09 原因登場
子は親を選べないなんて、聞いた事がありませんか?
そりゃあ人間の出逢いは様々。どんな人間同士がくっつくかなんてわからない。だから、人というのは分かりあおうとする。その過程で愛やら友情やら信頼やら絆やらを築いていける。
そしてその過程を経た男女の愛が形となったのがきっと子供なのだろう。ちょっとロマンチックに感じるだろうか。
だが、それと同時にその子供は親に試練を与える存在でもあると考えられる。その二人で築き上げた絆をどう子供に注ぐか。子供は正直だ。親のものを純粋に受け止めて注がれる。
例えるなら子供は器、親の愛は水だ。器に見合うだけの水を注げば子供は正しく育つだろう。だけど、器に何も注がれなかったり、溢れるほど注がれ続けるとその器はどうなるだろう……。
物理的に見るなら注がれない場合は空っぽということ。注がれ続けた場合は水がこぼれ続ける。
人の心に置き換えると前者は親の愛を知ることが出来ずに他のもので満たそうとするだろう。正しく導かれるかどうかは定かではない。では、後者は?
――引っ叩いた勢いで床に転がる中年男性。彼女、結構力があったことに驚く。
「あっ……えっと……」
やっべぇ、思わず思いっきり殴ったぞ。だが咄嗟だったからか、女の子がよくやるって言い方はちょっとおかしいが平手打ちになった。それにきゃあって言っちまったし。
動揺する俺に中年男性はむくっと身体を上げ、こちらを向くと心配そうに涙ぐみながら安心した表情でこちらを見た。
「リリア、良かった。無事で……」
そういえばこの娘はリリアって言うのか。これから俺は『リリア』として生きていかなくちゃいけないのか。
「パパは心配で心配で仕事に手がつかなかったんだぞ」
やはりというべきだろう。これだけ心配して泣きついてきてリリアと呼び捨てるのだ。父親だったか。
正直今のやり取りだけでも気が重くなる。娘に溺愛する父親、彼女の遺書からも丸わかりだったが、ここまで想像通りとは。
「パパ……リリアに何かあったら首を吊ってたかもしれないぞ」
泣き止んだ目元を赤くしたままニコッと話す。
もしかしなくても彼女の破滅思考ってこの父親譲りか。遺伝って恐ろしい。
「ママが無茶な事を言ってリリアを困らせていたのは知っている。大丈夫! リリアはパパが守ってあげるからね」
いや、その貴方が原因で彼女の被害妄想が拡大して鬼塚がリリアになってるんですよとは流石に言えない。
「リリアはママ似で、ものすっごく可愛いからパパ、リリアにはぜっったい悪い虫なんてつけさせないからね」
あんたがそんな風に甘やかして過保護にし過ぎているからこうゆう状況になったんだろうがっ! ……とも言えない。
俺が彼女で無ければ、説教でもしたのだろうけどな。




