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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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06 北海道にはいないって本当ですか?

 

「それにしても随分と雰囲気が変わったわね」


 ジッとこちらを見ながら、まだリリアの話を続けるらしい。


「も、もういいでしょ?」


 俺は先生を止めるも、アイシアがあっと先生と攻めをバトンタッチ。


「そういえば、私も話しかけたよ。ビクビクしながら震えてたからさ。そしたらすごく怯えて反応したかと思ったら、カサカサって素早く逃げてったんだよね……」


 アイシアはジグザグに後ろに下がりながら逃げたよーと手でジグザグの仕草を取る。


 上から下まですっぽりと包んだ黒のローブにそんな逃げ方したら、まるでゴキ……んんっ!! ……まるで黒光りするアレみたいじゃないか。


 この(リリア)はどこまでも残念美少女だったんだな。なんかこの感じ、久しぶり。


「と、とりあえず寮はどちらですか? 先生?」


 リュッカはこれ以上は聞いてられないのか、庇ってくれたのかわからないが、話を逸らしてくれた。


「ああっ、そうでしたね。ここから――」


 と先生は寮への行き方を説明。寮での生活は寮長に訊いてくれとのこと。


「ありがとうございます」


「いえ。これからの学園生活、頑張って下さいね! 先生達も頑張りますから」


 グッとガッツポーズを取ってエールを送ってくれた。


「はい! それでは……」


「って! 待ってアイシア。フェルサのこと……」


「あっ……」


「今、学園長に連絡してきますから……」


 先生は席を立ち、この場を後にした。


「ここまでで大丈夫だよ。後は我々が説得する。フェルサと学校へ通う際はよろしくね」


 ジードはこちらの事情も察し、寮へ向かうよう促してくれた。


「わかりました。じゃあまた後でね、フェルサ」


「ん……」


 表情は変えず、しかし何処か嬉しそうに手を軽く振った。


 俺達は言われた通りの場所へと向かうとそこには寮らしき建物があった。学校の近くにある赤茶色の屋根が女子寮、もう少し向こうに見える群青色の屋根が男子寮だ。


 心臓が高鳴りながら、俺はツバを飲む。


 俺はこれから女子寮で生活するのか? 向こうでは自宅通学だった為、寮生活すら初めてなのに、女子寮生活ですか!?


 俺の動揺は手に取るようにわかるだろう? 外見はリリア、しかし中身は鬼塚。しかも、今目の前を歩く友人はそんな事実を知るよしもない。


 そんは彼女達は俺を女子のように接してくるだろう、当たり前だ。不本意とはいえ、騙すように彼女達のありとあらゆる姿を見て過ごすのは激しい背徳感と同時に酷い罪悪感が襲うだろう。


 リリアでの生活である程度、女子に免疫がついたとはいえ、女子としての寮生活も不安である。だが、意外と男目がなければだらしないとも動画で言ってたような気もと曖昧な記憶を辿る。


 俺は今、人知れず禁忌の花園へと踏み入ろうとしているのだ。


 そんな人生最大の敵との戦いみたいな心構えをしているとは、微塵も知らない二人は早くと屈託のない笑顔で呼びかける。


 ごめんね。アイシア、リュッカ。


 心の中で誠意を持って謝った。


「ここじゃない? 女子寮」


 改めて近くから見ると大きな建物というか洋館みたいな作りだ。


 その扉前には、ポニーテールの小さな女の子が黄色い布の買い物袋だろうか、食材がパンパンに入った袋を両手に持ち、入っていく。


「あの子、重そうだったね。手伝ってくる!」


 アイシアはそう言って駆け出すとさっきの子を追いかけて行った。俺達も向かうことにする。


 扉を開けるとそこにはさっきの子とアイシアがいた。


「荷物持つよ!」


「ありがとうございます。でもこれは私のお仕事なのでお気持ちだけ受け取ります」


 随分と責任感の強い子だなと感心するが、こんな小さな子に重い荷物を持たせるなんてと思った為、俺も声をかける。


「こんな重そうな荷物なら持ってあげるよ」


「だから大丈夫です! ていうか貴女達は誰ですか? 入寮者ですか?」


 可愛く頰を膨らませ怒りながら訊いてきたので、そうだよとあやすように優しく撫でながら答えた。


 すると、気持ち良かったのか嬉しかったのか表情が緩んだ。


「えへへ〜……はっ!」


 我に返ったらしい。手に持った荷物をドサッと床に落とすと、また可愛く不機嫌になる。


「子供扱いしないで下さいーっ!!」


 可愛い声でせがむ姿に、きっと寮長の娘さんか孫あたりだろうと思っていたが、


「私は寮長ですよ!!」


 それを聞いた俺達は無言で素直にきょとんとする。


「し、信じてませんね!!」


 俺達は顔を見合わせ、彼女に付き合うことにすると視線から合図する。


「はいはい、寮長さんなんですね……偉い偉い」


「でも万が一、この荷物が足の上にでも落ちたら危ないから私達が持つね」


 リュッカと俺は荷物を一袋ずつ持つ。それを見て慌てるポニーテール娘をアイシアは抱っこし、優しく褒めてあげる。


「よく頑張ったね――」


「だーかーらー!! 私が寮長なんですぅーっ!!」


「はいはい……」


「信じて下さーいっ!!」


 下から騒がしい声が聞こえると、上の方から声が聞こえる。


「テルサちゃん、何騒いでるの?」


「いつものじゃない?」


 一人はちょっとギャルっぽい喋り方、もう一人は気怠げに声をかける。


 その声のする方へ向くと二人の寮生だろうか、リュッカ達より少し年上くらいの女子がいる。


「あっ! ユーカちゃん、タールニアナちゃん!」


「タールかニアナでいいっていつも言ってる〜」


 ギャルっぽい喋り方はユーカという人。気怠げな喋り方というか態度も気怠げな方はタールニアナという人みたいだ。


 タールニアナはこちらを見下ろすように手すりに顎乗せする。


「君達、新入生? 入寮者?」


 ユーカがはきっと訊いてきた。


 俺達はおそらく先輩であろう人達だ。ぺこっと軽く頭を下げる。


「はい、そうです。それで寮長さんはどちらに?」


 そう訊くと上にいる二人が無言で、ユーカはニヤつきながら、タールニアナは垂れ目で薄い表情で指差す。


 その指す方にはさっきから不機嫌そうな表情を浮かべ、ぷるぷると震えながら半泣き状態のポニーテール娘を指す。


「え? 冗談ですよね?」


「気持ちはわかるよ。私達だって最初はそうだったし。ね? ターナ」


「まね」


 その言葉に俺達三人は青ざめる。アイシアに抱きかかえられた寮長テルサが涙目でアイシアを睨むと悔しさと恥ずかしさが混じった涙声で言う。


「……これで信じてもらえましたか? ……ぐすっ」


 アイシアはぱっと手を離し、テルサは慣れたようにすたりと軽く降りる。


「す、すみませんでしたぁ!!」


 三人は綺麗に頭を下げたという。

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