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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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08 別れと新たな出会いに向けて

 

「荷物はこれで全部かな?」


「はい。バトソンさん、ありがとうございます」


 アイシアのお礼に続き、リュッカもお礼を言う。


 今、寮の前で荷物を降ろし終えたところ。


 ちなみに何故、俺のマジックボックスに入れないかというと、自分の物以外を入れるのはいささか責任が持てないからである。


 まだ、買ったばかりで不良とか起きた場合を考えて、他の人の荷物はまだ入れないようにしている。


 バトソンにはだいぶお世話になったので、俺は深々とお辞儀をしてお礼を言う。


「バトソンさん、ここまで本当にありがとう。バトソンさんのお陰で無事王都まで着きました」


「いやいや、こちらこそ。リリアちゃんが頑張ってくれたから、来れたんだよ」


 二人も改めてお礼を言う。


「私達からも改めて。ありがとうございます。バトソンさんに至っては王都までの旅路は勿論ですが、ホワイトグリズリーに襲われた際にも助けていただいて、何から何まで本当にありがとうございます」


「本当にありがとうございました!」


 ここまで感謝されると照れ臭いのか少し顔を逸らしてみせる。


「君達のお陰で普段とは違って賑やかな旅だったから、嬉しかったよ。こちらこそありがとう……」


 照れていてもいつもと変わらない優しい物腰で話すバトソンは、別れが惜しくならぬようと馬車に乗り込む。


「じゃあ、おじさんはもう行くから。元気でね……」


「はい! ありがとうございました!」


「バトソンさん、お父さんとお母さんにもよろしくお伝え下さい」


 心配しているであろうリリアの両親に元気の便りをお願いすると、少し間の空いた時間が流れる。


 その時のバトソンの表情は何処か違和感を感じている様子だった。何か思うところがあるようだったが、すぐに柔らかく笑った。


「……ああ。それじゃあね」


 パシンと旅の間に聞き慣れた手綱の音を別れの合図に馬車が遠のいていく。俺達は感謝を込めて、その後ろ姿が見えなくなるまで見送った。


「よし! じゃあ荷物運ぶか!」


 ***


「これで……全部だね」


 アイシアは用意された部屋にとりあえずとトランクケースのような鞄や荷物袋を部屋の隅へ適当に置くと純白のシーツが敷かれたベッドへダイブする。


 初見で綺麗なベッドを見たらやりたくなるよね。一人目がやると次の人はやり辛いけど。


 ダイブしたアイシアはその反動で少々跳ねる。どうやら弾力性があるようだ。


 硬いベッドでなくて良かった。


 どうやらこの世界の職人さん達もいい仕事をするらしいと一人、心の中で師範が弟子でも褒めるかのように頷いてみせる。


 この白いシーツや掛け布団も、修学旅行に行った際のホテルと同様と感じる仕上がりだ。


 あの寮長もまた実にいい仕事をする。見事なベッドメイキングである。


 アイシアは寝転がりながらふにゃと笑ってこちらを向いた。


「これからよろしくね」


 それに対し、俺は優しく微笑んで返した。


「……うん、よろしく」


 荷物を運ぶ際、手伝ってくれた寮長は先程の話の続きをしてくれた。


 実戦授業などもあることから食事や入浴、消灯時間はある程度配慮されるとのこと。基本、時間は決まっているようだ。


 生徒の健康管理上、些か問題にも感じるが、向こうとは違うと割り切り納得。そもそも寮生活自体初めてだ。


 勿論、生活面が酷かったり、素行の悪い生徒にはきっちりと管理するとのこと。だが、仮にも王立魔法学校に通おうなんて生徒だ。そういう生徒は少ない。


「それにしてもリュッカ一人か。私だったら寂しいな……」


「大丈夫だよ。今から少しずつ寮生も増えるって言ってたし、新しいルームメイトなんてすぐできるよ」


 親友を心配し、落ち込むアイシアを励ます。するとアイシアはガバっとベッドの上で身体を上げる。


「よし! リュッカとこ遊びに行こう!」


 元気だなぁと思いながらもついていくことにする。


 リュッカは先程の正面玄関から見て、階段を登った左側の通路の一室にいるよう。俺は反対通路の一室。魔法科と騎士科でここは別れるよう。


「リュッカ〜、入っていい?」


 コンコンと軽くノックすると返事が聞こえる。


「いいよー」


 ドアノブを回し、ドアを開けると早速荷物整理をしているリュッカの姿があった。


「荷物の整理は終わったの?」


 リュッカは部屋に用意されている年季の入った綺麗な茶色のタンスに衣服をしまっていく。


「ううん、まだ。今日はもういっかな〜って」


 リュッカの質問に首を振った。


「早めにやっておいた方がいいよ。下着とか出すの大変じゃない?」


「あ! そっか。でもいいよ。今は……」


 リュッカにいつものように抱きつく。


 今更思うが抱き癖あるよね、アイシア。


「――リュッカが寂しくしてないかな〜って!」


「もう! そんなに心配しなくても大丈夫だから……」


 平気だとは言うが、何処か嬉しそうに話す。


 この光景を見て思う事がある。この光景を毎日見てても大丈夫なのかと。所謂(いわゆる)、きゃっきゃうふふである。


 こんな光景を目の前でむざむざと見せつけられるのはどうなのかと感じざるを得ない。


 そりゃ中身男だし、興味がないわけでもないし、でも、女子寮での生活は仕方なく、仕方なくしなければいけない訳でとまた一人心の中で誰かに言い訳をする。


 この感じ、久しぶりだなぁとしみじみと感じたのだった。

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