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問おう! 貴方ならこの状況、歓喜しますか? 絶望しますか?  作者: Teko
2章 王都までの旅路 〜残念美少女から普通の美少女になります〜
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74 今度こそ王都へ

 

「只今戻りました」


「ああ、おかえり」


 俺達はある程度見て回った後、宿屋へと戻った。そこには、まだ少し気分の悪そうな大人達がぐったりしている。


 そんな中、留守番をしていたジードさんがあることに気付く。


「おや? リュッカさんの眼鏡、変わりましたか?」


「あ、はい」


「前のものも良かったですが、今のもいいですね。色合いを揃えたのが特にいい。よくお似合いですよ」


「あ、ありがとうございます……」


 褒められ慣れてないのか、リュッカは動揺を隠しきれない状態で照れる。


 しかもこの人、前の眼鏡も特に否定せず、両方ともさりげなく褒めた。昨日の夜の話を聞く限り、独身だろうこの人。モテそうなのにと疑問を抱く。


 あざといって見られるのかな?


「他の皆さんも買い物してきたんですか?」


「まあ、少々……」


 この街には珍しい物も置いてあるらしく、俺はある物を買い求めていた。それはザーディアスが使っていたマジックボックスである。


 次元魔法を付与されたバックやリュック、ポーチなど形は様々に存在する。ちなみに母親から渡された財布もそれ仕様である。小さい見た目ながら、結構な額が入っている。


 お父さん、きっと娘の為にと溜め込んだんだろうな。お陰でポーチ型のちょっとお高いやつを買いました。ありがとう、そしてごめんなさい。


 ていうかこの世界は普通にスゴイ。次元魔法は無属性とはいえ、眼鏡よりこんな便利な道具が流通していることに驚く。値段も眼鏡とは格が違った。


「そう! リリィ、マジックボックスなんて買ったんですよ!!」


「……驚いたわよ。あんな値段のやつよく買ったよ」


「いや、あっても困らないかなーって……」


「だからって買う?」


 運び屋や商人でもないのに、この年齢の人間買うもんじゃないとサニラに怒鳴られた。


「ザーディアスさん使ってたの見てたからね。私も欲しかったけど、値段が……」


 そう、買った影響はあのおっさん。旅の道中、ほいほいと魔物の死体を入れまくってたのを目撃している。


 荷物にかさばらないどころか、入れ放題なんて便利とか思っていたが、現実そんなに甘くない。


 マジックボックスは作った術者によって、入れられる大きさや量、保存状態など色んな要素が左様される。


 俺が買ったのはそれでも上質な方だが、おっさんのより劣っている。


 俺が買ったのは入れられる大きいは中型の魔物くらいまでが限界、量は推定で八畳ほどとのこと。魔物肉を大量に詰めれば、すぐにでもいっぱいになるだろうが、魔法薬や魔石など小さい物ならほぼ無限に入ると認識しても良いのではないだろうか。保存は効くとのことだし、出したい物を頭に浮かべ入っていれば、すぐに取り出しも可能という優れもの。


 だが、それでもおっさんに聞いたマジックボックスの性能よりは劣る。おっさんが持っていたのはこれよりも上位版だ。


 どんな術者が作ればそんな物ができるのやら。Sランク冒険者の人脈は伊達ではないらしい。


 だが、付与魔法は闇属性の得意分野の一つ。極めればこれより性能のいい物を作れるかも知れない。その為の模範品としては上々だろうし、予定内の出費だ。それに使っていいってお金だし。


「無属性魔法の次元魔法を極めれば作れるらしいし、まあいいんじゃない?」


「才能の問題があるわよ! 闇属性持ちなら簡単に作れるかもしれないけどね」


「そうだね……」


「闇属性ね……」


 サニラの言葉に視線と共にを背ける。すると、宿屋の扉が開き、バトソンが声をかける。


「準備ができたよ。あんた達は大丈夫かい?」


 さっきからテーブルやイスにだるそうに力無くもたれかかる大人達にまずは聞く。


「王都までだからな……大丈夫……」


「そうね……でも、その前にもう一回……水」


「はいはい」


 呆れたように話すとぱたぱたと水を取りに行くサニラとフェルサ。こちらのポンコツパーティはアソル以外は大丈夫そうだ。


「おーい、アソルだーいじょうぶかー?」


「アソル、あそこまで飲んだの初めてじゃない?」


「うん……ごめんね」


「みんなは行けるかい?」


 私達、若人組にも声をかける。


「私達は大丈夫です!」


「はい!」


 アイシアもリュッカも、はきっとしたいい返事をする。新しい生活が待ち遠しいよう。でも、フェルサはどうだろう。まだ、色々と曖昧だ。


「フェルサは大丈夫? 学校……」


 俺は不安そうに尋ねるが、心配をよそに表情をあまり変えることなく、さらりと答える。


「うん、大丈夫」


「ならいいけど……」


「大丈夫だよ! きっと楽しくなるよ!」


 アイシアは後ろからガシッと俺とフェルサに抱きつく。なんの根拠もないのに、この笑顔を見ていたら、先の不安なんてどこか行ってしまいそうだ。


「なら行くよ」


「はい」


 俺達は宿屋の外の荷馬車へと乗り込む。


 俺の先の不安は学校での生活だけではない。この先きっと、元いた世界より危ない世界も広がっている。魔物がいて、魔法が存在する世界……ファンタジーみたいな世界、だからこそ何が現実に襲うかわからない世界。


 だが、向こうの世界のような理不尽な人間の狂気にも晒されるかも知れない。


 だけど、この旅の間で強く生きれることも少なからず証明もできた。信頼における友人とも出逢えた。


 そこはきっと向こうでも変わらない。出逢いによって、自分がしてあげられることによって世界も運命もきっと変えられる。


 少し大げさだろうか。だが、こんな世界に投げ出されたからこそわかった事だろう。


 ――自殺志願者の美少女に転移し、魔法が使え、魔物が人を襲う世界に一人投げ出されたが、沢山の素敵な人達と出会い――一部を除く、ラッセとか――人との繋がりを強く感じ、新たな出会いや出来事が待っていよう王都ハーメルトは目の前。


 ――問おう!貴方なら歓喜しますか?絶望しますか?


 俺達は賑わう商業街を離れ、王都へと向かう。この広い平原に蹄の音を鳴らして……。

ここまでのご愛読ありがとうございます。次からは第3章となります。章のタイトル通り、少し暗い印象の話となります。どうしてか自分はネガティブ寄りになってしまうので、申し訳なく思いますが、お付き合い頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。


長文失礼しました。それでは。

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