かれてたっけ?
娘が前向きに物事を考えました的な感じでとりあえず誤魔化してみよう。
上目遣いに恐る恐る母親を見る。
その母親は次の瞬間、血相を変えて俺の両肩を鷲掴む。
「貴女……本気で言ってるの?」
俺マズイ事言ったか。
危機迫る表情を見て背中は汗でびっしょりになる俺はさらに誤魔化そうとする。
「いやぁ、えっと、あのね――」
「良かった!!」
へ?
「いやぁ、一時はどうなるかとも思ったけど、やっとわかってくれたか〜。お母さん嬉しいよ」
ばむばむと肩を強く叩く。痛い痛い。
その一方で父親はこの世の終わりのような顔をしている。見た通り、青ざめていく。
「リ、リリアが……リリアが王都だなんてパパは――」
「貴方は黙ってて」
ニコッと笑顔で言っているが、声は全く笑っていない。
「はい……」
パパ反論できず。ここでのお父さんの立場って低いのな。俺の両親は何かほんわかした家庭だったけど……二人の趣味は渋かったが。
まあ、これはこれで一つの家庭なんだろう。ホームステイとは違う形で別の家族団欒を見るのは貴重な体験だろう。




