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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
3章 ザラメキアの森 〜王都と嫉妬と蛆蟲の巣窟〜
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05 入寮手続き

 

 俺達は早速、校舎へと入る。日本の学校のような靴箱はない。土足システムのようだ。


「どこへ向かえばいいの?」


「とりあえず職員室に向かおう」


 静けさが目立つ無人の校舎内を歩く。受験に来ていたリュッカは職員室がどこにあるかわかるようだが、俺は周りをきょときょとしながらついて行った。


「ここだね……」


 職員室だろうと扉の前に。ノックを軽く鳴らす。


「失礼します。入寮手続きに来た者ですが……」


 リュッカは扉の向こうにいるであろう先生に聞こえるように声を出す。すると、すぐに返事が聞こえた。


「はーい」


 若い女性の声が聞こえる。足音が聞こえてきたので待つことにする。


 かちゃと扉が開くと白いワイシャツのような服にネクタイを、魔法学校と言うだけあって黒いローブを軽く羽織った若い女性が現れた。


「はいはい、入寮希望者さんですね……ってあれ?」


 その若い女性はグラビイス達を見て、不思議そうに首を傾げる。冒険者らしき人が何故ここにと疑問を持った視線を送る。


「えっと……保護者の方々ですか?」


「あ! いえ、違います。ちょっと諸事情がありまして……」


 慌てふためきながら話すリュッカ。とりあえず中へと案内され、若い女性にその事情の説明をすることに。


「――なるほど。つまり、そちらの獣人さんをこの学校に入学させたいと?」


「はい。どうかお願いします」


 ぺこっとフェルサのパーティの一同が頭を下げる。遅れてサニラやバーク、フェルサも下げる。


 だが、この若い女性は事情を聞く辺り、先生なのだろうが、戸惑う表情をする。


「うーん……とりあえず私では判断しかねます。学園長に連絡を入れますので、それでいいですか?」


「はい。わかりました。無理を言って申し訳ない」


「いえいえ……」


 とりあえずフェルサの件は保留にし、今度はこちらの番と先生は俺達のところへ向いた。


「えっと、貴女達は入寮希望者でいいのかな?」


「はい。そうです」


 すると先生は自分の席であろう机の引き出しを開けて、書類だろうか取り出し、その紙に目を通しながら名前を尋ねる。


「お名前は?」


「リュッカ・ナチュタルです……」


「アイシア・――」


「ああ、待って待って、一人ずつ確認するから……」


 アイシアが名乗ろうとしたら手を前に出して止められた。一枚一枚丁寧にめくって確認する。ちょっと時間がかかりそうだ。


「あっ! あった……リュッカ・ナチュタルさんですね。では……」


 その紙を机の上に置く。


「こちらに魔力を少々流し込んでください。本人確認をします」


「はい」


 返事をするとリュッカは言われた通り、その紙に魔力を流す。この国に入る時のような魔力での確認だろうか。珍しい物でも見るように見る。


 すると、名前が書かれた文字が光った。


「はい。本人確認が終わりました。えっと次は……」


「はいはーい! アイシア・マルキスです!」


 待ってましたと言わんばかりに元気良く挙手しながら宣言。先生は、はいはいと書類をめくりながら微笑する。


「はい。本人確認、お願いします」


「はい!」


 意気揚々と魔力を流すと、また文字が光る。


「はい、大丈夫です。えっと、次は……」


 とちらりと見る先にはサニラとバーク。だが、二人共軽く笑顔をすると違うと手を振る仕草をする。次は俺の番だと思ったので、おずっと名乗る。


「えっと、リリア・オルヴェールです」


 名前を聞いて口に手を当て驚かれた。


「あの……?」


「あっ! ああ……はいはい」


 慌てた様子でぱたぱたと書類を二人とは違う感じで探し出すが、疑問が抜けないとばかりに聞いてきた。


「あの……本当にリリアさんですか?」


 不思議なことを訊く。こんな銀髪美少女なら容姿でも覚えられるだろうにとこちらが疑問を抱く。


 そういえば旅の道中でリュッカ達にも言われたな。


 そんな事を思い出したせいか、表情が固まり、冷や汗が止まらない俺を置き去りに先生はリリアの書類を見つけたのか、机の上へ。


「まあ本人確認すればわかる話ですね」


「は、はい。それでは……」


 俺は手を紙にかざして心の中で祈り、願い、懇願する。心中は焦りと不安でいっぱいである。


 お願いします! どうか! どうか! 光ってください、お願いします! こんなところまで来て、はいダメですじゃお話にならないぞ!


 神への祈りと共に紙へ魔力を流す。すると、同じように光ってくれた。


「はい。本人さんでしたね。びっくりです」


 びっくりしたのはこっちだ。不安を煽るようなことは言わないでほしい。


 だが先生、まだ納得いかないようで、


「貴女みたいな綺麗な女の子、一目見たら忘れないと思うけど、この地方じゃ珍しい銀髪だし……」


 先程思った通りだ。これだけ目立つ容姿なんだ、忘れるわけないがない。


 すると、アイシアが何か閃いたようで、目をぱちっと見開き言い放つ。


「上から下まで真っ黒なフードに身を包んだ女の子を無理矢理引っ張ってた銀髪の女の人がいたよ」


 おそらくそれだ。バトソンも言ってた。お母さんと一緒に来ただろうと。


 それを先生も思い出したと話さなくてもいいのに当時の状況を話す。


「確かフードを深く被って押さえてめちゃくちゃ嫌がってた印象が強かったのよね……」


「何か嫌な事でもあったの? リリア?」


 サニラは不思議そうに表情はそのままに尋ねてくる。それに対し、ぎこちない苦笑いで応答。


「そ、そうだね……ははは」


「それを見たお母さんが無理矢理首根っこを掴んで、引きずっていくのも凄かったな。顔もすごい怒ってたし……」


 リリアはジタバタと激しく抵抗していたと続ける。


 そのエピソードを俺以外の一同は豆鉄砲でも打たれたかのようにポカンとした表情で固まる。


 俺も別の意味で表情を固めて、顔中から汗が滝のように流れでているような感じだ。


 お願い、先生。もうやめて!


「あのお母さんと同じ、銀髪なら納得よね!」


「そ、そうですね……ははは」


 満身創痍な俺は完全に置き去りに笑顔で納得。頼むから一人で後で納得してほしかった。


 するとポンっと軽く肩を叩かれた。


 そこへ顔を向けると同情でもしたかのような表情をしているグラビイスとアネリスがいた。


「まあ、リンナだしな」


「そうね。リンナだもんね」


「ははは……」


 ジード苦笑い。昔組んでただけあって三人は暗黙の納得。

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