07ミニマム寮長さんは御立腹
ぷうっとめちゃくちゃ不機嫌ですと顔に書かれている寮長を宥めることに。
「本当にごめんなさい。まさか本当に寮長さんだったなんて……」
「私……散々言ったのに……」
そっぽを向いて、目を合わせようともしない。拗ね方がまた子供っぽい。
ただ間違えるのも無理はない。身長は勿論だが、服装から子供っぽい。サスペンダーでズボンを吊り上げ、可愛らしいウサギだろうか大きく描かれた洋服を着ている。
ポニーテールもちょっと上に結んでいるせいか若く、この人の場合は幼く見えてしまう。
「テルサちゃん、仕方ないよ! 初対面はさ!」
「そうそう。しかたないさ〜」
「仕方なくありませーん!!」
この寮長はいじられ役。このポジショニングが確約されているのだろう。
いい加減にしなさいとばかりに降りてきた二人をポコポコ可愛らしく殴る。
おそらく寮長をやっているのだ、年上だろうが威厳を全く感じない。
この人が寮長ならとリュッカは取り込み中のところ声をかける。
バトソンも待たせきりにするわけにもいかない。
「あの私達、今日からこの寮に入りたいのですけど……」
「ん? ああっ! ごめんなさい。えっと、新入生さんですね」
返事をすると入学許可証を出す。確認を終えるとこほんと咳き込み、背筋を伸ばした。
「ようこそ、王立ハーメルト勇者校へ! これから色んな事がありますが、学園生活を楽しんで下さいね!」
「ありがとうございます」
「歓迎しちゃうぞ!!」
「おー」
二人の先輩からもエールを頂戴しました。
「改めまして寮長のテルサ・ミューレンといいます」
先程の物言いから少し背伸びをしたように自己紹介を済ませると早速、部屋割りとこの寮での決まりを話す。
「基本一部屋に二人で生活してもらいます。割と広さもあるので問題ないかと。お部屋の掃除は寮生である貴女達の担当です」
他の食堂、廊下、トイレなどは寮長がやるとの事。寮長の仕事内容なんて詳しくはないが、忙しそうなのは想像に難くない。
こんな小さな身体で大丈夫だろうかと心配にもなるが、管理がなっているのは説明の言い草からも読み解ける。
「ルームメイトですが、基本は同じ学科の人同士でお願いします。ちなみにルームメイトの募集は私に言ってくれれば、ありとあらゆる手段を持ちいて探してあげますからね!!」
青春とはこれだよねと表情と瞳が語り、声には熱がこもる。このルームメイト探しは寮長の仕事兼楽しみのような気がする。
「あの、どうして同じ学科同士なんですか? 私、魔法科ですけど、騎士科とはダメなんですか?」
ここはハーメルト勇者校の女子寮。生徒数がわからないからどうとも捉えにくいが、勇者なんて肩書きが付いているんだ、俺達みたいな遠方から来た者も少なくないだろう。
その場合、少なからずトラブルも起きやすいはず。学科は別でも俺達のような気の合う友達同士や貴族なら信用できる知り合いや友人同士の方がトラブルも少なく済むはずではとアイシアと同じ疑問を持つ。
その質問がくるのがわかっていたのか、自慢げな表情を浮かべさらっと説明しようとする。
「学科が違えば授業内容も変わってきます。帰宅時間も疎らなので、部屋の掃除やコミミ――っ!」
あ、噛んだ。
「んっ! んんっ!! コミュニケーション――」
咳き込んで誤魔化し、ゆっくりとコミュニケーションと発言した。その様子にひっそりと微笑する先輩方。
「そこっ!! 笑わなーい!!」
「はーい」
「とにかく! 学校生活をより良くする為にも必要な事なのです!」
同じ学科なら勉強や実務内容とか予習、復習のしやすさ、そこから関係の向上などを見越してるってことか。
それに騎士科は実戦授業も多い為、魔法科の生徒に掃除等が投げやりだったこともあったそう。
「じゃあ私達はいいけど、リュッカはどうする?」
俺とアイシアは同室にするつもりらしい。
俺としては女の子と二人きりというのは外見が女でも緊張してしまうが、ルールというなら仕方ない、仕方ないからだからね!!
でも、リュッカは騎士科だ。アイシアは心配そうに見つめる。
リュッカ自身も不安だろう。出来るならアイシアとの同室が望ましいだろうに。
正直俺はそれでのあぶれものを期待したのだが。
リュッカは心配させまいと申し訳なさそうに笑顔でアイシアを安心させる。
「大丈夫だよ、シア。食堂とかでは一緒にご飯とか食べられる訳だし、それに新しいお友達を作るいい機会だよ」
それを聞いたテルサは再び熱弁。
「その通り! 新生活から始まる新しい出会い、新しい友情、そこから築かれし絆……いい!!」
この人はどんな青春時代を送ったのだろう。それとも純粋に青春している学生を見るのが好きなのだろうか。
ちょっとこの人のテンションに戸惑う。
「テルサちゃん、テンション高ーい」
「学生時代も子供扱いだったんでしょ? 可哀想ぅ」
「言わないで下さーい!!」
この人達のじゃれあいに付き合っていると、バトソンに申し訳ないので、まだ、話の途中だろうが、とりあえずバトソンを呼びに行くことにする。
「あの、馬車を待たせてるので呼んできますね」
騒ぎ立てじゃれあう一同は振り向く。
「あっ! はい、すみません……」
女の子としての色々な不安はそのままだが、なんだか賑やかな寮生活ができそうで少し安心した。




