15 魔導書
ユーカが勧めた武器屋でリュッカは今まで使っていた剣を下取り、新調した。だが、一口に剣と言っても色々あるのだと改めて感心する。そんなこと基本、意識しないからな。
そして、お次はここ古びた木造の建物。杖や魔導書などの魔道具が売られているお店。
「いらっしゃい……」
扉を開けて中へ入るとまるでアンティークショップ。年季の入ってそうな道具が並ぶ。先程の武器屋とは打って変わって、怪しい雰囲気を感じる。
そして背の低い腰の曲がったおばあちゃんがよたよたと杖をつきながら近寄ってくる。
「何か探しにきたのかい?」
「ここって魔法使いが使う道具が揃ってる店でいいんですよね?」
「ああ、そうさ。あんた……」
片目を見開きジッと睨むと、おばあちゃんはまたよたよたとどこか歩いていく。見ている側としてはヒヤヒヤものだ。
「ほれ、そこの灰被り」
「えっと……もしかして私?」
「あんた以外に灰被りはいないだろ」
アイシアに何やら魔導書だろうか渋めの茶色の本を手渡した。
「あんたは杖よりこっちだ」
「えっ!? 私、魔導書なんて使ったことないよ……」
杖を媒介にして魔法を発動するのが基本だからと困った表情を見せるアイシア。
しかし、この店のばあちゃんはあんたはこれだと聞かない。
「ねぇ? おばあちゃん。どうしてアイシアには魔導書がいいの?」
「あんたみたいにこの灰被りは才能がない。あたしの魔眼は魔力の流れを見るのさ」
魔眼なんて単語が出てきた。しかも魔力の流れを見るってどんななのさとちょっと心の中で中二病がくすぐられる。
「その魔導書を媒介に魔法の発動すりゃあ、ちょっとはマシになるはずさ。使い方は杖と変わらんよ」
「えっとつまり、杖よりこの魔導書の方が魔力効率がいいとか?」
「そんな話じゃないさね。その魔導書には魔力の流れを良くする術式が練られている。使い続ければ自ずと魔法の視野も広がるってもんさ」
おばあちゃんが言うには、魔道具自体には術式を付与、ゲームで言えば武器にスキルをつける話だということらしい。
魔導書は元々白紙のページに魔術や術式を書き込むことで色んな需要に対応した物を作り出せることから重宝されるとのこと。
しかし、術式を書き込むことは難しいので、元々術式が書かれている魔導書を使って馴染んでいけばいいと勧めてくれたようだ。
「へぇ〜……じゃあ私、頑張って使ってみる! おばあちゃんこれいくら?」
「そうさね……二万リィンだよ」
「に、二万……」
本一冊に二万はキツイと顔に書かれてるアイシア。だが、それも分かってか金を出させようとするおばあちゃん。
「なぁに、将来のことを考えれば安いもんだろ。そこの銀髪娘は飛び抜けた才能を持っておる」
「え〜……そうなの? おばあちゃん」
「ああ。魔力の濃度も循環もいい。しかも双属性でこれは珍しい……」
「!?」
先輩二人はこちらをばっと驚いた表情で見ると、ユーカは肩を鷲掴む。
「ええっ!? リリアちゃん双属性なの!?」
「すごーい」
「あ、はい。一応……」
「そんな友人がいるんだ。肩並べて一緒にいたいなら、ねぇ」
悪ーい顔をしてアイシアに魔導書を買うように勧めるおばあちゃんのその一言に唸りながら考える。
「アイシア、そんなの気にしなくていいから、身の丈にあう買い物しようよ」
「あんたは余計なこと言わなくていいんだよ! 小娘!」
金にがめついおばあちゃんだ。商魂逞しいというか、図々しいというか、こういうばあちゃんは長生きしそう。
「このばあちゃん、結構なんでも買わせようとするけど、損はしないよ〜」
タールニアナもこのばあちゃんはよく知る人らしい。まあ、商売は信用も第一だからね。ニュースとかでよくこの企業がなんて事件もよく報道されてたからな。
「この垂れ目の言う通りさ。あたしは損はさせないよ。それは魔導書なんだ、好きに術式書き込んで好きに使ったらいい」
周りの意見に翻弄されるも彼女は決断した。
「よし、買うよ! おばあちゃん!」
「はは、毎度」
顔のシワがくいっとわかりやすく曲がった。実に嬉しそう。すると、おばあちゃん今度は俺を標的に選んだようだ。
「そこの銀髪娘。あんたはとびっきりのを勧めてやるよ」
さっき怒鳴ったことは何処へやら、良からぬことでも企むようなニタリとした笑顔をすると、店の奥へ向かった。
正直、お金はあるのだが、あれやこれやと口八丁手八丁で言い負かされ、搾り取られそうな予感しかしなかったので、
「おばあちゃん! それはまた今度! 失礼しました!」
脱兎の如く、逃げ出した。他の四人もお邪魔しましたと店を後にする。
もう少し魔道具を見てみたかったが、次回か別の店にしようと考えるのだった。




